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なぜ『二宮金次郎』なのか

二宮金次郎といえば、まず思い浮かぶのは小学校の校庭に必ずといっていいほどあった少年金次郎像ではないでしょうか。日銭を稼ぐため、薪を拾って何里も山道を歩き、時間さえあれば勉学に励んでいたあの少年が、その後、600以上の村の復興を手がけ、多くの人に慕われる存在だったことはあまり知られていません。江戸後期、大飢饉などで貧窮した庶民の暮らしを立て直し、いまの農協の最初の形を整えた功績は大きく、まさに日本人の今の暮らしの礎を手がけた市井のヒーローなのです。日本初の経営コンサルタント、世界でも草分けの存在と言えるでしょう。200年前に金次郎がその境地に辿り着き、貫いた思想の数々は、いまも変わらず私たちの中に生き続けています。幕末と同じ大転換期にあって、二宮金次郎の思想の重要さはますます高まっていると思います。

二宮金次郎の仕法『七つの教え』

二宮金次郎が郷村を立て直す際の仕法は報徳思想といわれ、次の七つに集約されます。詳細は別の機会にしますが、簡単に紹介します。

1.積小為大(せきしょういだい)

小さな努力をこつこつと積み重ねていけば、いずれは大きな収穫や力に結びつくという教え。

2.分度(ぶんど)

人には、決まった収入がある。それぞれの人がその置かれた状況や立場をわきまえ、それにふさわしい生活を送ることが 大切であるという教え。収入に応じた一定の基準(分度)を決め、その中で生活する必要性を説いた。

3.至誠(しせい)

至誠とは最高の真心であり、「我が道は至誠と実行のみ」という言葉の通り、金次郎の仕法や思想、そして生き方の全て を貫いている精神。

4.一円観(いちえんかん)

この世で相対するものはすべてが互いに働き合い、一体となっている。だから決して切り離して考えるのではなく、 両方を合わせて一つの円とし、一つの円の中に入れてみるという考え方。

5.勤労(きんろう)

自分や地域の向上のために自分できる仕事に励むこと。

6.推譲(すいじょう)

一定の基準(分度)によって生まれた力やお金は分け与えて自分で独り占めしてはいけないという思想。

7.芋こじ(いもこじ)

桶の中に里芋と水を入れ、棒や板でかき回し、芋と芋とがぶつかり合い、こすれ合って、うまい具合に汚れが落ちてゆく 「芋をこじる」から発想し、農民達自身の内発的な意欲と努力を生み出す農民同士の話し合いの場のこと。

二宮金次郎、仕法の伝授法

二宮金次郎は、他の郷村から仕法の伝授を頼まれると、その郷村で改革のリーダーになる人物複数名を引き受け、従者として2年間は手元で修行させます。今で言うOJTですね。

最晩年の天領日光の復興以外は、自分が出向いて仕法を行うことはなかったと言われています。これは、金次郎に依存せず自力で仕法を定着させてこそ復興が成る、という信念からと思われます。このことは指導者のとるべき態度を示していると思います。

映画『二宮金次郎』に代わる学びの場を

このブログを最初に掲載した時点(令和2年3月)では、映画の上映会を開く予定でした。映画上映プロジェクトの一環で金次郎の七代目子孫・中桐万里子さんに事前勉強会をお願いするなど機会を設定してきましたが、コロナウイルス感染症の蔓延であえなく中止となり現在に至っております。今後とも機会をみて、二宮金次郎の仕法を学ぶ場を設定していきたいと思います。