SUMIN(수민)「XX,」


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 レッド・ヴェルヴェットBoAの曲を手がけたスミンの作品は、ブログでもたびたび取りあげてきた。一度聴いたら耳から離れないキャッチーな歌メロに、そこらの偏屈で不寛容なエクスペリメンタル・アーティストよりも先鋭的なサウンド。これらの魅力にハマってしまったからだ。

 彼女の音楽性を定義するのは難しい。端正なプロダクションが施された音のシャワーはさまざまなジャンルを含みつつ、リスナーの耳に届けられるのだから。
 ほのかにドリーミーでメタリックなシンセ・サウンドはフューチャー・ベースやIDMの視点からも楽しめるし、かと思えば細かくハイハットが刻まれるミニマルなビートでトラップの要素をちらつかせ、心地よいグルーヴを生みだす。
 デビュー・アルバム『Your Home』(2018)の頃は、トキモンスタやロドニー・ジャーキンスあたりを容易に連想させてくれた。そのことを考えると、現在のスミンはリスナーたちの安易な連想ゲームに絡めとられない独自性を獲得したと言っていい。『Your Home』から2年で、ここまで成長したのは驚きしかない。

 そんな彼女は最新EP「XX,」でも私たちを驚かせてくれる。キャッチーさと先鋭性が共立したサウンドはさらに研ぎ澄まされ、着実に進化しているのがわかる。
 なかでも惹かれたのはオープニングの“Turnon”だ。2:03あたりで突如BPMが変わるなど、これまで以上に奔放な曲展開が繰りひろげられる。
 とはいえ、奔放だからといっていい加減なわけじゃない。必要最小限の音で起伏を作りあげたりと、アレンジは綿密に計算されている。そうした側面をふまえれば、“Turnon”は制御されたカオスとも言うべき風景を描きだすポップ・ソングだ。

 “Swim”もおもしろい。日本語が飛びだすこの曲は、母音で終わる音節がほとんどの日本語と、子音で終わる音節も多い韓国語という言語のグルーヴの違いを取りいれているように聞こえる。
 これまでも彼女は韓国語と英語を巧みに織りまぜることで、リズミカルかつダンサブルな語感による興味深い聴体験をもたらしてくれた。そのようなアプローチの発展が“Swim”に結びついたとも言えるだろう。

 全4曲の「XX,」は再生時間13分にも満たないコンパクトな作品だ。しかし、作品に詰めこまれた才気のインパクトはすさまじい。



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