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ロビンフットおぐさん @robinfoot_ogu の「R-1ぐらんぷり2014」のあのネタについて

▼小学館「週刊スピリッツ」2014年5.12/18号より


 日本一のひとり芸を決定するというふれこみのテレビ番組「R-1ぐらんぷり2014」を見たという方はどれくらいいるでしょうか。私は見た。だれよりも見た。と言いたいくらい見た。なにしろ予選には自分も挑戦していて二回戦まで行ったし、事務所SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)の先輩である、おぐさん(いつもは「ロビンフット」というコンビで活動中)が決勝戦進出したからだ。

 ハンサムなのに絶妙な感じでハゲてしまっている男が、鏡の前で身づくろいをしていると、どこからともなく「ハゲてるよ!」「センスも毛もねえなあ!」とツッコミの声が合唱状態で聞こえてくる、というネタをやったのがおぐさんです。直木賞作家の山本文緒さんもツイッターであのネタが好きだと表明したあと、《(おぐさんという人は実は男前だよね)》と、愛あるツッコミをいれていた。

 ネタ中にニット帽をかぶるシーンがあり、予選では私の貸した帽子をつかってくれたこともあるというのがちょっと自慢なのですが、あのハゲネタはソニー芸人ならではの「発明」だったと思っている。SMAは芸人事務所としては後発で、他社で苦労してから辿り着いた芸人が多い。辿り着いてからも時が流れ気苦労を重ね、気がつくとハゲている。その絶望を経てきた魂のまぶしい輝きが、あのハゲネタの土壌になっていることは明らかです。

 ハゲが多いのでハゲネタをやる芸人も多いわけですが、ハゲていればだれにでもできるネタだったとは思いません。なにしろ、ツッコミの声を後輩たち(私にとっては先輩たち)が担当しているのです。その後輩たちの名前はご本人がインタビューなどで明かしていますが(決勝進出のヒューマン中村の元相方である徳原秀俊が“リード・ツッコミ”)、ピン芸なのに後輩たちとの合作だと公言しているって新しくないですか。そもそもあなただったら、ハゲている自分を後輩たちに罵られる設定を思いついたり、実演したりすることはできますか。

 結果的にニコニコ動画のツッコミの文字を音声で表現した風の、超絶シンプルな仕上がりになっているけれども、先輩後輩の常日頃の協力体制と、おぐさんの技量・人柄・容姿・人徳などが揃わなければ完成することはなかったはず。ツッコミの声の録音現場を何度か見学しましたが、一文字ずつ推敲が重ねられ、じつに一年かけてあの最終形に着地したのです。

 とりわけ画期的だと思うのは、ハゲネタなのにハッピーエンドである点。「ハゲの男たちに希望を与えよう」みたいな方向で広告的に考えていったわけではなく、笑いをとろうと一年間ずっと試行錯誤した結果、笑顔で終わる仕上がりになったということの美しさ。

 審査員の評価が高かったにもかかわらず決勝戦のブロック予選で敗退してしまい、続編的なもう一本のネタが披露されることなく終わったのは残念でした。そのハゲネタ二本はご本人の許可を得て私がネット(YouTube)に公開しましたので、ぜひご覧ください。そして髪に関するテレビコマーシャルへの出演依頼などが、おぐさんに殺到しますように。


おぐR-1ぐらんぷり2014決勝戦ネタ: http://youtu.be/z2ImfOLJDYY


おぐR-1ぐらんぷり2014決勝戦まぼろしのネタ: http://youtu.be/TaP9nXwUnic


お笑いナタリー - おぐ、R-1初の決勝進出を支えた相方と後輩 http://natalie.mu/owarai/news/111057


「ロビンフット」http://natalie.mu/owarai/artist/6130


「ロビンフットおぐ」さんツイッター https://twitter.com/robinfoot_ogu


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