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2020年9月に読んで面白かった本5冊

先月読んで面白かったり、役に立つと思った本を5冊紹介します。

一流のエンジニアは、「カタカナ」使わない!

東証システム障害の記者会見では、出席した記者から「カタカナを使わずに説明してほしい」と意見があった。
世の中には「メモリ」「ストレージ」という言葉を理解できない人のほうが圧倒的に多いのである。
専門家が初心者にわかりやすい説明を求められる場面は常にあるわけで、IT業界も例外ではない。
このような観点から、非エンジニアに対してカタカナを使わない説明力も必要になる。
もっとも、リテラシーの低い側に合わせすぎると「設計図共有サイト」のような、異次元の珍訳が登場して余計に混乱するのだが(この点は複雑な要因が絡むのだが)。
エンジニアにおいて説明力やコミュ力が重要なのは正論だが、どこまで下に合わせるかは別問題として捉えるべきであり、これは難しい問題である。
ところで本書では障害時にOracle(あるいは旧サン・マイクロシステムズ)のエンジニアが懸命に作業する場面があるが、「やっぱりサポート料金はお高いんだろうなぁ」と思った。

ならずもの 井上雅博伝 ――ヤフーを作った男

アメリカの「ヤフー」を日本に持ち込んだのは孫正義氏だが、「ヤフー・ジャパン」の生みの親といえば井上雅博氏だろう。
創業から長年に渡って辣腕をふるったが、メディアなどで表に出る場面は少なく、そのまま後任に引き継いで趣味人として生きたという印象である。 
本書では団地育ちという幼少期や、学生時代、かつて破竹の勢いだったベンチャーのソード(SORD)社からソフトバンクへの転身、孫正義氏との出会い創業時も細かく触れられており、当時の空気感が面白い。
"社員"には向かないが、"社長"に抜は適任だった同氏を抜擢したのは、孫正義マジックといったところだが、ソフトバンクとの関係性の変化から確執が表面化する流れなども興味深い。
パソコン通信やテレホーダイやモデムという時代を振り返る(個人的には教科書に載ってる昔話的なイメージ)のは、インターネット老人会かもしれないが、ヤフージャパンが日本だけで成功した軌跡を辿るのと、新たな発見もあるだろう。
クラシックカーやワインの収集に別荘の建築など、趣味人としての一面にも深く触れており、これを読めば死去における陰謀論が的外れだとわかる。
ところで今となっては、ストックオプションで成り上がるIT長者や、米国のビジネスを日本にもってくるタイムマシン経営も、過去の話かもしれない。

予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成


どこの世界も偉い人へのアピールポイントは数字とわかりやすさであり、技術とかロマンは求められない悲しい現実がある。
新しいビジネスや技術をアピールしても偉い人(年寄り)には理解できないわけで、シンプルに「確実に儲かるから予算くれ」と伝える手法を学ぶのも大切なのです。
そのあたりはタイトルや内容や著者の経歴から、ソフトバンクらしい1を10に見せるハッタリと後先を考えない勢いが伝わってくる。
IT業界的にはカネを強調するとお下品に感じられるが、なにをやるにも予算は必要なのでうまくバランスをとりたいところ。
悲しいかな、会社員だろうと筆者のようなフリーランスだろうと、なにかするにはまず金の話なので、こーゆースキルを身につけておいて損はない。

成果を生み出すテクニカルライティング トップエンジニア・研究者が実践する思考整理法 


コードを書くのは得意だけど、文章を書くのは苦手というエンジニアは多い……ような気がする(主語がでかい対策)。
SlackやSNSにおける短い文章はまだしも、長文となれば話は別である。
「ドキュメントなくてもコードを読めばわかるでしょ」と言いたくところだが、コードを読まずに済ませるためにドキュメントが必要なわけで。
こうした長文を書くのがが苦手な持つエンジニアに向けて、社内向けのドキュメントや技術ブログ、社外向けの技術書や論文など、幅広く応用できる内容になっている。
なにをどうやって書こうか悩む前に、この本を読んで何をどう書くべきかを学んでおこう。
理系の文章術の本は色々あるが、よりITエンジニアに特化した文章術として有用である。


プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション

中国のシリコンバレーと呼ばれる深センの軌跡から「プロトタイプシティ」という「とりあえず作ってみれば、上手くいくだろ!」的な考え方を知る書籍。 
後先を考えずに作ってみる・やってみる・売ってみるという、大陸的かつ雑な勢いが100%なエピソードが面白い。
いわばハードウェア版のMVP(Minimum Viable Product)やラピッドリリースといったところ。
いわゆる「ものづくり」ではあるのだが、日本の「ものづくり」とは根本的に違うものだと実感する(どちらが優れているかは別として)。
中国における製造業やスタートアップに詳しい方々による共著なので、出羽守な内容ではなく、ダメなところも含めた現地の空気感も伝わってくる。
意外な視点として、価格でしか訴求できない、水平分業が強すぎる、ブランディングが下手など、トレンドサイクルが早すぎるなどの欠点も見えてくる。
かつて海賊版やパチモノばかりだった頃から独自製品を生み出す流れは、東京通信工業時代のソニーや、自転車にエンジンを付けていた現・本田技研と同じような風景なのだろうか。
様々な示唆に富む内容だが、本書に載せられなかった闇も深そうな気もする。
今月のオススメ!

以上、5冊を紹介しました。
他の記事と同じくアフィリエイトはないので、気になる本は好きなだけクリックして購入してください。できます。
なお、「これからのデータサイエンスビジネス」と一緒に買ってくれると、誰かが喜びますので、そこらへんを忖度いただきたく。


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