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通訳日記

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日伊通訳・現場の話
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2019年8月の記事一覧

通訳の扱いに慣れていない日本の企業

ビジネスにおいて、通訳を使い慣れていない日本企業と仕事をした時によくあること。 ・今のは訳さなくていい、と言われる辛さ。 ・プロジェクターやマイクなどの機材の設定や使い方を聞かれる(本業ではない)。 ・すでに食事は用意されてあるのに、「食べられないものあります?」と聞く。 ・大型イベントの際は、通訳の仕事で行くはずなのに、それ以外の関係ない雑務を頼まれる。 ・日本人の話を訳す文章が長くなってしまった時、本当に合ってるか大丈夫?とみんなの前で言われる。信用してない。 ・イタリ

日伊通訳者の地獄名所5選

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 通訳者として問い合わせがあり新たな仕事を頂く事は、とても嬉しく喜ばしいことだ。だが、その気持ちは5秒と続かない。その後は地獄の始まりなのである。 お引き受けするにあたり準備、交渉、条件(追加料金やキャンセル料や延長など)が次々と迫ってくる。その中で資料の提供、スケジュールの流れ、移動先の確保をしながら具体的な通訳としての動きが始まる。 イタリア語の資料の場合、見て一瞬で不安が滝のように流れてくるが、準備を進めていくうち

日伊通訳者である僕にしかない日常

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 今だから良い思い出として話せるが、当時は先の見えない不安に振り回されたものだ。 今年の6月のことである。フランスのエージェントからイタリアのアパレル通訳の仕事の依頼を受けた。フランスのエージェントを介してのやりとりなので、当日までイタリアのお客様と直接的な連絡はなく顔も分からなかった。 集合は大阪駅でお客様は場所が分かるか心配されていたので、僕はタクシー乗り場が近いので桜橋口集合を提案した。お客様はそれでも不安でたまら

写真で分かる、日伊通訳者マッシ(依頼受付中)

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 日伊通訳者マッシとはどんな人物なのか、どんな実績があるのか。お恥ずかしながら全部書いて公開する! イタリア、ピエモンテ州カザーレ・モンフェッラート(トリノ近郊)出身。日本文学に興味を持ったことがきっかけで、日本語を学び始める。トリノ大学文学部日本語学科修士課程修了。 その後、日本に移住。現在の住まいは石川県金沢市。 イタリア語と日本語の逐次通訳(同時通訳の経験あり)とイタリア(ヨーロッパ中心)のビジネスコンサルタントがメ

僕が通訳者になるまでの道のり

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 「日本語上手ですね」「ペラペラですね」「さすが通訳者ですね」など、よく言われている。この言葉には、マッシ=日本語を当たり前に話せる、の意味が少なからず込められているように思う。そう言う人たちは僕の現在の結果しか見ていない。 大学生になり、ようやく大人として学べる!と意気込んだ矢先に、まるで小学生に戻ったかのようにわからない事だらけ。社会人になって日本に来て、苦労しながら、泣きながら、毎日コツコツと勉強しつつ働いてきた結果

医療通訳者の葛藤と苦悩

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 今日は日曜日なので短い記事になるが、中身は重い内容になるかもしれない。 医療通訳の話を少ししたいと思う。 産業、ビジネス、商談の通訳と比べ、医療通訳の場合は言葉だけではなく、患者さんという生身の人間相手の一発勝負だ。 医療通訳の依頼を受け、数ヶ月の病院生活を経て、患者さんや患者さんのご家族の笑いから涙までをこの目で見て、学んだことはたくさんある。 今日はひとつだけ紹介する。 医療通訳の下準備はいつもよりかなり大変だ。専

アパレル通訳かと思いきや、子守りをした話

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 国際アパレルの展示会でキツかったことは、今思い出しても体が地面に沈むようだ。 よく、共同で世界中の展示会に出展してるという、イタリアの出店者2社。東京にもいつものように出展しにきた。 今回きた案件は、その南イタリアの会社2社を同時に通訳する、という内容だった。長い3日間が、ここから始まる。 出店者を説明すると、1社は紳士スーツのオーダーメイド会社。担当者は社長の息子(30代)。もう1社はメンズのズボンの会社。担当者は7

医療通訳と看護師の間にできた「絆」

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) 病院といえば、患者さんやお医者さんがメインのイメージだ。ところが、本当に重要でメインなのは、看護師さんだということを、僕は知っている。 東京で医療通訳の大案件を引き受けた日から、言葉でうまく説明できないが、僕の人生が止まった。資料だけではなく、手術の動画も見て準備した。準備を進めれば進めるほど、性格や表情が変わってきた気がした。 大学よりも専門学校よりも、現場の経験が最大の学びだ、とよく言われている。 僕にとってこの1

有料
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「海苔」と「イタリア大学教授」の間の通訳者

海苔を研究するため来日していた、イタリアの大学教授の通訳を担当させていただいた話である。 今、冷静に考えて当時のことを思い出すと、まるでドラマのようであったと振り返ることができる。海苔に情熱と愛情を持つイタリア教授と、船生活と、1日3食とも海苔、という僕にとって長い1週間だった。 時差ボケと寒さの戦い 案件ごとに現われる、新たな地獄を丁寧に説明したいと思う。 あの頃は非常に忙しく、国内外の出張が多かった。今回お話する案件の最初の地獄は、始まる前に起こった。 「時差ボケ」であ

AC Milanアカデミーでの通訳ノート

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) AC Milanアカデミーで1年半くらい働いて学んだ、専門用語と現場の通訳メモを公開したいと思う。セリアAとセリエCの元プロサッカー選手に会って今でも感謝の気持ちがたくさん!AC Milan本部のテレビ会議だけではなく、日本訪問の時も日伊通訳を担当させていただいた。 今日は言葉ではなく、ノートを見て苦労を感じて頂ければ幸いである。 石川校から東京校の異動を提案されたが、東京での生活を思い返して、やめた。 現在、子ども向け

通訳者はスパイ!?

あるイタリアの会社は常連で、現場工事では技術者通訳、会議ではビジネス通訳、とても仲のいい北イタリアの会社だ。 今回の話は、イタリア出張に行く前日の、日伊通訳会議のことである。 当日は、東京で朝から会議がスタートするため、前泊をし、北イタリア会社の社長らと、打ち合わせを行った。そして、夜は社長奥様のたっての希望で、渋谷へ行く予定となった。 無事、打ち合わせが終わり、さぁ、渋谷へ! 大体が僕の今までの経験上、こういった希望というのは思わぬ形で覆されがちだ。 食べに行く前に、奥

知らない言葉=プロの価値

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112) Foodex Japanに出展しにきた、イタリアのハムやサラミの生産者に日伊通訳を担当させていただいた時の話。 展示会中に色々なことやエピソードがあったが、話したい内容はビジネスディナーのことである。 その日は和食の名店でのディナーだった。イタリア側の社長とその奥様、日本側の社長とその部下3人の計6人の通訳だ。 奥様は和食に非常に興味があって、出てくる料理に関するありとあらゆる質問をされた。もちろんメインはビジネスの通訳