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“台湾の天才デジタル大臣"オードリー・タンが素敵すぎた


やっぱりオードリー・タンは凄かった、というか素敵すぎた、というのが終えての率直な感想でした。
何のことかと言うと、8月3日(月)にハフィントンポスト主催の「【直撃90分】台湾の天才デジタル大臣、オードリー・タンに聞く」というオンラインイベントでの感想です。

19歳でアメリカ、シリコンバレーに行きソフトウェア会社を創業後、アップル社のデジタル顧問にも就いた天才プログラマーであるタン氏は、自身がトランスジェンダーであることを公表した初の大臣(それも35才で!)としても有名で、新型コロナウイルス感染症対策におけるアプリを活用した施策が世界で話題となったことでも更にその名が知られることになりました。

90分の時間の中では、先日亡くなられた李登輝氏についての質問から始まり、タン氏を一躍有名にしたコロナ対策の話、教育や政治、日本がどうすべきか等、多岐にわたる質問に対して、ユーモアも交えながらとてもわかりやすく、話をしてくれました。

その中でも特に印象的だったやり取りをご紹介します。
(質疑応答の内容はハフィントンポストの公開用noteより抜粋)

Q.若者が活躍できる社会を作るために、何を取り組むべきか。

・デジタル大臣になったのは、その前のデジタル大臣のリバースメンターを経験してから。
・リバースメンター:35歳以下の若者が大臣のメンターになること。
・今でも40名ほどのリバースメンターが自分を助けてくれている。
・まずは、若者を掘り起こすシステムを作ること。

→何?? 政治にリバースメンタリング!? 企業でも導入している所はまだまだ少ないのに、政治の仕組みにリバースメンタリングを取れ入れているとはいきなりの衝撃。タン氏の前に、まずは台湾恐るべし。

Q.これからの時代、学校でプログラミングを必須科目にすべきですか?

・プログラミングは市民、政治、法律のようにみんなが知るべき
・社会を理解すること、冒険することがプログラミングより大切
  →最初の一歩としてデザインシンキングの考え方を学ぼう。
   それからコンピューテンションシンキングへ。
・現代の小学生がゲームからプログラミングを学習する
・楽しいから冒険みたいに楽しんでいる。
・自信を持つのも大事

→日本においてもプログラミング教育が必修化されるようになりましたが、単にスキルを学ぶということだけでなく、デザインシンキング等そのベースになる土台を築くことを強調していたことが印象的でした。あと、このメモにはでていませんが、アートを学ぶ重要性についても話されていました。うーん、さすがだ。

Q.台湾のIT業界における”女性活躍”の状況は?

・多くの女の子がプログラミングを学んでいる。
・子供の頃からプログラミングを学んだが、「プログラムデザイン」と呼ぶことで「エンジニアリング」とは区別した。
・「デザイン」と呼ぶことで多くの女の子がプログラミングを学んだ。
・今は反対に男の子にプログラミングを学んでもらうことが大変
・機械学習は機械同士が話し合う。そこに人間が参画し、今のプログラミングは人を理解することに注力している

→これ、まさに私が関わっている仕事のど真ん中の質問だったのですが、こんな答えが返ってくるとは。いわゆる「リフレーム」という新たな意味づけすることの重要性は理解していたつもりでしたが、こういうことをさらっと回答してくれるあたりはさすがとしか言いようがないです。

Q.多様性と統制のバランスについてどのように考えていますか?

・男性の思春期と女性の思春期を経験して、私はどちらも持ち合わせていることを知った。
・インクルージョンとはこのようにいろいろな側面を受け入れること。
・ある男の子がピンクのマスクをつけて学校へ行った。この子はマスクがピンクであるが故にいじめられた。このことをオードリーさんがプラットフォームで投げかけたらこれを知った政府の閣僚がピンクのマスクをつけて、共感を示した。これがインクルージョンの一つの形。

→「ピンクのマスク」の話は日本でも報道されていましたが、政府がこういうことを率先していることに改めて感動。

Q.台湾の選挙投票率はなぜ高いのか。

・そこには二つの理由がある。
1.小規模の選挙に多く参加することで、自分の声が政治に届くことを知り大きな選挙にも参加率が上がる。
2.社会的な団結が強い。Youtuberなどを取り込み社会全体が選挙を楽しんでいく。お祭りのような感覚。

→これは色々意見があるところだとは思いますが、個人的には「勝ち取ったもの(民主主義)」と「与えられたもの」の違いなんだと思いました。

最後に、

Q.日本はどうしたら多様性を促進できるのでしょうか。

・全ての物にはヒビがある。そこから光が漏れている。その光を見つけよう。
・怒りや悲しみが建設的なエネルギーに変わるように工夫することに社会全体で取り組む
・そうすることで新たな社会のプロトタイプが生まれる。
・楽しいことに変えていくこと。

→モデレータの入山先生から「詩人ですか?」とジョーク交じりに投げかけられた上でのこの回答。素敵すぎる答えで唸ってしまいました。
これに限らず、すべてを前向きにとらえるスタンスが、聞いている人をポジティブな感情にしてくれました。

月曜の朝という、こうしたイベントやセミナーの主催者にとってはある意味「最悪の時間」のはずが、あっという間の90分で、見終わった後にとてもいい気分にしてくれたイベントでした。

タン氏の頭の切れ切れ感は当然のことながら、言葉のチョイスが絶妙でかつわかりやすいのに加えて、何よりもナチュラルな人柄がオンライン上でも伝わってきました。
ここ数年毎年仕事で台湾に行っていることもあり、台湾大好きな私にとって、益々台湾を好きにさせてくれた時間でした。
個人的には他人をうらやむことはあまり好きではないのですが、今回ばかりはこんな人が大臣なんて・・・と思ったり。

ハフィントンポストの動画サイトにアーカイブも残るとのことなので、もしご興味がある方はぜひ。

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