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【美術展2024#70】Nerhol 水平線を捲る@千葉市美術館

会期:2024年9月6日(金)〜11月4日(月)

Nerhol(ネルホル)は、田中義久(1980–)と飯田竜太(1981–)により2007年に結成されたアーティストデュオです。二人の対話を契機に、人や植物など「移動」にまつわる様々な事象のリサーチを通じ、他者に開かれてきた長年におよぶ表現活動の歩みを、美術館で初となる大規模な個展によって紹介します。
 Nerholの活動は、グラフィックデザインを基軸とした田中と、彫刻家である飯田の協働性を特徴としています。人物の連続写真を重ねて彫る初期のポートレートから、今日では帰化植物*や珪化木*、アーカイブ映像まで対象を広げ、独自の世界観を深化し続けてきました。写真と彫刻、自然と人間社会、見えるものと見えないものといった複数の境界/間を、日々の会話のように行き来して紡がれてきた作品は、私たちを多様な解釈へと誘います。
 「Nerhol 水平線を捲(めく)る」展では、これまでの活動における重要作や未発表作に加え、千葉市の歴史や土地と関わりの深い蓮をテーマとした最新作、さらには二人が選ぶ美術館のコレクションを展示し、この場所だけでしか体験できない空間を創出します。人間の知覚や現代社会における一義的な認識では捉えることができない、Nerholによる時間と空間の多層的な探究は、千葉の地で豊かな展開を見せることでしょう。

千葉市美術館


千葉方面にちょっとした用事があり、都合がついたので気になっていた千葉の美術館・博物館をいくつか回ってみた。

まずは千葉市美術館。

千葉への用事が無かったとしても訪れたであろうNerhol展。
現物を初めてみたのは「VOCA展2020」だったか。

画像で見るだけでは決して伝わらない立体感のあるマチエールからは、紙の素材感はもうほとんど感じない。
水面下の歪んだ図像のような、写真とも絵画とも彫刻とも言えない不思議な世界観は強烈なインパクトがあった。

VOCA賞を受賞したその作品は今回も展示されていたが、残念ながらその作品を含んだ第一室は丸ごと撮影不可。

初期の頃はカッターで切っていた層の断面は次第にノミで荒々しく彫り落とすスタイルに変化していく。

《circle》2011
《circle》2011


《Interview》2017
(部分拡大)《Interview》2017

写真の層を接着剤で固定してから紙の塊を掘っているのかと思ったら、固定せずに掘り、その後に一枚一枚貼り付けているとのこと。
手間はかかるが切断部分の複雑さ、自由さ、柔らかさなどはカッターナイフ期よりも圧倒的に強い。
昔、学校の社会の時間に見た等高線が刻まれたレリーフの地図のようにも見え、地図好きの私はなんだかわくわくする。


左奥の平面作品は今展最大級サイズ。

(手前)《Read the historical facts》2024
《Trifolium repens》2022
(部分拡大)《Trifolium repens》2022

シロツメクサをモチーフとしているが、それぞれ画角の異なる映像が用いられている。
複数の時間を一つの作品に閉じ込めているが一見しただけではわからない。
それよりも巨大な画面が発する凄まじい圧に吸い込まれそうになる。


下階フロアでは千葉市美術館所蔵作品とのジャムセッションとなる。

最新のシリーズではついに画像すら無くなり紙のみのマチエールになる。

(手前)《作業台》1977 小清水斬   (右奥)《Tenjin》2014


(左)《Canvas(Nusa)》2024  (右)《突きより》1973 李禹煥
《Canvas(Nusa)》2024


(右)《赤ん坊の影 No.387》1974 高松次郎


(奥)《With Winds》1991 李禹煥


(左)《楓図屏風》 (右)《Prunus mume》2024


(左)《Interview》2017  (右)《萩原朔太郎像》1943 恩地孝四郎


自館収蔵作品を用いてのジャムセッションは、特にコロナ以降各地で目立つようになってきたと感じている。
昨今のセッション系展覧会の中で個人的に一番印象的だったのが、春に国立西洋美術館で行われた「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」展だ。
館の歴史・文脈を踏まえながらアーティストたちが各自のフィルターを通して館所蔵作品を用いて新たな表現や問いを生み出す。
場の必然性、その作品を用いる意味、それらにしっかりと説得力があった。
中には荒ぶる作家もいたが、それらを束ねて唯一無二の展覧会を作り出した新藤学芸員の手腕も見事だった。
西洋美術館でなければならない、西洋美術館にしかできない秀逸な展覧会だったと思う。

個人的に今回のセッションはそういった必然性や意味があまり見えてこなかった。
千葉市美術館で行うことや、その作品でなければならないことの意味よりも、表面的な共通性や類似性の方が強く見えてきてしまった。
Nerholという個の作家の複数の作品に対して美術館コレクションの引き出しの中からそれぞれ合うものを選ぶ、という構図だとどうしてもそうなってしまうだろう。
Nerholの作品やコンセプトそのものはとても良かったし、所蔵作品も名作揃いなのに後半でそれぞれの良さがぼやけてしまったのが残念だ。
純粋にNerhol作品だけで見せた方が世界観を強く表現できる展示になったのではと思う。

それに対して一階「さや堂ホール」の展示は圧巻だった。
千葉市の花オオガハスを原材料とした和紙を用いて、市指定文化財の旧銀行ホール床を埋め尽くす。
この場所に関係する様々な時間軸が重なり合うこのような空間こそ、今回の千葉市美術館での展示には相応しい気がした。

《Conceal with Oga lotus》 2024


どこでもドア発見



昨年の三沢厚彦展以来の千葉市美術館だった。
帰り際にミュージアムショップに寄ったら三沢厚彦フィギュアの新作が出るとの情報をキャッチ。

困ったなあ、また嫁に怒られるなあ(予約ボタンをポチリ

我が家の三沢厚彦コレクションたち
昨年会場で三沢氏にお会いしてサインをいただいた



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