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生まれて初めてガチの野良猫を保護した話④

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捕獲できないかもしれない

夜8時。私たちはえつこさんのサロンに集まりました。長期戦を覚悟して、マフラーやら手袋やら、全身防寒具でもっこもこです。

でも、そのとき私は心の中で、何度もこう思っていました。

捕獲できないかもしれない。捕獲できないかもしれない…。

実は数日前も、私たちは一度、えつこさんと捕獲に挑戦していました。雨が何日か続いたあとで、今ならきっとしっぽはお腹が空いてるだろうから、と。でも、残念ながらそのときは、深夜まで粘ったにも関わらず、そもそも姿を見ることすらできなかったのです。

あのときの、徒労感やがっかり感。もし今夜、「絶対に捕獲できる!」と期待して、また叶わなかったら、それでも再トライしようって気持ちが、もう持てないかも知れない。だから、捕獲を望む反面心の中で、できないかもできないかもと、言い聞かせてしまう自分がいたのでした。

「じゃあ、準備しましょう」

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これが捕獲機。中にあるプレートを猫が踏むと、入り口が閉まる仕組み。マイ捕獲機があるなんて、さすがえつこさん。

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新聞紙とペットシートを敷き、カバーをかけて、ガムテープでとめます。ペットシートは、猫が排泄しても吸収できるように。カバーは、防寒や目隠しなどを考慮した、えつこさんのお手製。ぬかりない。あと、カバーかわいい。

捕獲機の中にも新聞紙を敷き、そこに、猫が大好きなある食べ物を、みんなでぐるぐる塗りつけます。

そのにおいをかぐと、猫はたまらず寄ってきて、捕獲機に入ってくれることが多いんだとか。過去に何十匹も捕獲しているというえつこさんは、動きに一切の無駄がありません。

(その食べ物がなにか、書きたい気持ちもあるのですが、猫によくないことをする目的で使われては悲しすぎるので、ここでは明記しないでおきます)

さすが、嗜好性抜群というだけあって、すごいにおい。新聞紙にさんざん塗り付け、入り口から奥にかけて、かけらを点々と置いていき、一番奥にはその食べ物をてんこ盛り設置。よし、完成。

公園は、人の出入りが多い住宅街の中。しっぽが人影に怯えて捕獲の機会を失わないよう、ベンチに交代で誰かが腰かけ、人が来そうになったら、事情を説明しようということに。

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いたずらと誤解されて通報されないよう、えつこさんから借りた「認定ボランティア」の腕章をつけ、いざスタンバイです。

お願い、しっぽ

公園のベンチで見守る人、サロンから外を覗き、別の野良猫がにおいに誘われて近づいたら、そっと追い払う人。私たちはそんなふうに役割を決め、交代で担当することにしました。いつまで続くか分からない、本当に終わりがあるのかさえ定かではない捕獲作業。3人いるってすごく心強い。

一緒にあれこれ作業をしながら、私はえつこさんから、いろんな話を聞きました。

捨てられてしまったあと、しっぽは地域の猫たちに馴染めず、一日の大半あの公園の植え込みで、じっと隠れていたこと。

しっぽのような長毛種が野良猫になると、毛が絡まって皮膚を傷めたり、どこかに引っ掛けたりと、毛の長さが災いすることもあること。

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「これ、3年前。外に捨てられた直後だと思う。日に日に体が汚れていって、あるとき姿が見えなくなって…なにか怖い思いをして、餌場を変えたんでしょうね」

人と暮らしてたときはピンクだった鼻先が、真っ黒になっている。お腹がすいて、きっと必死であちこち嗅いでまわったんだ…。

ああ、病院に連れて行きたい。子猫と見間違うくらい痩せたしっぽに、安心できる寝床と、汚れていないお水と、バランスがとれた美味しいごはんを食べさせてあげたい。

明日には、公園で工事がはじまる。今、また餌場を変えられたら、きっと私たちは、しっぽを永遠に見失ってしまう。だからお願い、しっぽ。頼むから、1回だけでいいから、捕獲機に入って!!

ぴろん。

そのとき、LINEの着信音がしました。見ると送信者は、外にいる夫。

「しっぽが捕獲機に入った」「あばれてる」「すぐきて」

ええええー!

⑤へつづく

我が家の猫たちとのエピソードはこちらに。

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