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音楽レヴュー 2

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2019年8月の記事一覧

Phoebe Green「Easy Peeler」



 マンチェスターを拠点とするフィービー・グリーンは、現在21歳のシンガーソングライター。彼女を知ったのは2016年のこと。バンドキャンプにアップされていた自主制作のアルバム『02​:​00 AM』を聴いたのだ。
 オープニングの“Nosebleed”では、プリズマイザーを駆使したヴォーカル・エフェクトが飛びだしたりと、随所でモダンな要素がうかがえる。シューゲイザーを基調としたサウンドは爽やかな

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Elliot Adamson『PiHKAL』



 イギリスのDJ/プロデューサーであるエリオット・アダムソンを知ったのは、確か3年ほど前だったか。ある日、彼のサウンドクラウドにアップされていた、リカルド・ヴィラロボス“Enfants”のリミックスを聴いたのだ。原曲よりもBPMを上げつつ、〝わーわーやや〟という掛け声の中毒性を活かしたメロディック・ハウス。太いキックとハイハットの抜き差しでグルーヴを作る、正統派のダンス・ミュージックだ。派手さ

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The 1975の“People”に見いだせるインダストリアルの文脈

 イギリスの4人組バンド、The 1975が新曲“People”を発表しました。来年リリース予定のアルバム『Notes On A Conditional Form』に収録されるそうですが、これがとてもおもしろい。
 保守主義やファシズムに抵抗する若者について歌った歌詞は、辛辣で攻撃的。アメリカのTV番組『The Late Late Show With James Corden』で、アメリカに対する

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SUMIN(수민)「OO DA DA」



 韓国のスミンがEP「OO DA DA」を発表した。まとまった作品としては、Korean Hiphop Awards 2019における〝今年のR&Bアルバム〟を受賞したデビュー・アルバム、『Your Home』以来の作品である。

 耳を傾けると、『Your Home』以上にミニマルな音像が際立ち、自らの声をより前面に出しているのがわかる。たとえば1曲目の“Shaker”は、チョップされたヴォ

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BewhY(비와이)『The Movie Star』



 韓国のラッパー、ビーワイを知ったのは2016年の“Forever”という曲がきっかけだ。滑舌の良いシャープなラップは、彼の高いスキルを雄弁に示していた。一方で、突如6/8拍子になったりと、矢継ぎ早に変化する曲展開はそこまで珍しいものじゃなかった。2013年に発表された少女時代の“I Got A Boy”など、K-POPをそれなりに追っている者からすれば、耳馴染みのある構成だからだ。とはいえ、

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ITZY(있지)「IT'z ICY」



 韓国の5人組グループITZY(イッジ)は、今年2月に発表したデビュー曲“Dalla Dalla”で、一気にスターダムへと駆けあがった。賞味期限が短い曲も多いK-POPのなかでも、“Dalla Dalla”のクオリティーは抜群だ。かすかにUKガラージの香りを醸し、ダーティーなベースが耳に残るダンサブルなトラックは、『Settle』期のディスクロージャーやルート94“My Love”を彷彿させる

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Novelist「Reload King」



 サウス・ロンドン出身のラッパー、ノヴェリストが2018年にリリースしたファースト・アルバム『Novelist Guy』は、彼にとって特異な作品だったのかもしれない。デビュー当初の無鉄砲な姿は影を潜め、ひとつひとつの言葉を噛みしめるようにラップしていた。もともと定評のあったストーリーテリング能力が際立ち、音よりも言葉が耳に残る内容だった。
 しかし彼は、マムダンスとコラボしたりと、ダンス・ミュ

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