見出し画像

WeChatエコシステムのアカウント種別

中国向けのサービスを開発したり提案したりしたりする場合、避けて通れないのが「WeChat」です。しかしWeChatエコシステムは複雑で難解です。
WeChat関連サービスを構築するにしてもサードパーティのソリューションを活用してクライアントへ提案するにしても、WeChatエコシステムのアカウント種別を良く理解しておく事が重要です。
一般的に「WeChatアカウント」というと個人のWeChatアカウントをイメージすると思います。個人のWeChatアカウントももちろん1つのアカウント種別です。
それではWeChatエコシステムには個人のWeChatアカウント以外にどんなアカウントがある見ていきましょう。


WeChatのアカウント種別一覧

WeChatアカウントの種類と用途
(日本語の呼称は通称です)

「個人WeChatアカウント」は日本人でも登録可能です。GooglePlayやAppStoreからWeChatをダウンロードしてSMSで携帯番号認証を行えば登録完了です。もちろん日本の携帯番号にも対応しています。
一方「サービスアカウント」「ミニプログラムアカウント」「企業WeChatアカウント」を中国大陸外で登録する場合には「企業認証」が必要です。
従って外国人の個人はこれらのアカウント登録は出来ません。
また、「購読アカウント」に至っては法人であっても中国大陸外では登録が出来ません。
ちなみに日本で「WeChat公式アカウント」と呼称する場合は「サービスアカウント」を指すのが一般的です。

企業認証とは

WeChatアカウントを法人や団体名義で登録する場合には「企業認証」が必要となります。
これはテンセント社が指定するいくつかの認証会社を通じて「この法人は確かに存在しています」という認証を受ける作業の事を指します。
認証会社は2022年2月時点だと以下の4社ですが、企業認証を申し込むとテンセント側が一方的に割り当てて来るので申請者が選ぶ事は出来ません。

テンセント社指定の認証会社

日本企業の場合、企業認証の手続きに必要なものは基本的に以下の6点です。

  1. メールアドレス(WeChatに登録した事がないアドレス)

  2. 登記簿謄本(全部履歴証明のカラースキャン)

  3. 法人代表印(申請書への捺印が必要)

  4. 認証費用(99ドル)

  5. 管理者となる人の個人WeChatアカウント

  6. 管理者となる人の写真付き身分証明書(パスポート、運転免許証などのカラースキャン)

  7. 管理者となる人名義、もしくは法人名義の連絡先電話番号

  8. 7番の連絡先電話番号の名義を証明するもの(直近三か月の料金明細)

企業認証の具体的な手順はここでは説明しませんが、認証会社とのメールと電話でのコミュニケーションが必要となります。コミュニケーション言語は基本的には中国語か英語です。割り当てられた認証企業や認証担当者によっては日本語で対応してくれるところもあります。(ただし認証企業や担当者は選べないので、日本語で行けるかどうかは運次第です)
認証の過程には電話での確認もありますのでGoogle翻訳だけでは厳しいでしょう。「WeChat公式アカウント取得代行」のサービスは色々な企業が提供していますので、コストが合うなら利用する事も1つの選択肢だと思います。
認証費用の支払いは日本のクレジットカードでも可能です。
なお、企業認証の有効期限は1年間なので1年ごとにこの作業が発生します。

企業認証は必須なのか

WeChatの公式アカウントを開設する際には企業認証が必須ですが、更新は必須ではありません。
更新を行わなくてもアカウントが削除される事はありませんが、以下の特権がはく奪されます。

  • 認証バッジの表示

  • 公式アカウントAPIの利用(一部は企業認証がなくても可能)

  • 公式アカウントの認証情報を利用したミニプログラムアカウントの作成

認証バッジ

以前あるクライアントから「お試しで認証なしのWeChat公式アカウントを作りたい」というリクエストを受けた事がありますが、認証なしの公式アカウントを最初から作る方法はありません。
公式アカウントはメールアドレスさえあれば作る事が出来ますが、アカウント作成直後は管理画面へログインしても企業認証を促す画面だけが表示され企業認証の申し込み以外は何も出来ません。

WeChat?微信?

実は「WeChat」というのは海外向けの名称で、中国国内では「微信」と表記するのが一般的です。
これは「抖音」というショートムービーアプリが海外では「TikTok」と呼ばれているのと同じです。
ただし、TikTokと抖音がシステム的に完全に分断されているの対してWeChatと微信はシステム的には同じプラットフォーム上に存在しています。
その為、WeChatで登録した公式アカウントはWeChatからだけでなく、微信からも見る事が出来ますので、WeChatと微信で別々に公式アカウントを登録する必要はありません。
元々WeChatと微信は名前が異なるだけで機能的にはほとんど同じでした。
しかし2020年頃からテンセント側はWeChatと微信を明確に分け始めたように感じます。これは恐らく「チャンネル」機能の存在が大きと思います。
「チャンネル」というのは個人のWeChatアカウントでTikTok的なショートムービーを投稿出来る機能です。
WeChatは元々LINEのようなクローズドなチャット&通話アプリでした。「モーメンツ」というタイムラインはあるものの、あくまで友達同士で見るもので個人のユーザーが不特定多数向けのUGCを発信するような設計ではなかったのです。
その為TikTokと抖音のようにシステムを分けて中国の厳格なコンテンツ規制を回避する必要がありませんでした。
しかしTikTokの台頭に追随する為に「チャンネル」機能を実装した代償として明確な線引きが必要となったのでしょう。
それにより今後WeChatと微信の分断がある程度は進むと考えられますが、TikTokと抖音のように完全に別プラットフォームとなる可能性は低いでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?