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英語(外国語)をマスターするための「11の鉄則」 - TED Talks での外国語学習ビデオから

はじめに

以前、英語学習の記事を書きました。中高生から英語を学ぶと、幼少期の子供と比べて、その言語で意味もなく喋り続ける経験というのが圧倒的に少ない。そのため、「表現系」を解放することが大切だと述べました。

一部界隈でこの記事が受け、記事内で指摘したポイントに関して勉強になったというフィードバックも多く頂きました。そこで、他にも英語学習のTips について整理してみるかと思い、記事を書くことにしました。ですが、自分の拙い学習経験をあげてみても説得力も、そもそも効果も怪しいので、今回は、啓発系コンテンツが豊富である TED Talks のスピーチの中で、言語学習を扱っているものを確認して、そこから、これが中心となる鉄則であるというような Tips を整理してみることにした次第です。


参考にした TED Talks ビデオ 10本

今回は、以下10本のスピーチから鉄則をまとめてみました。英語を母国語としない人の動画や、多言語の学習を取り扱っている動画も取り上げ、普遍的な言語学習について考えてみます。


これら Talk から抽出し、まとめた11の鉄則が以下です。


語学学習の「11の鉄則」

1. 完璧を求めない

語学学習においては、特に喋る際は、文法的に正しく喋ろうとしたり、ネイティブのようなクオリティで受け答えをしようとしたりしない。完璧さを求めたら、なかなか先に進めない。間違ってもいいし、文法的に正確でなくても構わないという心持ちで、機会があればどんどん喋り、沢山の表現を試みるようにしよう。勉強した言葉、見聞きした言葉は、どんどん使ってみよう。

上記にあげた複数のビデオでも、「間違いをいっぱいしよう」ということを勧めています。間違いをすることによって学習の効率を高めることができると、その効用を積極的に評価しているものもあります。逆に言うと、間違いをおかすことへの心理的バリアを破ることが、我々にとって効果的な学習を得るために乗り越えなければいけない重要なハードルなのかもしれません。


2. 観察をする

英語を喋っているい人を見つけたら、実際に英語を喋っているところを観察する。街中などで会うことがなく、リアルで観察できる機会がなければ、YouTube の動画で出てくる英語話者を観察することでもいいし、ニュースやトーク番組でもいい。英語を喋っている人のその喋り方をよく観察する。表情やジェスチャー、声のトーンや大きさ。複数で喋り合っている状態であれば、挨拶から始まるやりとりや、言葉の選び方、ボキャブラリー。どういう間のとり方をしているのか、視線の配り方。咄嗟に出てくる言葉や、感嘆や驚きの表現の仕方。それらが組み合わさって、英語という言葉でのコミュニケーションが行われている。
よく観察し、言葉を取り巻く様々な表現やコンテキストを把握し、言葉を情報としてでなく意味として掴むことで、無意識に言語の理解を深めることができる、と上記の複数のビデオで指摘しています。


3. 真似をしよう

これは、前述の「完璧を求めない」と「観察をする」を組み合わせたプラクティスと言えます。観察して発見した言い方、言い回し、フレーズを実際に真似して使ってみる、ということです。

その文脈に合っているかどうか、文法が合っているかどうか等は気にせずに、とにかく真似をして使ってみましょう。勇気を出して、オウム返しで試してみるのもありでしょう。いや、あえてオウム返し的に真似をして、積極的にフィードバックを得ることでその言葉の意味やコンテキストを掴んでいきましょう。

我が家に4歳の息子がいますが、とにかくオウム返しをします。「鍵忘れちゃった」と僕がいうと、「パパ、鍵忘れちゃった」と言う感じです。「そうそう、慌てちゃってさー」と自分は返すのですが、そうすることで彼は自然と言葉が意味すること、文脈や反応の仕方も含めて、体験し、習得しているのだと思います。(とはいえ、だいぶリスキーなTipsとも言えますが。)


4. 自分の関心に関連する語彙から覚えよう

次の鉄則は、自分に関連する語彙から覚えよう、というものです。ネイティブスピーカーであっても、誰も辞書に掲載されている全ての単語を覚えていたりすることはありません。日本語でも世代によって使われたり使われない単語があります。「人口に膾炙する」というフレーズのように普段使うことはしなくても、聞くと意味がわかるだけの語彙というのもあります。

まずは、自分の趣味や興味を持っている領域での英語の語彙・表現を覚えていき、それを使うようにしましょう。例えば、野球が趣味だったら、野球の英語のニュース記事を読み、解説動画を見てみて、そこでの英語表現を知っていく、等です。自分の趣味の世界なので、言い方を覚える、語彙が増えることを純粋に楽しめます。それを通して、自分自身の英語というのを作っていくことができます。


5. 母国語(日本語)を使わない

次は、日本語をあえて使わない時間を作ってみる、という鉄則です。

だいぶ昔の話になりますが、お笑い界のBig 3(タモリさん、たけしさん、さんまさん)の世紀のゴルフマッチという新年にやっていたバラエティ番組がありました。その中の最大の名物は、「英語禁止ホール」や「日本語禁止ホール」でした。

これはお笑いの一つでしたが、この発想を語学学習にも応用しようというところでしょうか。例えば、この時間は日本語を禁止にして過ごしてみようとやって、英語を使うことを自らに課してみる等です。その時にうまく表現できなかった言い回しが後の英語の勉強の際に発見されたら、ああ〜、こう言えば良かったのか、となって学習の効果もあがります。このTED Talk (「どんな言語を学ぶにも使える、たった一つのシンプルな方法」)では、母国語禁止は、勉強している外国語を覚えなければいけない必然性が身をもって理解できるパワフルな手段と解説しています。これは冒頭で紹介した先日書いた記事における「表現系を解放する」にもちかしいポイントです。


6. 体験とともに言葉を覚えよう

単語帳で覚えたり、暗記をした表現はすぐに忘れてしまうことがあります。受験勉強で沢山の英単語を覚えた方も多いと思いますが、受験が終わった後の忘却も早かったことはなかったでしょうか。

外国語学習においては、自分の人生の中でその単語や表現を使ってこそ、生きた言葉として身につけることができます。

人と会う、話をする、議論する。釣りをする。ゴルフをする。ドライブをする。サイクリングをする。料理をする。編み物をする。瞑想をする。それらの体験とともに英語の語彙を使い、自分の感覚、体験の記憶と英語の様々な表現や単語を結びつけていきます。体験が充実したものであればあるほど、英語の表現もまた自分の中にしっかりと根を張ります。

上記のTED Talkの一つ(「なぜ私達は言語を学ぶのに苦労するのか」)では、このことを「言葉に命を与えよ(give that language life)」、と表現していました。


7. 楽しもう

できれば、これら様々な鉄則は、それを実践する過程で面白さ発見し、自分自身楽しんでいくことが大切です。楽しむことで、言葉を獲得し、使っていくことの喜びを地に足がついた形で理解していきます。

この動画(「効果的に言語を学ぶやり方」)では、語学学習に特別なテクニックはない。そして、楽しまないことは長続きしない。と述べています。


8. その言葉で生活をしてみよう

この Talk (「簡単にどんな言語も学ぶ方法」) では、”Live the Language”と表現しています。

日本語を使わない時間を作るという前述の鉄則を更に拡張して、一つの体験だけでなく、例えば丸一日英語で生活をしてましょう。読み、聴き、話し、書く。英語のニュースを読んで、ニュース番組を見て、English Speaker の知人・友人と話し、独り言をつぶやき、歌を聴き、自分でも歌って、日記を書いて、(できれば)英語で夢を見るところまでいってみましょう。英語をまさに生きたものにすべく、それを用いて生活することで、英語の体験もより強いものにすることができます。


9. 学習パートナーを見つけよう

とはいえ、一人で語学の学習を継続させていくというのはとても大変です。一緒に伴走してくれる学習のパートナーが必要です。

家族でもいいですし、会社の同僚でも友人でも恋人でもいいでしょう。SNSのコミュニティや、オンラインのサービスで学習パートナーを見つけるというのもいいアイデアかもしれません。英語を伸ばしたいのであれば、できれば、同じく英語学習に積極的な人がよく、英語の能力レベルが近い人ですと共に切磋琢磨できます。

間違った表現も許容してくれて、日本語を使わないというルールにも賛同してくれて、上記様々な鉄則を一緒に楽しんでやっていけるようなパートナーが伴走してくれることで、長い語学の道のりも確実に踏破できるようになるでしょう。


10. デジタルテクノロジーを駆使しよう

そして、時代はDX。デジタルテクノロジーが様々な恩恵を我々にもたらしています。語学学習もデジタルを存分に活用する手はないでしょう。

オンライン英会話は隙間時間があれば取り掛かりやすいサービスです。また、Netflix やHulu、Amazon Prime で好きな英語ドラマを観て英語のシャワーを浴びるのもいいでしょう。英語のweb記事を読み漁るのもいいでしょう。今や翻訳AIのクオリティは日進月歩で向上しています。例えば、以下の DeepL.com は無料版でも高い精度で翻訳してくれるため、わからない箇所は訳出しながら、多読をしていく助けになります。


英語学習のアプリも楽しみながら遊ぶように学習ができます。例えば、Duolingo はゲーミフィケーションの要素がうまく盛り込まれており、また世界中の人と競えたりもするので、モチベーションを持続させる仕掛けがあります。


Facebook、 Twitter や Instagram で世界中の人とつながることも可能です。Facebook group には語学学習のコミュニティも多くあります。前の鉄則でパートナーを見つけようと書きましたが、このように SNS を通して見つけても良いでしょう。

上記の挙げたTalkの中では、Skype を使って世界中の人とコミュニケーションするというTipsが紹介されています。最近は相手をランダムに見つけれるランダムチャットアプリというのもありますが、以下のような言語指定ができる通話アプリだと強制的に語学学習ができるやもしれません。


11. その国、その言語の文化を知ろう

英語をマスターする上で、英語脳を作ることが大事だという言い方をされることがあります。英語にしかないような表現を理解し用い、英語的な発想で考え、かつコミュニケーションを取ることをできるようになることです。

英語で個人的に面白いと思うのは、"dream a dream (夢を見る)" や、"live a life (生活を送る)" みたいに、動詞と名刺を同じことを指すものを並べる表現があることです。日本語だと、「頭痛が痛い」みたいになるわけですが、むしろ英語的表現として存在していたりしています。

このような言い回しを知るのに加えて、英語的な発想を身につけていくためには文化的な背景を知ることも有用です。例えば、"keep your fingers crossed"というフレーズがあります。幸運を祈るという意味でカジュアルによく使われる熟語です。この言葉は、片方の手の中指を、同じ手の人差し指にかけた状態にする手のジェスチャーから来ており、神の助けを請うところが元来の意味でした。


また、"break a leg" という言い方があります。

これも幸運を祈るという意味で使われるフレーズです。元来は1920年代にアメリカの競馬や演劇において使われ始めたとされる熟語です。騎手や俳優、音楽家の本番での成功を祈念するときに、直接的に幸運を願うことはかえって不運につながるという考え方から、「足を折っちまえ!」というような逆の表現がうまれたというものです。

どちらも幸運を祈る表現であり、そのままそういう意味だと知るに留めて使いこなすのもそれはそれでよいのですが、その背景にある成り立ちを知るとより英語の文化を踏まえたコミュニケーションを行うことができるようになります。

言葉を知るには、その言葉が使われる地域の歴史や文化を知ることも大切です。そこにしかない食べ物を食べたり、スポーツを知ったり、歴史上の偉人について調べます。それをすることで言葉の由来に触れ、その言語を自分のものとすることができます。これがコミュニケーションの土台になります。ひいてはあなたの語学力を伸ばし、世界を豊かにします。

ウクライナの格言で、「言葉を知れば知るほど、より多くの人生を生きることができる」という意味の言葉があります。

 Скільки мов ти знаєш - стільки разів ти людина
 (Skilʼky mov ty znaješ - stilʼky raziv ty ljudyna)

この記事で挙げた複数の動画でも、言語を学ぶことは人生を変える、語学は人生を広げるというエピソードがいくつか紹介されています。言語の習得は一朝一夕にはいきません。とても長くかかる道のりです。ですが、それが人生をより豊かなものにしてくれるのであれば、挑戦し、努力をする価値は十分にあります。これら鉄則が、英語学習を楽しみながら、かつ効果的に進めるための助けになればと思います。



おまけ

本記事のように、TED Talks を参照しながら、睡眠の質を高めるコツについてをまとめた記事も執筆しています。ご興味がございましたら、こちらもご覧ください。


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