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音楽レヴュー 2

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2018年8月の記事一覧

音楽はユニヴァーサルな言語である



 今年6月、ジョニー・マーはチャンネル4のインタヴューで、ネット上に蔓延るヘイト思想について次のように語った。

「みんなが意見を持てるようになった現在の環境における問題点のひとつは、これまで隠されていたとてもネガティヴで恐ろしい人たちにもその環境があたえられたことだ」

 マーの意見に一理あると感じる者は多いだろう。切実な言葉をネット上に残せば、それを否定しようとする醜悪な輩が大量に押し寄せ

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Moses Sumney「Black In Deep Red, 2014」



 カリフォルニア生まれのシンガー・ソングライター、モーゼス・サムニーのデビュー・アルバム『Aromanticism』は、愛することの難しさと真摯に向きあう作品だった。“Don't Bother Calling”など、他者への目線を描いた歌でさえ、他者と交わらない。交わることの大切さは身に沁みてるのに、それをすることの難しさが、作品全体を通して歌われているからだ。そこに見いだせるのは、愛を知るこ

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Theo Parrish『Thanks To Plastic』



 先月、人生という名の道を歩きはじめて、30年目の節目を迎えた。そのうち、ライターとしてさまざまなところで書いてきたのは、8年くらいである。いまでこそ音楽以外の仕事も舞いこむようになったが、ライター活動当初はダンス・ミュージックを中心に書いていた。素人時代の拙文でも書いたように(いま読むと本当に恥ずかしい。後悔はないが)、筆者は幼い頃から両親にその手の音楽を聴かされてきた。そのおかげか、現在も

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Ah Mer Ah Su『Star』



 黒人のトランスジェンダー女性であるアメラスは(表記はAh Mer Ah Suだか、そう読むらしい)、カリフォルニア州オークランドが拠点のアーティストだ。アメラスが注目されたキッカケは、2017年に発表したセカンドEP「Rebecca」だった。自身の精神病やドラッグ経験を赤裸々に歌ったこのEPには、“Meg Ryan”というアメラスの代表曲が収められている。ある白人女性と話した際に抱いた不快感

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