新しい時代の新しい先生像の構築へ/私たちが手放すもの
新しい時代が来ています。
真に「生徒のため」「子どもたちのため」を掲げるなら、その古い価値観を手放さねばなりません。古い先生像を捨てなければならないのです。
これなしに、今、各所で生じている現場の不具合は改善されません。残念ながら。
先生の働き方をどう変えようが、部活や行事にどう手を入れようが、授業のコンテンツをどう充実させようが、あまり意味をなしません。
子どもたちが制御されず、ときに暴走さえしてしまう、そんな状況を変えるには、根本を変えなければなりません。
子どもたちの行動が制御され得ないのは、私たちが指導と呼んできたものの根底にある価値観を、子どもたちの側が受け入れることができないからです。小手先で何かを変えても、子どもたちは簡単に見抜いてしまうでしょう。
その根底、根本が、ここでいうところの「価値観」です。
ただし、一つ例外があることがわかってきました。
それは今とこれからのテクノロジーです。
遠隔授業やICT活用は、子どもたちの新しい学びの手助けになると思われます。
なぜなら、今発展を遂げているテクノロジーは、私たち日本人固有の道徳観を退けるからです。
例えば、「心を込めて」ボタンを押したところで、パソコンやスマホ、タブレットの性能がアップすることはありません。机に肘をつこうが、寝転んでボタンを押そうが、ボタンはちゃんとその役目を果たしてくるでしょう。テクノロジーは、否応なしに、私たちの道徳観や思想から距離を置いてくれます。だからこの先のテクノロジーは、(もちろん何らかの悪意を含まないという前提ですが)、新しい世代の子どもたちを助けてくれるに違いありません。
話を戻しましょう。
テクノロジーという例外を除いては、現状では、古い先生の価値観が、子どもたちを遠ざけてしまいます。
古い価値観が生む、古い先生像がそこにはあります。
そして今、それを捨て去る勇気をもたない限りは、現場が改善されることはありません。
すでに何年もの間、先生は困難の中、ひたすら辛い思いをしながら日々を過ごしている、それが何よりの証拠です。そして改善の兆しが見えるどころか、悪化の一途をたどっています。
それが現実なのです。
目を背けることはできません。
それは先生の努力のせいでもありませんし、技量の問題でもないのです。
そこが多くの場合、勘違いされています。
先生が下手だから、技量がないから、センスがないから、努力してないから、それらは全てハズレです。
考えてみてください。
かつて優秀だ、子どもたちから人気がある、そんな先生が、今は、だめの烙印を押されてしまっている。僕自身、民間であってもそうした先生の姿をたくさん見てきました。あの先生なら人気が出るはず、うまくやるはず、そういう先生が、みんな潰れて行ったのです(これは実体験なので壮絶でしたよ)。
問題なのは、大人の側が抱える古い価値観であり、そこに存在する先生像なのです。
非常に根本的なことですから、技術や努力ではどうにもならないのです。
新しい先生像へ向かうことは、かつての自分を捨て去ることを意味します。
とても苦しい。表現できないほどの苦しみでしょう。
それでもなお、「子どもたちのため」を真に謳うなら、その苦しみを乗り越えなければなりません。
子どもたちの特性を踏まえた、新しい先生像を構築すべき時がきています。
そこには、当然、社会が迎えようとする新しい時代、新しい価値観が横たわっています。
古き良きものを軽んじようというわけではありません。
ただ、それではもう何もうまくいかないということです。
子どもたちとどう信頼を築いていけるのか。
その上で、どう学んでいき、どう成長していけるのか。
新しい一歩を踏み出せれば、これまでのこだわりがバカバカしく思える未来が待っています。
これほど学校で子どもたちがうまく振る舞えなくなった、これほど先生の言うことを聞かなくなった、そんな今。暴れたり、攻撃したりする子まで現れる、そんな今。
そんな子どもたちを前にして、このまま苦痛に耐えるだけの先生業を続けますか?
ただ我慢するだけの先生職を続けたいですか?
その指導法で10年、20年先が見えますか?
歳をとっても子どもたちを今の力技で抑え込めると思えますか?
新しい先生像は、子どもたちとの信頼関係の構築を支えてくれるものです。
そして、まさに学び手である子どもたち自身を主役にしてくれるものです。
主体性はもちろん、思考力やコミュニケーションの力までもを伸ばしてくれる。
僕は目の前の新たな世代の子どもたちと過ごしながら、こう感じることができます。
それは、
「これまでの世代にも増して、とても真面目に熱心に、物事に取り組める子たちだ」
「思いやりのある優しい子たちだ」
「とても素直」
「周囲に対してとても気を遣える子たちだ」
「いつも物事をよく考えようとしてくれる子たちだ」
果たして、あなたはどうですか。
言うことは聞かない、従わない、
やる気もない、冷めている、
弱々しい、すぐに逃げ出す、礼儀がない、恩知らず、
コミュニケーションも取れない、考える力もない、屁理屈ばかりだ、
・・・そんなことになってしまっていませんか?
多くの現場では、このような見方が大半になってしまっています。
そう感じ取らざるを得ないほどの不具合が現場では生じているのです。
あなたの持っている価値観によって何がもたらされているのか?
まずはそれを考えてみる必要がある。
正しいと思い込んできた(確かにこれまでは正しかった)その価値観と真剣に向き合う時がきているのです。
今、教育現場に必要なのは、優れたコンテンツでも、働き方が楽になることでもありません。
古い先生像を捨て、新しい先生像を見出すこと。
根底にある問題こそが重要なのです。
今、新しい時代がやってこようとしています。
(終わり)
今こそ見ていただかねばならない動画たち。
参考動画シリーズ @Youtube
「教え方2.0〜先生像のバージョンアップ〜」
「ホンダアツシ独演会」
記事を気に入っていただけると幸いです。NPOまなびデザンラボの活動の支援に活用させていただきます。不登校および発達障害支援、学習支援など、教育を通じたまちづくりを行っています。