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書籍「Visual Studio Code実践入門」の紹介

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エディタとVisual Studio Codeの背景

ITエンジニアにとって、プログラミングを行うエディタは必要不可欠である。いわば商売道具であり、こだわりも人一倍強いため、使用するエディタによる派閥争いなどが話の種になっていた。しかし新たなエディタがシェアを伸ばしており、大きな動きを見せている。

2015年に Microsoft から公開されたVisual Studio Code(以後「VS code」と表記)である。シンプルな構成で軽快に動作しつつ、豊富な拡張機能を備えて幅広いニーズに対応しており、ITエンジニアに広く受け入れられている。また、プログラミングだけでなくHTMLやMarkdownなどのドキュメント作成にも使われており、利用者の拡大ぶりが伝わってくる。こうした背景もあり、VS Codeに関する多数の書籍が出版されている。今回紹介する「Visual Studio Code実践入門」もその中の1冊である。

対象となる読者と必要なスキル

まず本書の対象となる読者は、既に学校や企業などでプログラミングを経験している方である。既に他のエディタを利用しており、VS Codeを使ってみたい人が最初に読める本となってる。また、基本的なプログラミングを学んでいる初心者にもお勧めできる。インストールから基本的な機能について丁寧に解説されており、具体的な操作説明では図を豊富に掲載しており、具体的に流れをイメージしながら学べる。VS Codeが気になる方のみならず、既存ユーザーでも知らない機能やショートカットキーなど役に立つだろう。

ショートカットキーの紹介も豊富

各章の解説

本書は7章構成となっており、概要について紹介しておく。サンプルコードもダウンロードできるため、写経せずともお試し出来るので安心してほしい。

第1章 Visual Studio Code(VSCode)について

ダウンロードからインストールを含めて1から解説されているので、準備するのは本書とPCとネット環境があれば良い。なお、VS CodeはMicrosoft製品だが、WindowsはもちろんmacOSとLinuxでも動作する。日本語化やユーザーインターフェースの解説、レイアウトのカスタマイズなども解説されているので、自分好みに使いやすくしよう

第2章 VSCodeを体験しよう

まずはVS Codeの体験として、Markdown によるドキュメント作成やプレビュー表示といった簡単な操作から紹介している。プログラミング以外でもドキュメントの作成などで使われる点を考慮すると、開発者以外にもお勧めできるエディタと言えるだろう。また、スニペットやテンプレートなどの入力を支援といったエディタ独自の機能も試しながら習得できる。

次にプログラミングを体験するが、本書ではPythonがベースとなる。新たにPythonと拡張機能のインストールについても解説されており、簡単なプログラムを書きながら、デバッグブレイクポイントといった基本的な動作を体験していこう。あわせてコードの自動整形といった可読性を向上させる支援機能も覚えておきたい。実際の開発ではプログラムを読み書きするのは自分だけではないので、この点には注意してほしい。

第3章 基本的なエディタ機能

ここまでインストールと基本的なテキストとプログラミングを体験しており、3章で基本的な機能が紹介されている。機能としてはカーソルの移動、スマートセレクト(カーソルの範囲選択)、コメントの切り替え、大文字小文字の変更などプログラミングをする上での便利機能が解説されている。特にこうした機能説明では図が多く掲載されているのがわかりやすい。

可読性に重要なインデントも丁寧に解説

上級者であれば説明文だけで理解できるが、初心者にとっては図で解説する方がずっとわかりやすい。本件に限らず他の章でも同様に図が豊富なので、その点が本書の強みと言える。

他の基本機能としてはファイルやフォルダの操作、ワークスペース(作業で開いたフォルダ)などがある。あわせて複数のプログラムを同時に表示するエディタのグループ・タブ、ショートカットキーなどがある。また、PowerShellやbashなどの対話型シェルも付属しており、Pythonなどのスクリプトはターミナル上で行われる。最初からすべて覚えるのは難しいが、徐々に使いこなせば作業の効率化が期待できるだろう。

第4章 ツールの活用

プログラミングを効率よく行うには、エディタにある多くのツールを活用してきたい。検索と置換では、正規表現も解説されており様々な場面で使える。差分表示(diff)では、変更点の確認が容易になり、プログラムだけでなくドキュメントにおいても変更前後の比較で役立つだろう。既にシステム開発において普及しているGitによるバージョン管理にも標準対応している。まだ利用していない場合でも、バージョン管理システムとしての仕組みが解説されている。一般的によく使われるGitHubとリモートリポジトリについて解説されており、 アカウント作成から同期といった一通りの機能を把握できる。

Gitのブランチも図があるとわかりやすい

もっともGitにおける説明は基本的な内容に留まるため、必要に応じて別の専門書などを調べてもいいだろう。

第5章 ドキュメントとWeb

ここからは一旦プログラミングから離れて、ドキュメントに関する解説となる。ドキュメント作成ツールとして、Markdown及びHTMLの導入と記法、プレビュー機能などが解説されている。また、簡易的にHTMLを入力できるツールのemmetも紹介されているのがありがたい。本書ではこうした外部ツールや拡張機能を都度紹介しており、機能性の向上に寄与してくれるだろう。

こうして作成されたドキュメントはブラウザと連携して動作確認する。そこで本書では、ブラウザとの連携のみならずNode.jsJavaScript の開発においてブラウザなしで JavaScript を実行開発する)やvue JSとの連携についても解説されている。これらの各種フレームワークについては詳しく知りたい場合は、必要に応じて専門書などを調べてほしい。

第6章 Pythonによるプログラミング

ここまで学べば、VS Codeで一通りプログラミングが出来る状態になっているだろう。6章では満を持してPythonによる本格的なプログラミング開発環境としての操作や実行について解説される。プログラミングにおける時間を要すのはプログラムの記述や参照であり、これらの作業を効率化するための解説やパラメーターヒント(関数の引数や型を示す機能)、高度な編集支援機能などが解説されている。さらに自動整形ツールに関するコマンドの解説、コードの文法やスタイルをチェックツールのlintが紹介されている。エディタ単体のみならず、周辺のツールはどれを選ぶべきかわかりにくいので、まずは著者が薦めるものを試してみるのが良いだろう。

作成したプログラムの実行とデバッグについて、デバッグのためのブレイクポイント、単体テストやリファクタリングツールも解説されている。近年ではPythonによるデータ分析も人気が高まっており、VS Code上でのJupyter Notebook(データ分析やグラフの描画を行う開発環境)の利用についても解説されている。さらにデータ分析で外部のCPU・GPUを利用する場合に備えて、リモート環境への接続も考慮しておきたい。これらの方法も解説されているので、使いこなしてほしい。

第7章 仮想環境とリモート開発

昨今における Web 系開発はLinuxベースとなっている。そこでWindowsやMac環境でLinuxを使用するツールとして、Docker DesktopやWSL 2(Windows Subsystem for Linux 2)などがある。本章ではこれらのインストールから実行まで解説している。また、テレワーク・リモートワークにおいて、遠隔地による作業が前提となっているが、Visual Studio LIVE SHAREを使えばリアルタイムでプログラムの共同編集が行える。遠隔地にいながら同僚とレビューやデバッグ支援、ペアプログラミングなどが出来るツールとして活用してほしい。

初心者向け解説書の重要性

各章の概要を読んでも分かる通り、本書はVS Codeにおけるプログラミングにおける基本的な解説が中心となる。上級者にとっては既知の内容が含まれており、Gitや拡張機能などついて補足説明はあるが深いものではない。そしてエディタはプログラミングを行う道具であり、プログラミングには別に解説書が必要になる。しかしながら「VS Codeを一通り操作してみたい」という要望にはきちんと答えており、そもそもGitやプログラミングまで解説してはページがいくらあっても足りない。環境構築や拡張機能や連携についても、読者によって要望が異なる以上、基本的な使用方法に終始するのは致し方ないだろう。本書の役割はVS Codeを試してみたい人に対して、一通り使える段階まで引き上げることであり、その点においては過不足なく解説されている。こうした初心者向けの入口となる書籍がなければ、いつまでも利用者が増えないまま、下火となってしまう。もちろんネット上の情報や英語のドキュメントなどで調べることもできるが、それが出来るのは上級者だけである。また、本書はソースコードが提供されているが、ダウンロードはリックテレコム社のホームページのみとなる。Gitからダウンロードする方法もあるが、あくまで本書を購入した人への特典としては妥当な判断だろう。これらを踏まえて本書を読んで物足りないと感じることがあれば、それは自分のスキルを判断できただけでも成果があったと判断すべきと考えている。

まとめ

「VS Codeを使ってみたい!」と思ったら、最初に読みたい1冊になっている。一通り使いこなせるまでに必要なことが体系立てて書かれており、他のエディタを利用した経験があれば、よりスムーズに移行できるだろう。その上で他のエディタで使っていた機能や、新たにやりたいことを都度調べていく形になる。幸いVS Codeは人気とシェアもあるので関連書籍や情報は豊富で、新たな開発環境として役立ってくれるだろう。そして重要なのは、今使っているエディタや開発環境がずっと使えるわけではない点である。動きの早いIT業界において、サポートの終了、セキュリティの問題、開発環境や会社の方針といった様々な事情で変更を余儀なくされる場面がある。エディタとて例外ではなく、今の環境から新たな環境へ移行しなければならない場面もあるだろう。そのような場面に備えて、ツールを乗り換える訓練を積んでおくべきかもしれない。著者が経験したエディタはメモ帳、xyzzy、Vimを経て現在はVS Codeとなっている。プログラミングのスキル習得や企業での開発といった経験を踏まえて、VS Codeで本を書けるまでに至ったのだろう。エディタにおいては老舗や定番と言えるツールも多いが、改めて新しいものに対する関心を失ってはいないだろうか。上級者である諸兄にとっては、プログラミングを学び始めた気持ちに帰る意味で、新たなエディタを試してみるのも一興といえるだろう。ITエンジニアが一番使う道具であるエディタという存在を改めて見直すきっかけとしても、本書は役に立つと思っている。

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