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生まれて初めてガチの野良猫を保護した話②

①はこちら

季節は秋から冬に。さあどうする。

あっというまに10月も半ば。空気がひんやりしてきました。うーん、これ以上時間をかけるとあの子、きっと寒さでもっともっと弱っちゃう。悩んだすえ私たちは、猫に詳しそうな人に相談することにしました。

その人は、我が家の猫たちと出会うきっかけをくれた、保護した猫の譲渡会を主催している方。猫経験値が高いし、なにかヒントがもらえるかも。そう思って連絡するとその方、なんと二つ返事で、

「私今日、23時まで仕事なんですが、終わったあと捕獲しにいきますよ」

ええー、決断早っ! しかもそんな時間から、まったく会ったこともない猫のために…!

すごいな、なんて愛が深いんだろう。「保護猫」って言葉、最近はよく目にするし私も使うけど、その「保護」っていう過程にはきっと、こういう人たちの無償の行動があるんだなあ。だってトライしてみて分かったけど、野良猫を保護するの、ホントにとんでもなく大変だよ…!

その方は車まで出して下さり、結局2回、半日近く時間をかけて公園に張り込んで下さいました。

それなのに。あの猫の警戒心は、それをはるかに上回るものでした。ほんの少しいつもと様子が違うだけで、あっという間に逃げて行ってしまいます。

『保護できませんでした』

2回目のトライのとき、仕事で立ち会えなかった私は、そんな連絡を受け、そうか…と思いました。じゃあもう、あきらめた方がいいのかもしれない。それが正直な気持ちでした。だってあんなに詳しい人が手を尽くしても保護できないなら、あの子はもう、放っておくしかない気がする…。

と、そのLINEの最後に、気になる一文が。

『ですが、公園の目の前のヘアサロンのオーナーさんが、猫に詳しい人で、協力してくれるそうです。訪ねてみて下さい』

なんですって。

新たな猫マスターとの出会い

翌日、私はさっそくヘアサロンに行ってみました。ああこのお店か! と見てすぐ思いました。入り口にキャットフードや水場が常設されていて、ときどきそこに猫の姿もあり、実は、公園に行くたびに気になっていたお店だったのです。

オーナーは、えつこさんという、私よりちょっと年上の女性でした。

「区の、認定ボランティアとして、地域猫の見守りをしています」

なんと、そんな活動があるなんて。

「この地域の猫は全部把握していて、性別や年齢、病気の有無などもわかっています。外で猫を見かけても、地域猫として見守られている子かもしれませんから、むやみに捕まえようとせずに、ボランティアさんなどに連絡する方がいいんですよ」

言われてみれば、確かに…! それにしても、外の猫たちをそこまで把握してるなんて。反省したり驚いたりしつつ、私はあの猫との経緯を改めてお話しました。すると、なんとえつこさん、写真を見て、この子知ってる、とおっしゃるではないですか!

「この子は3年前まで、そこにあった団地で飼われてたの。サロンにもごはん食べに来てたんだけど、ある日急に姿が見えなくなって…」

そして、一枚の写真を見せてくれました。

画像1

いやいやえつこさん、これはぜんぜん違う子ですよ。だって写真の子はふわっふわで、血統書でもついていそうな、すごい美猫じゃないですか。

画像2

ん…? だけど、言われてみると確かに、毛の模様は一緒、かも…。

えええええー!

えつこさんは教えてくれました。3年前に、隣の敷地にあった大きな団地が取り壊されたこと。そのとき、飼っていた猫を外に放し、そのまま引っ越してしまった人が何人もいたこと。きっと野良猫になって生きていくでしょう、と安易に考えがちだけれど、そうして置いて行かれた子たちは、大抵が衰弱し命を落としてしまうこと。

「この子も飼い主だった人に置いて行かれてしまって、どうしてるか心配してたんだけど、姿が見えなくて。3年のあいだに、こんなになって…」

改めて、写真を見比べました。人と暮らしていたという、一枚目の写真のころ。このときは、今みたいに「全世界が敵!」というスタンスではなく、きっとこの子は誰かを信頼したり、頼ったりしていたんだろう。

「3年前は私を見ると、『おばちゃーん、ごはんちょうだーい』って、人懐っこく寄ってくる子だったの」

うーん。言葉が出ない。無言になる私にえつこさんは、力強く言いました。

「私もできることは全力でサポートします。この子を捕獲し、病院に連れて行きましょう」

③へつづく

我が家の猫たちとのエピソードはこちらに。

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