コント・紅

◯ファミレス
スーツ姿の男(28)が、冴えない青年(20)に資料を見せながら何かの勧誘をしている。

スーツ「だから君も、稼げるようになりたいなら稼いでる人の真似をしなければいけないよ?」
青年「そうなんですね」
スーツ「こういう風になりたいなぁって人は周りにいる?」
青年「周りには、いないですね」
スーツ「環境が人を育てるから、僕が主催してるグループに入会したら人生変わるよ?意識高い人しかいないから」
青年「ほんとですか!?」
スーツ「自分にとってのメンターを作らないと」
青年「はぁ」
スーツ「身なり服装もさ、稼いでる人は皆凄く気を配ってるよ。言いたくないけど、ちょっと野暮ったいじゃない?」
青年「そ、そうですね」
スーツ「入会したらどう?目標にできる人がいないと君も成長できないよ?」
青年「一応、憧れてる人はいるんです。その人の真似をした方がいいってことですか?」
スーツ「まぁそうだね。でもさ、まずはうちに入会して…」
青年「(話を遮って)ありがとうございます!まずは真似から入ってみます!(去る)」
スーツ「おお、ちょっとちょっと!…また次回だなぁ」

◯後日、同じファミレス

スーツが座っている。

スーツ「あの子遅いなぁ。今日こそ入会費ぶんどってやるぞー」

青年がやってくる。
すごくパンクな服装をしている。顔も白塗りしている。

青年「申し訳ないです。おまたせしました」
スーツ「え、どうしたのその格好?」
青年「言われた通りに真似してみました」
スーツ「は?」
青年「先週おっしゃってくれましたよね。目標とする人の真似をしてみろって。僕にとってのメンターはX JAPANのTOSHIなんです」
スーツ「え、君はミュージシャンになりたいの?」
青年「違います」
スーツ「何になりたいの?」
青年「強いて言えば、金持ちです」
スーツ「じゃあなんでTOSHI?」
青年「TOSHIの生き様です」
スーツ「あんま知らないけど、ライブ時の見た目真似しても意味ないんじゃない?」
青年「え、まずは真似からだって言いましたよね?」
スーツ「それはそうなんだけどさ」
青年「入会します!」
スーツ「は?」
青年「入会します!入会金いくらですか?」
スーツ「ダメ」
青年「え?」
スーツ「ごめん、入会拒否。君がメンターに出来るような人は、このグループにはいない。荷が重いよ…」
青年「…そうですか。では、残念ですが僕はこれで(去る)」

青年が去った後、スーツの男はシャツのボタンを外す。下に着ているTシャツの胸には《X JAPAN》の文字がプリントされている。

スーツ「俺も、X JAPANが大好きだから」

《完》

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