2021年ベスト・トラック20
ベスト・トラックは同時代性のみならず、聴いていて気持ちいいという快楽性も重視しました。なので享楽的なダンス・トラックも多く入っています。とはいえ、アジア・ブームに対する痛烈な皮肉が込められた曲など、批評精神が旺盛な曲も少なくないのは、我ながら近藤らしいなと感じます。
ブログやWebマガジンで評した作品は、タイトルにリンクを貼っております。こちらもぜひ読んでください。
20 Black Girl/White Girl “Phaeses”
オランダのデュオがリリースしたマシーナリーなテクノ・トラック。硬質な音色が淡々と刻まれるビートで狂喜乱舞。
19 Msftz “Heart”
スウィートな歌声が魅力のシンガーによる曲。肉感的グルーヴが映えるR&B。
18 Anz “Unravel In The Designated Zone”
マンチェスターのDJ /プロデューサーがリリースしたダンス・トラック。突如鳴り響く8ビットシンセとブレイクビーツの組みあわせは初期のハドソン・モホークやラスティーを想起させる。
17 VTSS “To Whom All Lovers feat. Jasmine Azarian”
ニュー・ビートやEBMといった音楽が脳裏に浮かぶメタリックな音像に惹かれた。テクノリスナーはもちろんポスト・パンク好きにも好かれそうな多面的サウンドも魅力。
16 The Buildings “Flesh and Code”
フィリピンのロック・バンドによるナンバー。緩い雰囲気と少々シニカルな歌詞が耳に残った。
15 Solomun ft Jamie Foxx “Ocean”
色気漂う心地よいハウス・トラック。ミラーボール煌めくダンスフロアに相応しい音だ。
14 AJA “Grime”
強烈なベースに艶やかなノイズが交わる“Grime”は驚くほど先鋭的でありながら、低音の快楽に浸れるという意味ではキャッチーでもある。前衛と親しみやすさは必ずも相反しないと証明したサウンド。
13 Moonbyul “G999 (Feat. Mirani)”
ニュー・ジャック・スウィングを衒いなく鳴らした良曲。ムンビョルの高いラップスキルが際立つ。
12 Space Afrika "B£E (ft. Blackhaine)"
マンチェスターのデュオによる曲。世情に対する批評眼が光る歌詞と深淵なサウンドスケープの融合にやられた。
11 Ben&Ben “Upuan”
たおやかで温かいメロディーを紡ぐフィリピンのバンドが生みだした新たな良曲。アレンジの多彩さが際立つ。
10 aespa “Savage”
ソフィーを彷彿させるトラックが良い。ハイパーポップ・ブームに対するK-POPからの解答としても聴ける。
9 Pinty Feat. Emma-Jean Thackray “Comfort Me”
キング・クルールとも交流があるラッパーがUKジャズ・シーンの秀英とコラボ。ジャズのスパイスが効いたUKガラージという趣のサウンドだ。
8 Lee Hi “빤간 립스틱”
シンコペーションが効いたベース・ラインで踊らせてくれるディスコ・トラック。無我の境地でダンシングするのが大正解。
7 EVERGLOW “Don’t Speak”
ハイ・エナジー的いなたさとレトロ感を醸す秀逸なポップ・ソング。こうした柔らかい強さを打ちだせるのもEVERGLOWの魅力だと思う。
6 Miso Extra “Deep Fried”
イギリス人の父と日本人の母を持つアーティストの曲。メロウなグルーヴと歌いまわしに惹かれた。
5 Yunè Pinku “Laylo”
アイルランドとマレーシアをルーツとするアーティストのデビュー・シングル。どこか内観的でありながらアッパーなレイヴ・サウンドが際立つトラックは、哲学をするダンス・ミュージックと形容したくなる。
4 Sherelle “160 Down The A406”
ジューク/フットワークやベース・ミュージックを中心としたDJプレイが得意なアーティストの曲。粗を見いだすのは簡単だが、それ以上に際立つ圧倒的センスが筆者の心をとらえて離さなかった。
3 IU “Celebrity”
親友であるソルリに向けたようにも聞こえる歌詞に感涙。無駄な装飾を省いたミニマルなサウンドプロダクションも秀逸。
2 Little Simz “Introvert”
サウンドの迫力に、優れた洞察力を備えた歌詞。あらゆる面でリスナーの聴感覚を拡げる刺激が印象的な名曲だ。
1 Pyra “Yellow Fever (feat. Ramengvrl & YAYOI DAIMON)”
タイのラッパーによる強烈な曲。“アジア”のステレオタイプを皮肉る怒りが際立つ歌詞に拍手。アジアのラッパーたちの繋がりが深まっていったのも、2021年の音楽を語るうえで欠かせないトピックだと思う。
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