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どんなことができる?機械学習について解説

ビジネスや政策の現場において日々蓄積されるデータを活用する「データサイエンス」はますます重要視され、2022年からはいよいよ日本の高等学校で必ず学ぶ内容となります。つい先日、一橋大学で新設されることになった「ソーシャル・データサイエンス学部」も話題になり、この分野に対する注目度の高さが窺えます。

Facebook、Google、Youtubeなど名だたる企業が機械学習や人工知能モデルを活用して大きな成功を収めていることが報じられる一方で、「何から始めればいいんだろう」「背後の統計学や数学や、プログラミングも含めて、何がどうできれば使えるようになるんだろう」と不安になって手が止まってしまうとご相談をいただくことも多々あります。

機械学習のモデルには非常に様々なものがありますが、用意するデータに応じて大別すると「教師あり学習モデル」、「教師なし学習モデル」、「強化学習モデル」の3つに分けることができます。そこで今回は、それぞれがどう違っていて、どんな手法なのかをそれぞれ見ていきましょう。

この記事の主な内容
1. 教師あり学習モデル
2. 教師なし学習モデル
3. 強化学習モデル
終わりに

1. 教師あり学習モデル

教師あり学習は、「過去のデータをもとに、識別や数値の予測を行う」学習です。例えばGoogle画像検索はインターネット上にある膨大な画像データを学習して、私たちがアップロードした写真に何がいくつ写っているかを識別することができます。このモデルを作成するためには、過去のデータを用意する他に、それぞれの画像に何が写っているかを教えてあげる必要があります。画像データ1つ1つに対して「この部分は人、この部分は建物」という具合です(この作業をアノテーションと言います)。正解データを教えて学習させる手法であるため、「教師あり」学習なのです。

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アノテーションの例。実は人工知能の開発の中でも非常に時間がかかる作業の1つ。

2. 教師なし学習モデル

教師なし学習は、「過去のデータをもとに、似たデータ同士に分類を行う」学習です。世界で2億人の利用者がいるとされる動画サービスNetflixでは、利用者の視聴履歴や、利用時間などの利用習慣をもとに1,000以上のグループ分けを行います。グループ分けの結果をもとに、コメディ好きにはコメディ映画、アクション好きにはアクション映画など、各グループに対して最適なコンテンツが表示される仕組みを構築しています。教師あり学習と異なる点として、分類には特定の正解(=教師)がない点が挙げられます。そのため「教師なし学習」と呼ばれます。

教師あり学習と教師なし学習は、お互いに独立して使われるとは限りません。Netflixは、上記の他に教師あり学習を用いて、ユーザーごとに異なるタイトル画像を識別して表示することでクリック率を高めています。このように大きなシステムにおいては、どれか一つの手法というより複数の手法を活用しているものも多く見られます(アンサンブル学習と呼びます)。興味がある方は下記の記事も読んでみるといいでしょう。

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同じ映画のタイトル画像。ユーザーの行動特性ごとに使い分けて表示させる。

How Netflix’s Recommendation Engine Works?(外部サイト)

3. 強化学習モデル

そして近年特に注目を集めているのが、この「強化学習」です。この手法が先の2つと決定的に異なるのは、学習するために必要なデータをPCが自ら生成することです。

2016年に囲碁AI「Alpha Go」がトッププロを破ったことは、ニュースなどで耳にされた方も多いと思います。ですが、その翌年に発表された「AlphaGo Zero」をご存知でしょうか。「Alpha Go」は従来の機械学習モデルと同様、プロ同士の対局結果(棋譜)をもとに学習が行われましたが、「AlphaGo Zero」は何とプロの棋譜を使用せずに学習が行い、学習をはじめてからわずか数日で「Alpha Go」と同等の実力を身につけてしまったのです。

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「AlphaGo Zero」の学習の様子。囲碁をはじめて3日でトッププロと同じ実力になり、40日で「Alpha Go」を超えた。

この仕組みを簡単に理解するためには、はじめて自転車に乗った時を思い出してみるといいでしょう。親や兄弟のフォームを指先まで真似しようとはせず、とりあえず乗ってみて転んで怪我をしたりバランスを崩したりしながら乗りこなせるようになりますよね。強化学習では「報酬」と呼ばれる評価を与えることで、試行錯誤を繰り返して最適な選択をができるようになります。現在人工知能研究の最も盛んな分野の一つである、無人運転技術の学習にも利用されています。

終わりに

いかがでしたでしょうか。今回は機械学習モデルにどんなものがあるか、それぞれどんなことができるかを簡単に見てきました。「機械学習についてもっと知りたい!」「実際に使って見たい!」という方は、ぜひ一度こちらの無料セミナーにお気軽にお越しください。

様々な機械学習モデルを知りたい方は、こちらの書籍がおすすめです。
視覚的な図を使って、仕組みが詳しく解説してあります。

機械学習図鑑 秋庭 伸也,杉山 阿聖,寺田 学(著),加藤 公一(監修) 翔泳社

それではまた。

<文/岡崎 凌>
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