ITZY(있지)「Not Shy」


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 セカンド・ミニ・アルバム「IT'z ME」から約5ヶ月という短いスパンで、ITZY(イッジ)が最新ミニ・アルバム「Not Shy」をリリースした。
 最初に目を引いたのはジャケットだ。メンバーの5人が纏っている服は見事にバラバラである。ファースト・ミニ・アルバム「IT'z ICY」から「IT'z ME」までのジャケットは、共に黒が多めのコーディネイトゆえか、統一感が際立っていた。それはまるで、デビューという名の船出を一致団結して乗りきると言いたげなイメージ戦略に思えた。

 そうした視点から見ると、「Not Shy」のヴィジュアル表現にはITZYの新たな側面を見せようとする意図が感じられる。雑誌VOGUEを思わせる構図は、過去のジャケットでは見られなかったフォントとカメラアングルが印象的だからだ。
 これはおそらく、リード曲の“Not Shy”がITZYにとって初めて愛を歌った曲なのも関係している。歌詞で打ちだしたチャレンジングな姿勢を、ヴィジュアルにも反映させたのかもしれない。このようにさまざまな面でコンセプトを固める抜かりのなさは、さすがK-POPの最前線を駆け抜けるグループといったところか。

 音も相変わらず興味深い。たとえば“Don't Give A What”では大仰なギター・サウンドをフィーチャーし、ロック色を強めている。それでいて、ダーティーな音色のベースと強いキックによる4つ打ちが交わるビートはハウスの匂いを醸す。強いて言えば、ヴァンダリズム“Smash Disco (Vandalism V8 Mix)”(2008)やカミーユ・ジョーンズ“Difficult Guys”(2008)といった、2000年代後半のエレクトロ・ハウスを想起させる。
 とはいえ、チアリーディング風のヴォーカルなどがあるおかげで、エレクトロ・ハウスの焼きなおしにはなっていない。ひとつひとつのパーツに耳を凝らすと、多くの要素で構成されたアレンジなのがわかる。

 “SURF”もおもしろい。シンコペーションを多用したベース・ラインが目立つディスコ・ソングで、心地よい横ノリは私たちを踊らせてくれる。そこにラップが乗るからか、ロニー・ラヴ“Young Ladies”(1980)あたりのディスコ・ラップが聴きたくなってしまった。

 「Not Shy」のサウンドは、モダンなプロダクションや曲展開を保ちつつ、先達が残してきた音楽に続く道も随所で聞こえる。2000年代のダンス・ミュージックからディガー好みのマニアックなレコードまで、たくさんの音が脳裏に浮かんでくる。
 それが意識した結果なのかははっきりしないが、筆者は意識したんじゃないか?と思っている。“Don't Give A What”の歌詞を聴いてしまったからだ。
 “Dalla Dalla”や“ICY”の路線を引き継ぐガールクラッシュな言葉が並ぶこの歌では、《Strike, strike a pose, strike, strike a pose》というフレーズが飛びだす。そのフレーズの歌われ方を聴いて、マドンナの名曲“Vogue”(1990)を連想した者は少なくないはずだ。「Not Shy」は、歌詞にも過去への道しるべを用意している。





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