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人事課題への対応はオーダーメイド。回答はひとつではない!

人事労務のかかりつけ医として

前回の記事では、人事評価制度の導入を“薬の処方”に例えましたが、社会保険労務士と企業の関係には、医師と患者との関係に類似した点が多くあります。
 
 医師の場合は、何らかの不調を抱えた患者に対し、まず問診をして、詳しい診察に入り、診断を下し、対処法を示して処方箋を書いたり施術を行ったりします。これと同じように、社会保険労務士はカウンセリングで会社の状況をヒアリングし、実際の社内状況やデータからより詳しい情報を得て分析し、知識と経験から対処法を考えて、状況改善へのロードマップを作ります。
 
 ここで大切なのは、人事労務に関する課題の解決方法は、会社それぞれのオーダーメイドであるということです。医師も、大勢の人をいっぺんに診察することはできません。人間は一人ひとりの状態が違うからです。
 会社も同様で、問題の根本的な原因や、トラブルとしての出現の仕方がそれぞれ異なるため、類似の事例を参考にすることはできても、その時と同じ対処をしても十分な効果は期待できません。

健康な企業体質を手に入れるために

私たちが企業からの相談を受けるとき、すでに切羽詰った状況に陥っている、ということが多くあります。この場合は救急治療になりますが、経営がガタガタの時に強心剤を打つだけの治療をしても効き目はその場限りです。応急処置は必要ですが、それと同時に問題の根本を解決する方法を探る必要があります。
 
 にも関わらず、多くの会社は「いま血が流れているから、止めてくれたらそれでいい」という勢いで、冷静さを失っている場合が多いものです。このような問題をとりあえず片付けて、短期間のフィーをいただいて仕事を終えることも可能ですが、これでは会社のためにはなりません。当面の危機を逃れたら、また痛みを忘れて同じことを繰り返すというループに陥ってしまうでしょう。
 
 だからこそ、「人事労務はオーダーメイド」で対応しなければならないのです。
 
 そのために大切なのは、人事労務のプロがマンツーマンで会社と向き合い、その職場の個性を見極めること。例えば新規ビジネスを追求する意欲が高いとか、CSRが好きだとか、SDGsがうまくハマりそうだ、などといった点を洗い出し、それをもとに処方箋を考えていくことが必要なのです。
 
 いわば人事労務の課題解決は、外科ではなく内科の医療に近いと言えるかもしれません。もっと申しますと西洋医学というよりも東洋医学、漢方薬の処方に近いのかもしれません。
 
いずれにしても、求めているのは「健康な体質」。人事労務も、かかりつけ医を持って、定期的な健診を受けることをおすすめします。