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商談通訳、展示会という名の戦場

皆さんこんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112

先週は1週間、東京で行われたギフトショーに通訳しに行っていた為、Noteの更新ができなかった。今日は、展示会に行って気が付いたことを書いてみた。

僕は同時通訳の経験がある。だが、僕にとっては同時通訳はゴールではない。

同時通訳は考える時間もなく、1秒以内のズレで通訳しないといけない。頭の回転が早くないといけないが、現場のことを考えないのである意味楽だ。
逐次通訳は現場のことも考えないといけないし、本人と相手の間にずっと存在しないといけない。
ここまで聞くと両方とも大変だと思いきや、頭の回転の大変さと現場での大変さを組み合わせると、さらに大変なものが生まれる。
展示会での商談通訳」だ。なぜかと言うと、ブースに来る人はコロコロ変わるし、商品に興味がなく会話だけしたい人も来る。さらには、話せる英語を自慢したいだけの人まで来るのだ。
プロ通訳者としては、みんなの面倒を見ないといけない。初心者通訳者としては、いい勉強になる。商談になりそうにない人に対して、出店者が「時間が無駄になりそうであれば帰ってもらって」というオーダーを出せば、その通りにしないといけない。母語でも外国語でも、相手との間にわだかまりができないように、うまくコミュニケーションをとる練習ができる。

商品に興味がある人に対しては、こちらの情熱的なトークを展開できるが、大変なのは商品に興味がない人に対してだ。雑談が多くなる上に、相手に悪気があって言ったわけではない言葉でも、耳に入ると「あれ?」と思うことが多い。
英語を自慢したい人に関しては、英会話ができるというよりは、とりあえず覚えた言葉をチャレンジして言ってみる。日本人の相手が英語で話しかけ、イタリア人の僕が日本語で返す、という場面も珍しくない。

一般知識がない人だって来る。
日本企業「どこの国の会社ですか?」
マッシ「中部イタリアの会社です。」
日本企業「ボルドー(ワイン)が有名な国ですね」
マッシ「あ!それはフランスですね」
日本企業「そっかそっか!ラクレット(チーズ)が有名な国でしたね」
マッシ「あ!それはスイスですね」
日本企業「何の商品を販売してるんですか?」
僕が答えると、彼はすぐ去って行った。上記のように、知ってる(と思ってる)知識を自慢したいだけの人が多い。

同時通訳というのはブースから通訳するので現場での大変さはないが、逐次通訳はいろんな人と接して会話し、時には何にもならない会話に付き合わないといけない。8時間立ちっぱなしで休みなく通訳をしている中で、こういった人が来ると、心はゲームオーバーになる。
3、40年のキャリアを経て退職し、現在では国際取引アドバイザーのような仕事をされているであろう方も来たことがある。非常に難しくかなり専門的な言葉や略語を話され、ビジネスについてのノウハウを語っていたが、肝心のこちらの話は全く触れない。何をしに来たのであろうか。

当時に書いたツイートを見ていただければ、大変さは伝わるはずだ。

顔で判断する人もいる。

わけわからないやり取りもある。

言葉は準備すれば何とか乗り越えられるが、現場で会う人、生まれる会話、持ってる知識から大変さが生まれる。
同時だろうが、逐次だろうが、大変さの全てがそこから来ると、展示会に行くたびに感じている。精神的に綺麗にバランスを保って、うまく自分の話に誘導できれば、きっと同時でも逐次でもうまくいく。

展示会では、通訳者でもナレーターでもコンパニオンでも、大変だ。
外から見ると、立っているだけ会話しているだけに思われるかもしれないが、対人コミュニケーション力がないとかなり難しい。

時々不満が出てくるかもしれないが、展示会の仕事は好きだ。いろんな人の意見を聞いて成長させられるので、関わりのある皆さんに感謝している。

Massi

追伸
忙しい中、会ってくれたツイッターのフォロワーさん4人、ありがとうございました。ツイッターのフォロワーの皆さんから優しい言葉、応援の気持ち、楽しい話題をいただいて、感謝しています。

みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。