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スポーツがくれたもの

今note上で「スポーツがくれたもの」というお題でコンテストを実施しているのを見つけた。良く読むと日本在住者のみの募集のようだが、せっかくなのでテーマを使わせてもらって書いてみる。

私が一番長く係わってきたスポーツは陸上競技だ。小学校の陸上クラブから始めて中学、高校と6年間陸上部だった。大学以降、一時は遠ざかったが、今でもジョギングは趣味で続けている。

なぜ陸上競技か。小学生の時に周りに比べて背が高かったこともあり、走るのが速い方だった。だからなんとなく走るのが良いかな、と思って始めた。加えてマイペースな性格なので一人でできる競技が向いていた、ということもあるかもしれない。

陸上競技の練習はとてもシンプルだ。とにかく走る。距離を変え、速度を変え、体の向きを変え、走る。走る。走る。幅跳びや高跳びなんかもあるけれど、どんな種目でも基本は走れないといけない。とにかく走った日々だった。

ところが小学校から中学校に上がり練習も本格的になったある時、足を痛めてしまった。軽い肉離れのような症状で走ると痛い。足を休ませるしか治す方法はない、というわけで、しばらくグラウンドの片隅で筋トレなどをしながら過ごすことになった。

ある日それを見た顧問の先生が言った。

「砲丸投げてみるか。」

この一言でその後の競技人生が一転してしまうのである。

砲丸投げなんて、10代の女の子は絶対やりたくない種目である。宙を舞う高跳びとか、カッコいいハードル競技じゃない。砲丸投げだ。なんてったって鉄の玉を力いっぱい投げるのだ。オリンピック競技で、雄叫びをあげるガタイの良い外国人選手の姿が目に浮かぶ。

でも顧問の前で「嫌です」とは言えず、その日から重さ2.7kgの鉄の玉を相手に練習が始まったのだった。

その後足が治って普通に走ることができるようになっても、砲丸からは離れられなくなった。最初に出場した市内大会でいきなり2位になってしまったのだ。それをきっかけに砲丸専門という私の立ち位置は固定されたものになった。

(ところで、大会後の全校朝会で表彰状を読み上げられた時の恥ずかしさと言ったら、、、。クラスメートには自分が砲丸投げをしているなんて、もちろん話していない。読み上げられた途端の「え、お前、砲丸?」という周りのザワツキを今でも覚えている。)

丸いピットの端に立ち、砲丸を肩で支え後ろを向いて体を倒す。ステップを踏んだ後振り返りながら体を開いて砲丸を放つ。放つ最後の瞬間に手首を使って人差し指と中指から砲丸が飛び出していくようにする。上手く「かかれば」びっくりするぐらい距離が出るし、ダメな時はポトッと落ちるだけ。体の角度、ステップのタイミング、体重の移動、ひとつひとつチェックしながら練習を続ける。大きな筋肉も大事かもしれないけれど、結局は全ての動作がタイミングよくバランスよくスムーズに起こった時に自然と結果が着いてくる。やっていく内に、力以上に技術がとても大事な競技だと言うことが分かった。高校を卒業するころには、砲丸投げをやってます、と堂々と言えるようになっていた。

さて、ここで最初のテーマに戻ろう。スポーツがくれたもの、それは

「左右非対称のくびれと今の職業へのヒント」だ。

何のことか分からないと思う。

まずくびれについて。

大人になったある時に、鏡を見てウェストが左右非対称であることに気付いた。左右でかなりの差がある。最近になるまで理由が分からなかったのだが、これは砲丸投げ(プラス円盤投げ、槍投げ)の練習のせいだと気付いた。

10代の成長期に右から左へねじる動作を延々と繰り返し練習した。筋トレもした。胴体をねじって左側の筋肉を収縮させる動きだ。それにより左側の筋肉が発達してしまったことに加え、真直ぐに立っていても腰が若干ねじれているのである。だからと言って日常生活に支障があるわけではないが、極々たまに右の腰のあたりが痛むことがある。これもねじれのせいだと分かって対処するとすぐ収まる。

もうひとつ、今の職業へのヒント。

高校の部活では、練習後に部員同士で足のマッサージをする時間があった。顧問を含めた部員全体ミーティングも兼ねながら、互いの筋肉をほぐしていく。それまでにも、練習中に足を痛めたり、腰を痛めたりしていたので、体のことについては結構興味があり、セルフケアのために家で指圧の本を読んだりもしていた。現在マッサージセラピストとして仕事しているのはこの体験がヒントになっている。当時通ったスポーツ整体の先生に薦められた変わったストレッチ法も、今となってはどの筋肉を延ばすための動きだったかよく分かって、何かが繋がったような気がしている。


普段使っているジョギングルートの途中に陸上競技場がある。砲丸投げのピットを見るたびに10代の頃が懐かしく思い出される。






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