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33.詩集「分岐点」

「分岐点」
1.夢現
2.嘘
3.にじゅっさい
4.リュック
5.恨みっこあり
6.Jelly Beans
7.分岐点


おそらく19歳位の時に書き溜めた詩集です。
一つ一つに世界があって、でもそれは紛れもない自分から生み出されたもの。
色んなことに迷う時期だからこそ、
いろんなことを考えたのでしょう。
とはいえ、今の自分もまだその途中です。
だから何かのヒントになるかなと、
掘り起こしました。

7つ目の詩は
1~6までの自分の詩を
今改めて見てから書いたものです。

こうやっていつかの自分に助けられたり、
いつかの自分を今助けたかったり、
本当に人とは不思議なものです。

1.夢現

誰かに名前を呼ばれた気がした
遠く後ろからのような
耳元のすぐ側のような
どんなだったかなんて
もう憶えてないんだ
いつまでも優しいのは
視えない白い明日

散々なぞらえたのに
まるで似ても似つかない
ああなんだ夢だったのか
ただそれだけであってほしい

雪が降った街
遅延した箱
行き交う人 人
錆び付いたポスト
泣き崩れる暇もない
街灯に沈む太陽
慣性を取り戻した無情
いっそ夢であってほしい

誰かに呼ばれて 我に返って思い出す
俺はいつまでもここから抜け出せない
蝉よりもずっと
薄っぺらい人生だ

もうすぐ朝だよ
まだ時間はあるけど
そろそろ帰ろうか
待って 何処にも行かないで
目を覚ました時 また思い出す
真っ白の明日 迎えたはずの今日
夢を忘れた 夢




2.嘘

奴は嘘がバレたらしい。
簡単に終わる筈だったのにさ
鈍臭い 灰色
途切れ途切れ 躱す 他人の眼

ほら また首が垂れ下がってるよ
溜息なんかついちゃってさ
詰めが甘い 何者?
一寸先すら知らないもんだね

壁際 狭まる
君に選べる道なんてもう無い

これまでついてきた嘘に
これまでついてこれたことに
価値はあるのかって聞いたら
価値はあるんだって言うなら
折れた腕 もう一度 伸ばして
思いっきり ぶん殴って 一緒に帰ろう




3.にじゅっさい

ただ、遠いと思った
いつか必ずやってくるはずだったのに
永遠にも似たような感覚でいた
君はもう すぐ目の前だ

にじゅっさいになったら
何をしているんだろうな
小さな頃に思い描いた
綺麗な景色は
僕はもう忘れてしまったよ

にじゅっさいになったら
たくさんの楽しいことがあって
夢を叶えて 笑って 生きて
ただ 生きていると思っていた

それなりの幸福はある
好きなこと 好きなことば 好きな子と 好き
寂しさ 怒りも 沢山 覚えた
ねえ僕は
要らないものまで 抱えて持って
ここまで歩いて来てしまったよ


過去は
無いってことに
気がついたよ

思ってたのは
ただそうありたいであって
思ったのは
そうなれないもあるってこと

未来も無い
ただ
途方もない
巨大な
今が
いま ここにある
それだけ




4.リュック

積み重ねてきた
これまでも詰め込んで
何処へ行こうか
あの唄を口ずさみながら

道は無かった
ただ闇雲を歩いた
いつしかその全てが
足跡になっていた

ここにしかないもの
ひとりで抱えるのは
つらいだろう でも
手放せば もっと

ああ 置き去りにした
記憶なんて
どこにしまった
あの時から
まだ見つからない

ああ あなたがいなければ
きっとまだ
このリュックは
空っぽのままだったんだろう




5.恨みっこあり

伸びる影 不揃いな
この街の裏の顔を数えた

真っ逆さまに落ちていく
半透明な歩道橋で
今日もただ突っ立っている

管制された沿岸と
まるで四面楚歌の内陸と
何処にもいけない僕は
この捻れた交差点で
消息不明になった

君にも
抱いていたのにな
尊敬の眼差しとか
友愛の感情をさ

僕にも
あったのにな
そんなありきたりな
人間みたいなものがさ

無情の全身転移
孤独という二文字すらもひとつではない
本当に独りになった時
一体何が自分を表現してくれる

答えは知っている
それは無であり
そして無が全てのはじまり

ここにやってきたとき
すでに完成していたこの世界も
全ては無からうまれた

崇められる善人も
残忍な心を持つ悪党も
そしてこの僕として
その例外ではない

さよなら いま
安定した世界がさ
崩れる音が聞こえるだろう
恨みっこありさ
数え切れるだろうか
本当に

憎たらしいったらありゃしない。




6.Jelly Beans

閑散としたミドリ
泡沫 朝露 飽和した私

落ちていった蒼
海の底 深々 砂粒が航る

西の窓に映し出した赤
手のひらと同じような大きさで
やがて 夜を告げる
ずっと巻き戻していた白が
次第に暗くなってゆく

どうして 難しいことが
そんなに 多いのは
色が 色が 違うから

当たり前を あたりまえだと思ったのは
君が生まれた時から それらが
正しい普通とされていたから

色が違うからなんだ
皆 無二色のジェリービーンズ
どんな色だっていいだろう


7.分岐点

思い返すと
掌で
僕は僕の世界を創ってきた

握ったら
それは蕾のようで
花が咲くのは いつなのだろう

ずっとずっと
足が竦んで 立ち止まっていた
いっそ転げ落ちてしまえばいいと
思ったりもした


坂道 小刻みな階段
目の前の分岐と
心と未来
僕はどこへ行こう

いつの間にか迷い込んだ道ほど
楽しいと思えたりもするなら
靴紐が解けても
また結び直せばいいか
同じことを繰り返して
間違いまで繰り返しても

ここに居るなら
ここでしか出来ないこと

また始めようか

分岐の前、僕の散歩。

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