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[3000円ワイン]日本ワインは、夢を買う。〈日本/メルロー・カベルネフラン〉

夫氏の実家から、お歳暮が届きました。

いらっしゃいませ

こちらは北九州市若松区にあります、ワタリセファーム&ワイナリーさんの造るワインです。

ワタリセファームさんは、夫氏の地元「若松区」に、2018年にできたワイナリー。ちなみに「ワタリセ」とは地名のことでして、字を「渡瀬」と書きます。車で5分も走れば海に出られる、潮風の町。

北九州市は「海」や「河川」といった、水との距離が近いまちです。

たとえばワタリセファームさんや夫の実家がある若松区と、そのお隣のまち戸畑区のあいだには、洞海湾(どうかいわん)という湾があります。関門海峡から流れ込む海水によって、形作られた湾です。

ここ、船で行き来できるんですね。若松区と戸畑区を陸路で移動しようとすると、湾をぐるりと迂回する形になるので時間がかかります。それが、船だと、片道なんと3分。
北九州エリアを代表するランドマークのひとつ「若戸大橋」がかかるまで、この航路は若松と戸畑を直接結ぶ、唯一の「道」だったんだそうです。

船は今も現役で、地元の方には「ポンポン船」と呼ばれ、日常的に利用されています。うちの夫氏もまさにこの「ポンポン船」に乗って、毎朝、洞海湾を渡って高校に通っていたんですって。なんか、島の子みたいですよね。(陸の子です)

若松というと最初に思い浮かぶのが、この「ポンポン船」と若戸大橋の風景です。そんな郷愁あふれる夫氏の地元、ワタリセファームさんと出会ったのは、実は少し前でした。


ワタリセファームさんで自社醸造が開始された年である、2018年の初冬。わたしたちは小樽にある、オサワイナリーさんにうかがっていました。

オサワイナリーさんは、歴史ある石蔵をつかったモダンな雰囲気のワイナリー
北海道の固有品種「旅路」のワインを初めていただいたのもこちら

ここでワインをいただきながら、ワイナリー長の長(オサ)さんとお話していたのですが、話の流れでオサさんが、夫氏と同じ北九州市のご出身だということが分かります。しかも聞くところによると、夫氏の兄と同じ大学を出られているそうではないですか。

こんな遠く離れた北海道で、同郷のかたにお会いするだなんて…!と、ひとしきり地元トークで盛り上がったあと、「そういえば」と教えてくださったのが、このワタリセファームさんのことでした。

「わたしの友達が今年から、北九州でぶどう畑とワイナリーをはじめてるんですよ」

・・・運命?


以来、夫氏の実家に帰ったときにはワイナリーを訪問しようと楽しみにしていたのですが、その矢先に起こった一連の感染症にまつわる出来事。国内外の旅に出づらくなり、福岡への帰省もストップし、結果的にワイナリーへの訪問もできずにいたのでした。

さて、あれから幾星霜。
われわれますたや家は、今年の秋に福岡へ帰省してきました。

このとき、ワタリセファームさんのことももちろん話題にのぼったんですね。でも、どうしても時間の都合でうかがうことが叶わず。
まったくもう、うっかりワイン三昧なんかやってるからだよ…!

こうして泣く泣くあきらめた我々のことを、どうやら不憫に思って気遣ってくださったのでしょう。夫氏のご両親からふと届いた贈り物(お歳暮)が、このワインだったというわけなのでした。やだオタク心、わかってる…!

ワタリセルージュ2022[¥3300]

<ワインdata>
国:日本 種類:赤 品種:メルローとカベルネフラン主体、アルモノワール(少量) ヴィンテージ:2022 生産者:ワタリセファーム&ワイナリー インポーター:ー

<バランス>
酸味★★☆☆☆ タンニン:★★☆☆☆ 香り:★★★★☆

さて、到着早々ではございますが、2本届いたので1本は早速開けちゃいます。

なんでもこのワイン、ホームページによると生産本数は228本とのこと。
うしろのエチケットの手書き具合からも、「そもそも少量生産の予定です」感がすごい…!

150枚目くらいでいったん疲れそうなエチケット書き

品種はメルローとカベルネフランということで、いちおうボルドーブレンド風ではありますが、外観は明らかに明るく、おそらくちょっと軽やか系なんだろうと想像します。

実際、香りは「え、あなたもしかして、マスカット・ベーリー…?」と言いたくなるような、チャーミングな香り。

味わいも同様で、若干糖が残ったような甘っぽさがあって、ドライながらもかわいく飲めます。若さゆえのわずかなプチプチ感が、これまたいいアクセントに。

くちに含むとわずかに青っぽい感じも感じますが、いわゆる「カベルネフラン」らしさから考えると、むしろいい意味で「らしくない」雰囲気。
ボルドーブレンドっぽさを求めるよりも、この、素直で軽やかな雰囲気をごくごく楽しみたいワインでした🍷ワイン飲み慣れてない女子なんかにも、もしかして結構イイんじゃないかなぁ…!


いやあ、我らが北九州、それも、あの若松からワインが生まれるとは…!
そんな感慨を抱きながらワインを飲んでいると、ふと、無粋な想像が脳裏をよぎります。

1本3000円。全部で228本。

ってことは、3000円×228本……………き、厳しい……ッ!

日本ワインはどうしても、こういった少量生産になりやすいです。畑の面積も小さいことが多いですし、設備の拡充や人手の確保もいきなりは難しい。
というか、この計算が示唆しているように、初期投資の回収フェーズだけで、年単位、数十年単位の時間がかかることは容易に想像できます。

日本ワインを買うことは、「夢」を買うこと。

わたしはときどき、そう思います。
たとえばフランスワインにおける「3000円」と、日本ワインにおける「3000円」は、価値の生まれる文脈が、ほんの少しだけ違うように感じるんです。

誰かの夢を、応援すること。誰かの夢に、投資すること。
そして、ともに未来を創造すること――

そんな思いを乗せて買う、地元で生まれたワイン。
たまにはこんな夜を過ごすのも、大変エモいんじゃないでしょうか。これ、自分で買ってないけど………!

ごちそうさまでした♡

ということで、義理のご両親の心遣いに感謝しつつ、夫氏の地元に思いを馳せた夜だったのでした🌙


それではまた次の #3000円ワイン でお会いいたしましょう!3000円台のワインをこよなく愛する、3000円ワインの民ますたやでした♪

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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパート・WSETLevel2(英語)を取得、現在はWSETLevel3(英語)に挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!

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