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空を見上げ、ドローンの未来について語ろう

ドローンに関する記事です。

ドローンは着実に普及しつつあり、次なるステージに進もうとしています。2019年の MHI Annual Industry Report によると、新技術をどのように評価しているかの調査において、ドローンを含めた自律的移動体にあたる項目である Autonomous Vehicles and Drones が競争力を生むもの、将来性のあるものと認める割合がとうとう50%をこえました。技術および先行する企業の実証研究等が進捗してきたこともあり、一般にも認知されるようになってきたと言えます。

実際、ドローンは、様々な領域に革新をもたらしています。軍事、レジャー、緊急時サービス、災害対応、物流・配送、農業、建設。火災時における人命救助のためのドローンによる火災現場の迅速な探索にも使われています。UAV とも表現される、この無人の飛行機体は、ビジネスを、そして社会を進化させるポテンシャルも持っています。

ドローン市場は活況を呈しています。技術の進展と開発コストの低下も進行し、具体的なユースケースも様々見いだされてきています。ゴールドマン・サックスの2019年の調査によると、ドローン市場はグローバルで、2020年までに約10兆円規模のマーケットになると試算されています。そのうちの70%が軍事利用で、17%がコンシューマー・ドローン。残りの13%が様々な産業での活用となります。

軍事領域でドローンは駆使されてます。偵察、ピンポイント爆撃、制空権の確保。作戦の遂行上、重要な役割を担うようになっており、多くはリモート操縦によるものですが、GPSやLiDAR、レーダー等様々なセンサーを備えて自律的に行動を行う戦闘用ドローンも存在します。以下のビデオの冒頭ではドローンを攻撃するドローンの紹介があります。(話題のメインは監視システムの話ですが。)


コンシューマー・ドローンは、昔ながらの日本語で表現すると「ラジコン」ですね。いわゆる個人の趣味の範囲内でのドローンの操縦や撮影用途になります。コンシューマー・ドローン操縦の大会も世界中で盛んで、この一般用途での市場は引き続き伸長していくでしょう。


コンシューマードローンでの撮影用途のウエイトが大きいように、産業用ドローンも、撮影、そしてそれによる点検や監視、予知保全(PdM)での活用は広がっています。例えば、大型の施設・設備、建設中の建物や建機や航空機に対する、有資格者によるドローンを使った点検は古くから行われています。石油やガスの工場、発電施設では機器やパイプラインのモニタリングから、セキュリティ目的の監視まで、多くのユースケースがあります。以下は、風力発電設備のドローンを用いた点検のビデオです。


そして、更には災害対応、物流・配送、農業、建設等、多様な利用が行われるようになっています。緊急時配送としては、カリフォルニアのスタートアップ ZipLine は外せないでしょう。ルワンダで、緊急時における血液輸送、血漿や軽量な医療品・器具の輸送を行っています。(過去にも紹介したので、今回は違う Video を貼ります。)


USでも、UPS とスタートアップのMatternet が共同で、血液サンプルの配送テストを行っています。


配送分野における日本での事例としては、(手前味噌ですが)楽天でのドローンデリバリーの事例があげられます。


DHLは中国のドローンメーカー Ehang と組んで、ドローンデリバリーのソリューションを開発しています。ドローンが離発着できるボックスがすぐれものです。


USのドローンスタートアップの Natilus は、ドローン配送の限界を突破してもっと遠くへ、多くの荷物を運ぼうと、巨大なカーゴドローンを開発しています。単に巨大なだけでなく、船での輸送より十数倍速く、航空便での輸送のコストの半分で済むことをターゲットにしています。


更にはドローンは人をも運ぼうとしています。ドローンタクシーの構想や実証実験は様々な会社が着手しており、Ehang もデモンストレーションをしています。


今年2020年のCESでは、Uber と Hyundai が共同で Air Taxi の発表をしています。(こちらはどちらかというと、ドローンというよりは、無人ヘリという分類の方が正確ではありますが。)


このように、ドローンはその活躍の場を広げており、今後も発展していくことは間違いありません。あわせて関連技術の開発も進んでいます。

例えば、通常、(上記の無人ヘリのような大きなものではない)‌25kg‌未‌満‌の‌マ‌ル‌チ‌コ‌プ‌ター‌小‌型‌無‌人‌機としての産業用ドローンの飛行時間はバッテリーとの兼ね合いで30分程度に限られています。これは、現状、より広範囲なユースケースを考える際の制約になっています。そこでこの問題を解決すべく、テスラ出身のエンジニアによる、一回の充電でより長時間フライトが可能なドローンの開発にチャレンジしているスタートアップもあります。


更に個別の要素技術だけではなく、構成部品の標準化、技術を統合していく融合技術やプラットフォームの開発、連携用APIの標準化等も同時に進展していくでしょう。それにより、ドローンはより大きなエコシステムの中に組み込まれてワークするようになる方向へ進んでいくと思われます。後押しとなるのはエッジコンピューティング及び5Gの普及です。

以前、以下の記事で紹介したように、各社が出している5Gによってもたらされる未来の社会の姿には、必ずと言っていいほど、ドローンが登場してきます。


5Gの通信の大容量化、高信頼性・低遅延、という特徴から、今後のドローンによる高度なサービス、ユースケースに求められる高解像度のカメラを用いた認証システムや、管制システム、複数機体連携等の高度な機能の開発が進んでいくと考えられます。

中でも低遅延という特徴は鍵になります。通信には必ず遅延があります。そのため、複数のドローンの機体が相互に通信しあって連携しようとすると、遅延やそれによる動作の誤差は蓄積していき、全体としては致命的なずれとなって、想定外の結果や事故を招くリスクもありえます。もちろん個々の通信や動作の中で遅延を吸収できるバッファやゆとりも大事ですが、ここで低遅延という特徴は、蓄積によるずれを回避するためには非常に重要になります。

そして、これにより、ずれなく連携できるようになったドローンは単体でのタスク実行から連携したタスク実行へと進化していきます。例えば、複数の機体が連携した上で大型の貨物を運ぶ等の群行動も可能となります。また、機体間での空中での給電等も行われるようになるかもしれません。

以下のビデオは5Gではないのですが、ドローンの群行動管理ソフトウェアを出しているラトビア共和国のスタートアップ UgCS による小型ドローンの協調動作によるパフォーマンスです。このような正確な連携をドローンが当然の如くできるようになる可能性があります。


複数機体連携も可能になり、ドローンの用途はどんどん高度になりつつ、広がっていくでしょう。そうするとますますドローンの安全性を高める努力が欠かせなくなります。例えば、ドローンが墜落した際の自己調査に活用するフライトレコーダーや機体の識別用コード等は今後定められていくと予想されます。異なる機種同士の衝突回避のためのコミュニケーション・プロトコルも決められていくでしょう。

また、普及していく過程で、ドローン等の無人機と有人の機体が空で共存することになるため、有人機の管制システムに無人機が組み込まれていく必要が出てきます。将来は、位置情報交換システムや有人機との自動衝突回避システムも搭載し、より大きな管制システムに統合されていくこととなるでしょう。そして安全にドローンがどこまでも飛んでいく時代がやってきます。


ドローンは、既に様々な領域に革新をもたらしています。この無人の飛行機体は、世界中の空を飛び、ビジネス、社会を進化させていくポテンシャルを持っています。その未来の可能性は無限大です。The Sky is the limit. 空を見上げ、ドローンがもたらす未来に想像の翼をはばたかせていきましょう。

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