親友が母になった日
中学に入学してすぐ、オリエンテーション合宿というのがあった。私は中学受験に失敗して、小学校からのエスカレーターのままに中学に入学していたので、その合宿地には既に何度も行っており、新鮮味は無かった。
でも、小学校から中学にそのまま入学する生徒はそこまで大人数でもないから、ほとんどがはじめましての状態。
しかも班分けは先生たちが事前に行っていたもので、クラス関係なくごちゃ混ぜだった。
そこで出会った和葉は、すぐに私の親友となった。
友達関係、恋愛関係、家族、その他何でも話したし、和葉もそうだったと思う。
私がダメな恋に泣く度に慰めてくれたし、
こうなっちゃダメだよと言っているのに、
和葉も私を追うようにちょっとダメな恋をした。
勉強についてここで書くのは申し訳ないが、
私は真面目に取り組めば中間層くらいで、和葉はちょっと下だった。
私はよく授業中に寝たし、資格試験でも寝た。
和葉は単純に勉強嫌いなようだった。
席が近かった時には授業中にひたすら絵しりとりをし、漫画を交換し合い、楽しくて仕方がなかった。
高校に入って喧嘩を一度だけした。
親友を失うかも…と思ったが、
ふたりで話し合おうと時間を決め話し合い、
その帰り道、私たちは踊りながら帰った。
ふたりで泣きながら生徒指導室に向かったこともある。
私は内容は忘れたけれど、その事実だけは今も懐かしい思い出話だ。
大学は別々になったが、それでも夜に和葉の彼氏(私の元カレ)と3人でワイワイ車で出かけたりもした。
大学卒業祝いには英語も全く話せないくせに
ディズニーワールドにも行った。
社会人になってからもそれぞれ紆余曲折の道を歩いていたが、その度に「ヒマー?」と連絡し、「どしたー?」と返事が返ってくる。
私たちは中学で出会ったころのままに、
何でもを素直に話せるふたりのままだ。
そんな親友和葉がこの度母になった。
結婚を機に仙台に引っ越したが、出産準備で地元に帰ってきており、「やることないからヒマだよー」と言っていたのに、そこから母になるまでは一瞬のように感じた。
午後3時過ぎ
私は美容院に行っていて、スマホは見ていなかった。
友人たちとのグループLINEに「痛い」とだけ入った連絡は、私の胸をぎゅっと熱くさせた。
どうか和葉が無事でありますように
どうか赤ちゃんが健康に産まれてきますように
私がそう願ったのは、二度目だったと思う。
午後8時過ぎ
赤ちゃんに「おーい」と呼びかける和葉の声が入った動画が送られてきた。
良かった…お疲れ様。
胸が締め付けられる思いがして、またぎゅっと熱くなった。
グループLINEではおめでとうの言葉が、季節外れの桜の花びらのように舞ったが、私はうまく言葉にできなかった。
年齢を重ね、ライフステージが進む度に、Instagramはキラキラと眩しく、辛く感じた。
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そのことは和葉とも話したことがあったし、
和葉自身もそれが嫌でInstagramをほぼ閉鎖しかけていた。
誰かが誰かと結婚し、盛大な結婚式を挙げたり、素敵な写真を載せる度に嫉妬を覚えたし、
さらに順調に出産、育児、子供の写真ばかりになることに嫌気が差した。
そして、そんな自分が大嫌いでたまらない。
それは今も変わらない。
そんな心の狭い自分が、大嫌いだ。
でも、親友和葉が母になった日。
そしてこれを書いている今、
私は嬉しくて泣いている。
ああ、よかった。
お疲れ様。
おめでとう。
落ち着いたら、すぐに会いに行くからね。
平次より
平次とは、彼女が私に会ってすぐ、名探偵コナンから取って付けたあだ名。
出会ってすぐは「じゃあ親友だから和葉かね!」って言っていたけど、彼女にそれは定着せず、私のあだ名の平次だけが残っている。
私をサポート?!素直にありがとうございます。あなたのサポートは、真っ赤で、真っ黒で、時に真っ青なましろが真っ白になれるよう、note内で活かされ続けます。