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新・世界秩序 (シン・セカイ)

古くはキャピタルとして栄えていた場所だからだろう。観光客の為に昔ながらの木造建物を多く残してある。「はんなり」という表現が似合う、趣のある景観が残り、人も他の都市とは違う偏屈なプライドを持っていると言われている。
ミフネ・レイは、御影石を敷き詰めた風情ある石畳の道を歩いていた。
ネネ・アベニューと呼ばれている、コウダイジの西側に続く道にあるカフェ、ハギ茶寮で、人と待ち合わせをしているのだった。

店に入ると、既にジョセフ・カレハがいた。夏でも着丈の短いジャケットに大きめのパンツといういつもの姿だった。

「あんたが直々に現場に来るなんて珍しいな」

「訳は知っているだろ?」
ジョセフはまだ、何も注文していないようだった。

「さぁな。折角だから、蕎麦でも食べようぜ」
ミフネはとぼけて見せた。愚痴っぽいジョセフの話など聞きたくもない。

「コーヒーだけでいい。それより、新しい情報を教えてくれ」
ジョセフは、山高帽を脱がずに焦るように聞いてきた。こういう所もミフネは嫌いだった。

「おいおい。ガイジンはこんな庭が好きじゃないのか?まったりしろよ」

カフェの庭は、いかにもという二ホン庭園を設えていた。今となっては、ドロイドが完全に管理している。ミフネ達以外に人間の姿はいなかった。

「バカにするなよ。こんなところに呼び出すだけでも危険なのに、ゆっくりしてられるか」

「こういう時だからこそ、こういう所の方が安全なんだぜ?おチビさん」

背の低いジョセフは、ミフネを睨みつけた。こういった冗談はジョセフの最も嫌いな事だ。

「おい。いい加減にしろよ。お前……」

ミフネは、ジョセフの言葉を遮って直接、脳内へメッセージを送った。

「ティオーネは拘束されていない。次に姿を現すのは、早くても一週間後だ」

それは、どういう事だ?という言葉をジョセフが言う前に、ドロイドが冷やし鳥おろし蕎麦を2つ運んできた。

「な?まぁ食えよ。話はそれからだ」

続く


一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!