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こんな「今」だから考える日本のインバウンド…

インバウンド依存と言うけれど…

得体の知れない疫病が世界中に広がり、日本はもちろん世界中の移動が制限され、日本から見た「インバウンド」が壊滅的な状況の今。特に中国からの団体客減が示した日本国内の各産業への影響の大きさもあって、「インバウンド依存しすぎた結果だ!」「観光立国なんて言ってるから!」「それ見たことか!インバウンドで一儲けしようとした結果がこれだ!」みたいな記事・意見を見ることが多くなりました。

日本にとって多くの外国人が日本へ来始めたのが最近の事で、ここ数年で一気に増えたからアレルギー的な物もあるのかも知れませんね。
うんうん、分かります。
しかし、世界で見た時に、世界中で旅行者が増え(多くの人が旅行できるようになった)、LCCも勢いを増して飛んでいる現在、「インバウンド」と言う流行りっぽいワードは抜きにして、この世界の流れに日本は乗り遅れていたことは確かだと思っています。
それまで日本は訪日観光的には「鎖国」状態だったし、ビザの条件も厳しく「日本に来るにふさわしい身分とお金を持った人だけ来てくれ」と言っていたのと変わり無かったと思います。
現在でも「日本人の心の鎖国」「外国人アレルギー」「特にアジア諸国に対する上から目線」状態は変わらず、観光業などの直接接点のある人以外は、「外人増えて迷惑」「治安が悪くなるだけ」と思っている人が一定数いると思います。
「日本は素晴らしい」「日本人で良かった」的な「日本称賛的TV番組」が流行る中、「でもたくさん来てもらっては困る!特に中国人!」みたいな差別的鎖国情緒はどうしたもんかなと思います。
私は香港に住んでいて、香港人がどの様な人たちか知っているつもりですから、日本人の「香港=中国」のような発言はめちゃくちゃムカつきます。行政上はモロに上下関係があるのですが、バックグラウンドや旅行者として見た時に香港と中国はもちろん違うのです。(香港人=良/中国人=悪という考えではありません)
時々、地方の観光業者さんによる国別訪問者集計を見せてもらって、中国(香港)などと一緒にカウントしていると、「何も言えねぇ…(実際にはそこを厳しく突きますが)」ーしばらく思考停止してしまいます。

国内海外のバランスを取ってこそ

ここからが今回の本題なのですが、インバウンド依存は、なかなか徹底してできる事ではないと思います。確かにラオックスくらい完全に中国人団体客を囲い込むビジネスだと「依存」と言うよりも元々それが業態・戦略であって、この状況で厳しいのは分かります。
私も日本国内をいろいろ訪問させてもらい、インバウンドに注力(私の場合、特に香港・台湾)されている方は、インバウンドの割合は全体の1割とか2割程度で積極的に受け入れをされているのではないでしょうか?基本は国内のお客様を今まで通りに受け入れ、やはり日本は繁閑期がはっきりしており(みんな同時に休暇を取るお国柄)。オフシーズンでも平日でも年中満遍なく来てもらえる訪日インバウンド客はたとえ1割でも大きな存在です。
このバランスはとても大切だと思います。
インバウンドに注力するのは良しとして、「遥々行って見たら外国人だらけ、日本人がいない!」のような状態だと訪日旅行者としてはちょっと残念な印象が残るのではないでしょうか。逆に私達も「海外旅行先で行った場所が同じ日本人だらけ」って結構シラけてしまいませんか?

このバランス(訪日客:期待する日本情緒を保つ/国内客:外国人だらけと言う印象を防ぐ)と品質を維持(同じサービスを提供)することで日本のインバウンドは日本らしく発展することができるのではないかと思います。

日本人の来ていない(評価の低い)ところに外国人だって来たくありません。
「日本人に評価されないからインバウンドでなんとか(どうせ質とか分からないだろ)」というのが「インバウンド依存」ですよね。

また、お金のある日本(消化しなくてはならないお金がある)は「インバウンド専用施設・割引プラン」みたいなのをつくりがちですが、その前に既存のコンテンツをどれだけ活かせるか、ブラッシュアップ(海外に分かりやすいストーリー作り・魅力の発信等)が必須であると思います。

本質的に見てインバウンドはFIT(訪日個人旅行者)が来てこそだと思います。(個人的意見)
情報は海外の方が早く出回っており、彼ら(訪日客)は情報収得に対して強者です(情報はまだ偏ってはいますが)。私たち日本人が知らない様な事でも彼らは情報を得ています。しかし我々日本人は彼らの事をあまり知りません。

「香港=中国」と言っている人でも、ニュースで香港民主化デモは知っているはずです。香港人が中国に対して「アレルギー」を持っているのは何故かを知るには十分すぎる出来事だと思います。
それでも香港=中国だといいますか?

何ができる?

旅行が制限されている今、これからも訪日客を受け入れていく我々には何ができるでしょうか?
旅行の計画は平均して3ヶ月前からというデータがあります。

今現在、旅行を計画している人はいないと思います。誰も計画できません。
もともと旅行好きが多く、日本に足繁く通う香港人は、行きたい時に気軽に行けてた日本へ行けないストレス、香港内に「旅行」が存在せず狭い香港から出られないストレス、昨年6月からの民主化デモの停滞(進展無し)によるストレスは相当のものだと思います。このコロナショックが終息した時、真っ先に日本へ向かうのは香港人です。それだけ香港と日本は近く、香港人にとって日本は安心・安全・高品質(コスパが良い)の旅行先です。
先にも申し上げた通り、訪日客の実際の訪問には通常3ヶ月程度の時差があります。事態が好転し終息したとしても明日、明後日やってくるわけではありません。安全宣言がされた数ヶ月後から本格的に訪日客をお迎えすることになります。
事態の終息後を想定した情報発信はもちろん継続しなければなりません。
これを機に自社コンテンツの見直しや、防疫・衛生的な安心材料をどう伝えるかも再考する時でしょう。

香港では2003年のSARSの経験から、今回も早くから市民レベルでの防疫が徹底されていました。また感染経路の把握が可能なことから、徐々に落ち着き始めた感もあります(終息にはまだかかりそうです)

一方で日本は今後どうなるのか全く読めません。
香港から見ても(他国から見ても)日本は今は安全とは言えない状況です
この事態の早期の終息を願うばかりですが、その時何ができるのかも考えておかなければなりません。終息宣言がされた後には、「もう安心です!」「是非お越しください!」とお迎えすることになりますが、「安心・安全」は日本人とその他の国から来る人とでは捉え方のレベルが違います。
香港デモの時、日本の知人から「毎日報道を見ている。香港は危険だ!早く日本へ帰って来るべきだ!」と言われた時でも、私達現地の人間は情報を集め、ある程度普段通りに生活していた様に、逆に日本から安全・安心だと言われても、後手後手の対応や施策を世界に知られてしまった後では、海外の人が元々抱いていた「日本に対する安心感」はまた違うものになってしまっていると思います。

私達日本人にとって「安心・安全・高品質」は当たり前の事ですが、海外から来る人たちにとってはそれが日本の魅力であり、その国ではなかなか得られないものだという事です。
当たり前のことをどう伝えるか。これからの大事な課題だと思います。

おわりに

最後まで読んでくださりありがとうございました。
今回も思ったことをつらづらと書いていたら結構長くなりました。
簡潔にまとめる文章力が欲しいです。

事態の終息後にまたたくさんの訪日客がさらに大きな期待と共に日本へやってきます。今は我慢の時ですが、安心をもってお迎えできる様に準備したいですね。

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