Aura Safari『Aura Safari』



 ここ数年、多くの素晴らしいアーティストを輩出しているサウス・ロンドン。グライム、UKドリル、ジャズ、R&B、ロックなど、ジャンルは実にさまざまだ。

 そのなかでも、ダンス・ミュージック・シーンはもっと注目されてもいいのでは?と常々思っている。Rhythm Section Internationalや22aといったレーベルのみならず、BBZというおもしろいパーティー集団もいるからだ。
 Churchも、そのうちのひとつに入るレーベルである。これまでリリースしてきたのは、ハッパ、モール・グラブ、FYIクリスなど、テクノ/ハウス好きなら誰もが知るアーティストだ。ヒドゥン・スフィアズとオスカー・ジェロームがコラボした「Words Can't Explain」も扱ったりと、UKジャズ寄りの興味深い作品も多い。

 そんなChurchが新たに送りだした作品こそ、オーラ・サファリのデビュー・アルバム『Aura Safari』だ。オーラ・サファリは、アレッサンドロ・デレッダ、アンドリア・モレッティ、ロレンツォ・ラヴォラトーリ、ダニエレ・メローニ、ニコラス・ラマッテオによる5人組バンド。イタリアのペルージャを拠点に、メンバー全員がDJ/プロデューサーとして活躍中だ。

 本作に耳を傾けて、真っ先に入ってきたのはジャズの風だった。筆者からするとシャカタクあたりの音を連想させるもので、ジャンルでいえばフュージョンの匂いがする。甘いエレピ・サウンドでリスナーの心を舞いあがらせ、細かいハイハット捌きも光る“Sahara”は、その好例だろう。

 一方で、本作はジャズ以外の要素も際立つ。たとえば、オープニングを飾る“Music For The Smoking Room”。イントロでトロピカルなパーカッションが鳴り、そこに4つ打ちのキックとスネアを流しこむと、ハウスのグルーヴが現れる。そうした音世界に見いだせるのは、アナンダ・プロジェクトの“Cascades Of Colour”に通じる甘美さだ。とはいえ、“Cascades Of Colour”よりはBPMが遅く、よりメロディアスな側面が目立つ。そのおかげで、夕日が似合うバレアリック・サウンドとしても楽しめる。

 ラストの“Jungle Jazz”も素晴らしい。タイトル通り、曲全体としてはジャズ色が濃い音だ。しかし、ひとつひとつのパーツはさまざまな要素で彩られている。肉感的なベースはブギーそのもので、FMシンセを基調としたサウンドスケープはイタロチックないなたさを現出させる。瞼も蕩けてくる午前4時のダンスフロアで流れたら、多くのラヴァーズが口づけを交わすのではないか。そんな想像もしてしまうメロウな良曲だ。

 『Aura Safari』は、UKジャズやサウス・ロンドンのダンス・ミュージック・シーンだけでなく、Safe Tripを旗頭とするイタロ人気の波とも共振できる。そうした欲張りな本作に、多くの者たちが夢中になる日はそう遠くないだろう。


※ : 本稿執筆時点ではMVがないので、Spotifyのリンクを貼っておきます。


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