上野動物園のモノレールの復活の仕方

2ヶ月ほど前の話ですが、休止していた上野動物園のモノレール線について、新たな方式を含めて検討する、という報道がありました。
 → 日本経済新聞「東京都、上野動物園で新モノレール検討へ」(2022/2/24)
 → 乗りものニュース「上野動物園モノレール 「代わりの乗りもの」東京都が検討中 車体デザイン・運行範囲etc.」(2022/2/27)
何が行われているかというと、東京都建設局の方で事業手法・事業計画を募集するよって話があって、
 → 東京都建設局「恩賜上野動物園における新たな乗り物等の整備運営について
要は老朽化で休止したモノレールを何らかの形で作り直して再開する事業が動き出している、という話です。
ここの要項とか眺めてるとウィンドウが短いのでそもそもある程度は候補の業者からピッチ受けてある程度まとまってから公募の格好を採ってるんだと思いますけども(すぐリンク切れになるし有料記事なのでリンクしませんけど朝日新聞の記事にも跨座型想定とか書いてありますし)、まあ今年度か来年度に業者を選定して数年後に再開するんだと思われます。跨座式なので飛鳥山公園のアスカルゴを大きくするみたいな雰囲気なんでしょうかね。

そもそもの休止に至った経緯ついては東洋経済の「黒字でも休止、上野モノレールに復活はあるか 遊戯施設以上の存在だったわずか300mの鉄道」あたりでも読んでいただくとわかりやすいかと思いますけども、私としては数字の方でどう見えていたか、というのが気になったので整理しておきたいと思い、これを書いています。

まず、収益規模ですが、概ね年間1億円ちょい、という感じです。2020年3月期は10月末に営業終了しているので7ヶ月分なので少ないものの、それを除くと2012年3月期と2018年3月期のピークが目立ちますね、真っ先に考える要因は入園者数だし、その入園者数は普通に考えると景気要因や出生数(その前年までの5-6年の累計みたいな)に左右されるはずだろうという推測をまずしてしまいますが、実際にはそれ以外の影響がありそうな感じのする変動となってます。

出所:鉄道統計年報、東京都交通局

というわけで入園者数の推移みるとこんな感じで、これはつまり、2012年3月期は2011年2月に新しいパンダを迎えて、4月から3年振りにパンダを公開したのと、2018年3月期-2019年3月期は2018年3月期下期にパンダの子供が公開されたことが効いてますね。めっちゃパンダドリブンだったという話です。しかしそれにつけても2020年以降の休園がひどく響いていて、都バス乗ったりするとご年配の皆さんでいっぱいなのに比べるとなんとも寂しい数字で、早く未就学児童や小学生が動物を見に行けるようになってほしいものだと思う次第です。

出所:東京動物園協会

では来園者のうち、どのくらいの人があのモノレールで坂を上り下りしたか、というと実は結構比率が高く、25-30%程度の水準で推移していました。最終年度は7ヶ月運行なので低いのは当然として、前年はやはり「パンダの赤ちゃん」に来園者が集中して正門から言うと奥の方までわざわざ行かなかった人が多かっただろうことがうかがえます。両生爬虫類館面白いしオカピ可愛いのにもったいない話です。ただ、2020年9月にかつてのモノレール西駅の横にあった子ども動物園のところにパンダのもりという施設ができたので、今後はパンダに集中することによる影響はあまりないような気もします。

出所:鉄道統計年報、東京都交通局、東京動物園協会のデータから作成

大人と子供のミックスについては料金が大人150円、小人(2歳以上)80円だったのでざっくり計算できますけれども、東京都交通局の決算データで開示されている輸送人員数と合わないので発表されている実績ベースのもののみを掲載しますが、大体大人2:小人1くらいの利用度ですかね。ひとりっ子そんなに多いかなという感じもしますけど、子連れでなくとも中高生以上がデートとかで来たりして使ってるのが多いとかあると思えばそんなものかなという感じですか。

出所:鉄道統計年報、東京都交通局のデータから作成

損益については、色々な記事で休止に際して「黒字なのになぜ休止」「老朽化が理由」みたいに書いてあるので、いやそれもう償却が終わって(あるいは車両が補助金により取得されていて圧縮記帳されていて)黒字なんでしょという感じに思ったりします。実際に2001年から運行していた40形は宝くじの収益からの助成金によるものでした。
利益率は10-30%くらいのレンジで変動してますが、東京都の交通事業会計を眺めている限りでは基本的に変動要因は車両保守費用の増減に依存している格好に見受けられます。費用の内訳としては運転費(人件費・電力費等)と車両保存費(維持補修費)が主で、あとは駅や線路の修繕費等でほとんど説明できる内容となっています。

出所:東京都交通局決算、東京都公営企業各会計決算審査から作成
出所:東京都交通局決算から作成

こうした事情からすると数年後に登場するであろう新システムの料金や損益については
・総事業費(投資額)とインフラ(駅舎・線路)の償却
・車両等の取得にかかわる補助金・助成金の有無
・パンダのもりができたことによる利用者数の期待値
などがポイントになってくるものと思われます。おそらく200円とかそんな料金設定の上で利用者数/来園者数比率が上がる前提で事業計画が組み立てられるのではないかなという感触を持ちますね。

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