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幼稚園からの帰り道は、走らずにはいられない

弟の通う幼稚園の脇には、緑の生茂る遊歩道がある。全長7キロもあるという長い長い遊歩道は、犬の散歩やランニングなどで利用する人が多く、町の人の憩いの場となっている。

園庭が狭いため、暑さが落ち着く2学期になると、体力づくりのために遊歩道でマラソンをするのが、弟の幼稚園の通例だ。冬には遊歩道を会場にしてマラソン大会も開いてしまうのは、さすが地域に根付いた園である。

子どもたちは、マラソン大会に向けて毎日遊歩道を走る。すると、走ることが好きになると同時に、遊歩道=走る場所という意識が刷り込まれていく。

幼稚園を出発し、遊歩道を真っ直ぐ西に向かうと、我が家の近くまで行ける。弟は有無を言わさず、西に向かって走って帰る。同じ方面の友だちが合流すると、何人もの子どもたちが一斉に走り出す。幼稚園の降園時間は14時。ちょうど人が少ない時間帯であるのがいい。誰もいない遊歩道をのびのび使って、わんぱく男子たちが我先にと緑の中を駆け抜けていく。そのあとをわんぱく女子たちが追いかけていく。

子どもたちが風を切って走っていく様は、とてもすがすがしい。ジョギングなんて知らないから、常に全速力。親は自転車でなければ、とてもじゃないけど追いつけないスピードだ。歳を重ねるごとに速く、長く走れるようになり、年長の今では、園から自宅近くのポイントまで、ノンストップで走りきるようになった。

走りながら、ひとり、またひとり、道を逸れてお別れの時間。「バイバーイ!」「また明日ねー!」と、走りながら軽やかに別れの挨拶を交わし、我が家も右折して家路に着く。弟はハァハァしている息を整え、水筒の水を飲み干すと、「今日はね、世界地図を作ってさ…」と、何事もなかったように今日の幼稚園での出来事を話し始めた。

こんな日常も、9月に入ってから復活できたことのひとつ。弟の日常が戻りつつある。

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