Red Velvet(레드벨벳)が描く女の子たちの世界



 溌剌とした姿が目に浮かび、心が飛び跳ねてしまう。楽しさはもちろんのこと、生きていくうえで味わうほろ苦いエモーションもかすかに滲んでいる。ベッドルーム、ドライヴ、ショッピングモールなど、聴く場所を選ばない高性能ポップ・ミュージック。先日、レッド・ヴェルヴェットが発表した最新ミニ・アルバム「‘The ReVe Festival’ Day 2」のことだ。

 正直、6月に出た前作「'The ReVe Festival' Day 1」よりも断然素晴らしい。バブルガム・ポップの瑞々しさを満遍なく塗りたくり、そこへR&Bやファンク、ディスコといったスパイスを程よく振りかけている。なかでも、スミンが手がけた“눈 맞추고, 손 맞대고 (Eyes Locked, Hands Locked)”は、ブラックストリートあたりのサウンドが脳裏に過ぎるR&Bだ。すっかりお馴染みとなった流麗なコーラス・ワークが沁みる、艶やかなバラード。
 “Ladies Night”にも惹かれた。上品なストリングスやシンコペーションを多用するベースが際立つトラックは、肉感的グルーヴを創出するフィラデルフィア・ソウルだ。歌詞も興味深い。一見すると、女性たちのエンパワーメントを祝う歌にも聞こえる。しかし、“Ladies Night”というタイトルをふまえれば、女性同士のセクシュアルな関係を描いているとも解釈可能なのだ。ティーンエイジャーの同性愛者が頭に浮かぶ世界観という意味で、女性版『Love, サイモン 17歳の告白』とも言えるだろうか。

 リード曲の“음파음파(Umpah Umpah)”も見逃せない。アッパーなファンキー・ハウスといった趣で、踊れるダンス・ミュージックとしてもかなり上質だ。もちろん、パワフルなヴォーカルと掛けあいが光るポップ・ソングとしても楽しめる。
 シュールなMVもおもしろい。レッド・ヴェルヴェットの5人が夏のバカンスを楽しむというストーリーは、さまざまなトラブルに見舞われる。なぜか5人を乗せた車の前に亀が現れ、宿に着いた後も嵐がやってくる。さらには、じゃんけんで負けたスルギが大雨のなか宿の屋根に登り、テレビのアンテナを直すというシーンも。それでも5人は、ボードゲームでわいわいしたりと、楽しそうである。
 “음파음파(Umpah Umpah)”のMVは、男性や親を介在させず、女性たちだけで楽しむ様子を強調する。トラブルへの対応も5人だけでこなすなど、自立心の強い女性像が埋めこまれているのは明らかだ。

 それを観て筆者が連想したのは、1983年にシンディー・ローパーが放った大ヒット曲“Girls Just Want To Have Fun”のMVだった。このMVもまた、〈Some boys take a beautiful girl And hide her away from the rest of the world I want to be the one to walk in the sun(男の子のなかにはきれいな女の子を連れて 周りの世界から隠してしまう人もいる でもわたしはお日様の当たる場所を歩いていたい)〉といった一節もある歌に乗せ、自立心の強い女性像を描いているからだ。親に口うるさく言われても、シンディーは友人の女の子たちを引きつれ、街を踊り歩く。最終的には街の人々も巻きこみ、自分の部屋でパーティー騒ぎをするというストーリーだ。女子差別撤廃条約が発効されるなど、さまざまな面で男女同権が進んだ1980年代の空気を反映しているという意味で、とても重要な作品である。

 思えば、レッド・ヴェルヴェットは女の子たちの世界を積極的に描いてきたグループだ。たとえば“Bad Boy”は、悪い男を手玉に取るしたたかな女性について歌われている。その女性像はMVでより先鋭化した形で表現され、女性同士で愛しあっているかのような描写も登場する。5人の表情は終始クールで、コミカルなシーンが多い“음파음파(Umpah Umpah)”のMVとは対照的だ。
 共に自立心の女性像を感じさせるMVでありながら、それを表す世界観はだいぶ異なる。そうした多面性は、女らしさが固定化されることへの抗いにも見える。



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ポップ・カルチャーが大好きなフリーライター/編集。批評スタイルは「群れずに是々非々」。主な仕事のまとめ : http://masayakondo.strikingly.com/ 連絡先 : acidhouse19880727@gmail.com

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