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不安障害だった私がおすすめする、心と身体によいこと その④(終)

◇難易度5:私の経験に基づく荒療治

以下は、働けないほど長い不調にある人以外にはあまり関係がないことかもしれないのですが、私の荒療治の経験を少し。
体調が戻ってきたら、次は社会や他者との繋がりが、心身の健康を保つために必要になってくると思います。

・思い切って働く
発病からまだ10ヶ月ほど、私は激しい症状が落ち着くやいなや、すぐに焦ってアルバイトを始めました。
簡単な事務仕事だったにもかかわらず、ビルの15階という苦手な空間に長くとどまったせいあるのか、ゆるやかに調子を落とし、3年後には自律神経を激しく失調して仕事へ行けなくなりました。
「ゆるやかにふたたび不調になる」という、一番タチの悪いパターンです。
(この3年間のアルバイト代でいろいろなセラピーに通えたことだけが救いでした)

そこから私の本格的な体質改善が始まりました。
呼吸法を習い、セロトニン運動をし、セラピーヨガに通い、約2年間、身体の面からアプローチしたことで心身の調子が一段階上がりました。
ほどなくして、クラウドソーシングでライターの仕事を少しだけやってみました。
自分の都合のいい時に、ある沿線の街をリポートして原稿を書くという、自由度の高いものを数本こなし、生まれてはじめて個人名義で原稿料をもらいました。
働けない間に医療事務の資格も取ったので、その後「大病院の受付」、そして「近所のドトール」という、激しいスポーツのようなアルバイトをたてつづけにしてみたのですが、週2〜3日勤務とはいえ体調に不安を感じることが全くなく、そのことが大きな自信となりました。
不安や不調を感じる隙もないほど忙しかったのがよかったのでしょう。
40歳をすぎ、この年齢でデスクワークのブランクが長くなることに不安を感じた私は、現在の仕事(これもアルバイトですが)に移り、一年後に並行してフリーの仕事も始め、今に至ります。

社会復帰の失敗は挫折になるので、ある程度先に身体を整えることが先です。
いきなり仕事をすることに不安のある人は、ボランティアや、家業の手伝い、家事で何らかの役割を負うことから始めてもいいと思います。

「今日行けない、行きたくない、と思っても、明日は行きたい、行けると思うかもしれないよ」
久しぶりにアルバイトを始めるという時に、不安を吐露した私に母が電話越しに言った言葉です。
「今日できなかったら、二度とできないかもしれない」という考えに陥った時に、今も思い出します。

・猫を飼う
動物を飼うこと自体はそれほど難しいことではなく、住宅環境さえ許せば、張り合いも出るし、日々楽しいことがほとんどだと思います。
犬なら、毎日散歩に出ざるを得ないのが素晴らしいことです。
しかし、災害など非常時のリスクや、動物が病気になった時や死を迎える時に受ける精神的、時間的なダメージを考え、難易度5とします。

我が家では震災後まもなく一匹の保護猫を迎え入れました。
家に来た当初は夜鳴きしていた彼女(猫)も、ものの数日で人間と同じ生活リズムに合わせるようになり、生き物が持つ適応力に感心したものでした。
ところが彼女はたった4年ほどで、原因不明の腎不全となります。
若いゆえに進行も早く、約3か月間の闘病を経て亡くなりました。
愛するものが食べ物を受け付けなくなり、痛みに苦しみ、通院に耐え、やがて私たちのことをまるで覚えていないかのような状態になり、痩せ細ってボロボロになって死んでいくのを見届けました。
が、私はなぜかそこまでつらくなかったのです(必死で悲しむ余裕もなかったのかもしれません)。
見送ったあとは充実感がありました。
ああ、いのちはこうして絶えるのだな、看取るというのはこういうことなのだなと、ただひたすら荘厳で、尊いものを見せてもらったという気持ちです。
やがてやってくる親の死や、自分の死を受け入れるための、ゆるやかな準備をさせてもらったと思っています。
私にも、命を看取ることができた。
本当はヨガでも呼吸法でもアルバイトでもなく、これが私の心身を一番強くしてくれた、はっきりとしたきっかけだったかもしれません。

(高齢の保護猫など、お世話するのもよいのではないでしょうか)

◇さいごに

最後にまた自分の話になりますが、私は

・東京23区内、駅に近い、かなり便利な場所に住んでいる
・ひとまず夫が働いてくれるうちは、食べていけないことはない
・子どもがいないため、他者の命を守るために気が抜けない、ということもない
・抑うつ症状がほとんどなく、その気になればわりと何でも試せた
・さまざまなセラピーを試すことについて、家族からの反対もなかった

という、比較的恵まれた環境、状況にありました。

セラピー、治療等を受ける時には、今いる場所が都会か地方か、同居する家族の視線があるかどうかは、かなり大きな分かれ目になります(田舎出身で、しばしば実家療養していたので、よくわかっているつもりです)。

そのような不利な条件下にいるかたにとっても、何か参考になることが一つでも見つかれば、そして今の環境、状況が、逆にメリットになるようなことがあれば幸いです。


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