早川克美さんの“デザインへのまなざし”を読みました。“まなざし”っていう言葉が、“視点”とか“視線”とういう言葉と比べて、響きが暖かくて、かつ曖昧で面白いです。
この本に書かれていることがデザインなら、私は今まで長い間、行政の領域で、総合性の確保に配慮しながら、様々な総合的な計画の策定において、デザインを生業にしてきたということになると思います。
デザインは職能に分けられて定義されてきましたが、その各々の領域が確立されるほど、領域相互の関係性が希薄になっていったとのこと。
縦割りになってしまったデザインの領域を、生活者の視点を持って、有機的な繋がりを意識していくことの大切さが記されています。
デザインとは、各領域を横断した、もしくは総合(統合)的な観点からの“問題解決のプロセス”であるとのこと。
そしてデザインには二つの立場があり、その一つが、観察を重要な思考プロセスとして位置付ける“ユーザー中心主義(個別的課題の理解を要するもの)”であり、もう一方で、今ある問題の解決を目指すのではなく、まったく新しい世の中に革新をもたらす“まったく新しい価値観を創造するもの“がデザイン主導主義であるとします。
すべてのモノやコトは、デザインのプロセスで語ることができ、デザインとは、その構想から着地までを通して成果を得るための思考のプロセスそのものであるとします。
よく著者の言っていることは理解できます。
合点がいきます。
ユーザー中心主義は、今をより良くすることという斬新的な役割(インクリメンタルですね。)があり、デザイン主導主義には、豊かで新しい未来を創ることという急進的な役割があると言います。
この二つの考え方が融合することで、高い水準の解にたどり着けるといいます。
そのとおりと思います。
そして、ユーザー中心主義の思考のプロセスは、①問いを立てるための観察、そして共感・洞察、②問題定義、③創造・視覚化、④プロトタイプ、⑤テスト・評価と改良 → 実現 となります。
そして、このプロセスは、行政における計画策定や計画の進捗管理、新規事業の企画等の考え方やプロセスと、全く異なることがないのにびっくりします。ほぼ100%、行政はデザインの考え方、それと同様な考え方で回っています。
ということは、行政の計画策定や事業の企画等を行うことは、まさに“行政デザイン”を行っているとも言えます。
ただ、一つだけ、この本にも書いていないのですが、イノベーションを生むような“デザイン(技術)主導主義の取組をいったいどのように行えばよいのか。ユーザー中心主義とそれをどう融合して高い水準にたどり着けばよいのか。
その悩みはこの本では解決されません。
行政の取組改善のポイントはそこです。
政策策定において、どうしてデザイン主導主義のプロセスが行われないのか。どうしてそれを取り込まずにここまできたのか。そして、そのデザイン主導主義のプロセスとはいったいどんなものなのか。そのプロセスを採用すれば行政施策は変わるのか。
悩みは尽きません。☺️

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