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兄の個人面談

兄が4年生になり、初めての個人面談だった。兄の学校は、生徒は2年に一度クラス替えとなるが、担任は毎年入れ替わる。4年生は担任が入れ替わる学年だが、今年度は状況を鑑み、担任も持ち上がりになった。だが、兄のクラスだけは3年生の担任が転勤になり、他校から来た先生に変わるとのこと。もう8月だが、今日の面談で初めてお会いすることになった。

「よろしくお願いします」と一言仰り、いきなり本題に入った。「最近学校のことで、何か話を聞いていますか?」 これが来たときは、何かあるときだ。何もなければ「最近どうですか?」なのである。最近の兄はクラスの女子といざこざもあるようなので、その話を切り出すことにした。

女子とのいざこざエピソード2件、男子とのいざこざエピソード1件。先生は状況が目に浮かぶほど雄弁に語り、どうやら兄は、先生のお手を煩わせているということがよくよくわかった。

2年生のとき、似たような経験がある。担任の先生は出来事を事細かに記録していた。友だちとのいざこざのやりとりについて、何が発端で、どっちがどう悪くて、どのように断罪したかの一部始終を説明され、割と同じパターンで喧嘩をする兄の対人関係力の低さを指摘された。学校生活のトラブルを把握できるのは有難いし、兄に未熟なところがあるのもわかっている。でも状況報告と問題提起だけをされても、親は困惑するだけだ。

もちろん、指摘された内容について子どもと話はする。兄が悪い部分は正しもする。が、前後に並んだ男子との上履きを踏んだ踏まないの小競り合いだったり、走ってはいけない廊下を走った走ってないとかの保身を賭けた言い争いだったりに対して、毎度、事細かに事情聴取をして、御沙汰を下す必要があるのだろうか。「おい、次はするなよ」の一言で済ましてはいけないのだろうか。親に求められている対応は何なのだろうか。

一挙手一投足がクラスの事件になると、「あの子がまたやってる」と、クラスメイトからの告げ口頻度が増え、結果、先生に怒られる頻度が増える。そして怒られる当人は、常に指摘される自分の行動に自信が持てなくなる。2年生のときはこの負のスパイラルから抜け出せなくなり、私は秘密裏に、スクールカウンセラーのフォローを仰いだ。おかげさまで自信を取り戻し、昨年は先生との相性も良い中で、平和な一年を過ごした。

決して、平穏なコミュニケーションが良いと思っているわけではない。摩擦が起きるからこそ対人関係力が磨かれ、内面の成長が促されるのだと信じている。そのプロセスに友だちとのいざこざはあって然るべきで、だからこその集団生活だろうと思うのだ。同じ過ちも繰り返しながら、6年をかけて学んでいく場なのではないのだろうか。

集団の中で、兄が少々目立つ行動をとるおかげで、真っ直ぐに敷かれたレールをはみ出たときの風当たりの強さを実感する。私ができることは、兄が今の環境の中で孤立しないこと。最大の支援者でいてほしい担任の先生には、日頃の感謝をお伝えし、時折、笑いも交えながら時間オーバーで話をしてきた。一年間、どうかよろしくお願いします。


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