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高口里純『熱くなるまで待って』( 久美と森男のラブメロディ ☆ 1 )花とゆめCOMICS(HC-234)

月日が経つのは早いもので、ずいぶん昔の少女マンガになってしまいましたが、「久美と森男のラブメロディシリーズ」の中でも特別な、第一話、第二話、第三話をご紹介させていただきたいと思います。

このシリーズの第四話からは月二回発行の『花とゆめ』に、少し間をあけたりしながら連載されるのですが、それに先立って『花とゆめ』の季刊に掲載されたこれら三つのストーリーは、矢吹丈のトリプルクロス並の破壊力を持っています。(何の話やねん)

「熱くなるまで待って」 『花とゆめ』(1979年 春の増刊号)
「うわさのリップスティック」『花とゆめ』(1980年 冬の増刊号)
「ハイヒールに聞いてくれ」 『花とゆめ』(1980年 春の増刊号)

これらの作品は一話ごとに完結していて、三部作と呼んでも良い構成になっています。そしてそのクオリティの高さゆえ、真白な灰になってしまったのです。(勝手に燃やすな)

現在入手しやすい『久美と森男のラブメロディ 1巻』『赤いピアノ線 1巻』を購入すると、余分なストーリーもついてくることになりますが気にしないでください。

マンガ史に燦然と輝く不朽の名作を(個人の見解です)、ぜひみなさんにも楽しんでいただきたいと思い、今では知らない人も多いであろう、当時の流行りなどについてもわかる範囲で解説してみました。


第一話「熱くなるまで待って」

「ラブメロディ」なのである。「ラブコメディ」ではない。なんというセンスだろう。このサブタイトルに気を許した読者は、不意打ちを食らって抵抗する間もなく笑い転げてしまう。

ヒロインは志村久美。男どもには目もくれず、数学をこよなく愛する、シリアスでクールな硬派女子高生。

なのになぜ、こんな名字なのか。( ‥)ハテ?

志村久美と漫才トリオを組むのは、徳光治子と森下小百合。徳光和夫アナウンサーはすぐに思いうかぶが、もう一人については心当たりがない。

下校時間をすぎても体育館に残っていた森男と、風紀委員の久美との出会い。この時を境に、久美は運命の糸にもてあそばれるかのようにドツボにはまっていく。(ドボン)

それにしても少女マンガでこんなギャグが使われてよいものだろうか。トイレとか、〇とか○○とか○○○とか。(いいんです)

ちなみに教室の後ろの壁に貼ってある「ロッド 良かったよ~」は、1979年のロッド・ステュアート日本公演のことだろう。

爆笑を誘いながら、繊細に紡がれたストーリーが心地よいメロディを奏でる。謎に満ちたバスケ部の美男子、森男との恋の行方やいかに。

あぁ、もういちど戻りたい青春の日々。いや、もういちどやり直したい…

ラストシーンが秀逸。鮮烈なクロスカウンターが決まる。(違うだろ)


第二話「うわさのリップスティック」

わからないことだらけの森男の秘密が、もうひとつ明らかになる。

小道具はリップスティック。

しかも久美たちが通う学校の校名は、なんとH高。(きゃ~!)

いいのか、高校生なのに、こんなことして。

ここで登場する化粧ばえ三人娘の元ネタは、当時CMに起用されていた、
資生堂の小林麻美、カネボウの浅野ゆう子、コーセーのセーラ・ロウエルである。

そりゃあ、久美がうろたえるのも無理ないわな。

強力なライバルたちの出現。そして唐突で大胆な森男の求めに、わけもわからず乙女心をゆすぶられ、あたふたと取り乱す久美。

久美は、不器用に助けを請う森男の思いにこたえ、森男のピンチを救うことができるのか。

すっかりメルヘンチックになって、おとぎ話の世界へと迷い込んでいく久美の、明日はどっちだ。(違うって)


第三話「ハイヒールに聞いてくれ」

トイレ掃除をしていた久美の後頭部に、ハイヒールのかかとが飛んできて命中し…(謎)

転入してきた太鼓判つき問題児、矢島高史の面倒をみるよう仰せつかった風紀委員の久美。

このとんでもない不良少年にかき回されているうちに、実は森男が、〇○○○だったという衝撃の事実が判明する。(ガ~ン)

今では違和感を覚えるだろうが、当時はタバコを吸うのがカッコイイと思われていた。まだJTの前身だった日本専売公社の時代で、タバコを吸っていても、「ダサッ」とか言われることはなかったのである。

傷つきやすい年頃。繊細な心の揺れは若さの証。まあ高校生なんだし、やんちゃでもしかたないが、あれはレッドカードだろ。(バスケです)

キャンディーズが「普通の女の子に戻りたい!」と日比谷野音コンサートで電撃引退宣言をしたのは1977年7月17日のこと。

ラストの呟きにコロリ。(立つんだジョー…!)


おまけ

第四話「彼氏はハスキーボイス」

「はい!!氷」は、日立冷凍冷蔵庫についていた、氷専用の取り出し口のことで、黒柳徹子さんがやっていたCMのキャッチフレーズになっていた。

第五話「あたい」

シャネルズは、1980年に「ランナウェイ」でミリオンヒット・デビューした、鈴木孝之がリードボーカルのドゥーワップ・グループ(その他大勢は略)。なぜか顔を黒塗りにして黒人に変装していた。

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