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マッサンのシンガポール飯 ③バターマトンカレー

1.はじめに

世の中には、定番と言われるものがある。

居酒屋行ったらとりあえず生、つまみは枝豆、揚げ物はNG、で〆にラーメン。まあ何だっていい、先人たちが築き上げてきた不文律というか、公式というか、丸い板というか、そういうものの上に我々は成り立っている。

しかしである。この「定番」が正しいかどうかを検証する機会はあまりないのではないか?上の例で行くと別に居酒屋で青汁を飲んでもいいわけだし、枝豆の代わりに初手チーズケーキでもいいわけだ。〆にパフェを食っても何の問題もないはずである。誰もやってないだけだ。

…さて、話を強引にシンガポール料理に戻そう。といっても今回はインド料理なのだが。

インドといえばカレー、そしてインドカレーでトップに君臨しているカレーといえばまず間違いなく「バターチキンカレー」である。濃厚なカレーのうまみと淡白な鶏肉が絡み合う極上の味わいは一度食べると病みつきになること間違いない。

シンガポールでもOne of the most popular curryであり人気のこの料理、最近では日本でもインドカレー屋が増え、食べられる機会が増えたのではないだろうか?

今回は、この定番中の定番「バターチキンカレー」に真っ向から喧嘩を売ってみようと思う。具体的には、「別に肉がチキンじゃなくてもいいんじゃないか?」ということを検証していきたい。

2.今日のメシ

コチラが今回「Indian Kitchen」という店で注文したカレー、その名も「バターマトンカレー」である。

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見た目は当たり前だがバターチキンカレーそのものである。が、中身の肉が異なっており、チキンの代わりにマトン(大人の羊の肉)を使ったバターチキンカレーの派生形である。

何を隠そう筆者はマトンが大好物である。あの何とも言えない肉の臭みが「肉をかっ食らっている」という気持ちを掻き立ててくれるためだ。レンダンの肉も牛よりマトン。ハンバーグを作るときもブタよりマトン。とにかく機会があればマトンなのだ。それくらいに大好きな肉である。

濃厚な味わいのカレーに濃厚な肉、ガッツリしたカレーであることは間違いない。これは新たな定番メニューになるのではないか?俺がインドカレーのパイオニアになるんじゃ!いただきます!

……

…うーん…なんというか…その…微妙…

何があかんのか、筆者が感じ取れた部分に限って説明しよう。

まずカレーの部分だが、これは牛乳仕立ての濃厚な味わいである。
で、マトンの方だが、これまた臭みがある濃厚な肉である。

これら濃厚で自己主張の激しい食い物を一緒に口に放り込んだ結果、何が起きたかというと、口の中でそれぞれが存在を主張し、口の中いっぱいにマトンの臭みと牛乳のねっとり感が広がり、不快感のほうが勝ってしまったのだ。

ちなみにカレーの脇に置いてあるアルミホイルだが、これは中身はチーズナンである。みんな大好き定番中の定番のナンだ。うまい。

3.おわりに

頼んだことを少し後悔しながら思い出す。そういえば自分が好きなマトンカレーは別にあったじゃないかと。

マトンカレーの定番、それは辛口で、味わいが少しさわやか目で、あまり舌に風味が残らない、そういうカレーである。

実際に今回の一件を経験して体で理解した。濃いものに濃いものを混ぜるのはイカン。肉が濃かったらカレーをあっさり目に、逆に肉が淡白ならカレーを濃い目にしてバランスをとっているのだろう。

先人たちは何も考えずに今までの「定番」と呼ばれるものを作ってきたわけではない。あれこれ試行錯誤し、その末に生み出されたのが「定番」なのだ。このようなやり取りなどインド人からしたらすでに数千年前に通過した道に違いない。

日本の伝統芸能には「守破離」という言葉がある。まずは伝統を「守り」、そのうえで伝統を「破り」、最終的に伝統から「離れ」、新たな伝統を作り上げていく、そういう概念である。

定番から離れ、新たな定番を作るためにはまずは現状を熟知しておくことが重要なのだ。カードゲーマー向けに話すとメタを知らずしてメタデッキに勝てるデッキなぞ絶対に組めないのである。

今回の一件はまだ自分が「その域に達していない」ということを認知したいい体験だったと思う。

…でもまあ、定番から外れたものが妙な色気を放つのも事実である。
このパクチー入りジャパニーズウドンっていうのもトロピカル感あっていいなあ。今度注文するかなあ。

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