Park Hye Jin(박혜진)「How Can I」


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 DJ/プロデューサーのパク・ヘジンを知ったきっかけは、2018年に彼女がリリースしたミックステープだった。デトロイト・テクノの叙情的なサウンドを匂わせる“Are You Happy ? 행복하냐고묻지를마”、レーベル1080pの台頭によって急増したメロディアスなローファイ・ハウスが脳裏に浮かぶ“You Say Me 너는내게말해”など、良質なダンス・ミュージックが揃っている作品だ。
 一方で、ジャストのタイミングから若干よれたビートが印象的な“Hold On 꽉잡아”はJ・ディラを想起させたりと、ヒップホップの要素も目立つ。こうした折衷的内容は、DJ向けのダンス・トラックだけでなく、キャッチーなポップ・ソングを作れるソングライターとしての才能も光る。

 ミックステープを聴いて以降、筆者はヘジンの活動を追うようになった。さまざまなメディアに提供されるDJミックスはもちろん、2018年発表のEP「If U Want It」といったオリジナル作品も愛聴してきた。

 「How Can I」は、ヘジンがNinja Tuneと契約を交わしリリースした新しいEPだ。結論から言えば本作も素晴らしい。これまで同様ハウス・ミュージックを軸にしながら、自身の音楽性を着実に拡張している。
 なかでもお気に入りなのは“Can You”。反復するヘジンの声は高い中毒性を生み、シカゴで生まれたジュークやフットワークの要素が滲むビートはどこまでも享楽的だ。強いていえば、ジューク/フットワークを良質なポップ・ソングに変換したジェシー・ランザの“It Means I Love You”(2016)に通じるサウンドである。とはいえ、“Can You”のほうはよりビートを強調していたりと、ダンスフロア向けのプロダクションが施されている。この点は“It Means I Love You”と大きく異なるところだ。

 “How Come”も特筆したい。シンプルな4つ打ちを終始鳴らし、そこに呪術的な妖しいヴォイス・サンプルを混ぜることで生じるグルーヴは、DJファンクあたりのゲットー・ハウスを彷彿させる。ダンスフロアに投下されたら、多くの人々が踊り狂う様を容易に想像できるサウンドだ。

 本作はこれまでヘジンがあまり見せてこなかった表情を楽しめる。ジューク/フットワークやゲットー・ハウスといったシカゴ生まれのダンス・ミュージック色を強め、引きだしの多さを見せつけている。パク・ヘジン、やはり追いかける価値がある才能だと思う。



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