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北野武「ソナチネ('93バンダイビジュアル/松竹第一興行)」Blu-ray

北野武監督第4作「ソナチネ」です。私はこれまでの北野映画ではこれがベストだと思いますが、おそらく同意見の方が多いのではないでしょうか。たけし映画の特徴が、最も純粋に凝縮されている作品だからです。

夜の海岸で、たけしをヤクザだと知らずに脅迫した青年に銃を突きつけ、間をおかず腹に撃ち、青年が「嘘だろ…」と驚愕の表情で崩れ落ちるシーンは見事。たけし映画には銃を構えて「撃つぞ」と見栄を切るようなシーンは一切ないのです。

そしてたけしと弟分が沖縄の辺境の地の空き家に潜伏し、暇を持て余して人間紙相撲をやったり、ロケット花火を打ち合う中でたけしが本物の銃を撃ち、弟分が「兄貴、いま撃ちませんでしたか?」と言うギャグというか何と言うか、シャレにならないシャレの場面が印象的。この、沖縄の僻地での長閑なシーンが、死に向かってただ走って行くこの映画の重要なポイントになっています。

初期タイトルが「沖縄ピエロ」だったそうで、ジャン・リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」の影響が色濃い映画だと言えます。

1994年のロンドン映画祭やカンヌ映画祭に出品されて欧米の映画ファンから高い評価を受け、「キタニスト」と呼ばれる熱狂的なファンを産みました。クエンティン・タランティーノもキタニストの一人で、本作を絶賛しています。

この作品、プロットだけ見るならヤクザの抗争と裏切りの物語なのですが、静かな画面が続く中で突発的に起きる激しい暴力。その静と動のバランスはこの映画において奇跡的にバランスしており、ヤクザ映画の通俗性から最も離れた作品になっているのではないでしょうか。

死に急ぐかのようなたけしのヤクザは、実際にバイク事故を起こし(自殺未遂ではないかと言われている)死線を彷徨ったその後のたけしの姿が重なって見えます。


「ソナチネ('93バンダイビジュアル/松竹第一興行)」
北野武 / 国舞亜矢 / 北野武
定価: ¥ 3800

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