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#映画レビュー
映画『ユニコーン・ストア』
映画『ユニコーン・ストア』は、『ルーム』や『キャプテン・マーベル』などで知られるブリー・ラーソンの初監督作品。2017年の第42回トロント映画祭でプレミア上演されたのち、ネットフリックスが配信権を得た。その後音沙汰がなく、どうなったのか気になっていたところに今年4月から配信スタートとのことで、さっそく観てみた。
物語は、芸術家志望のキット(ブリー・ラーソン)を中心に展開される。キットは子
映画『ブラック・クランズマン』
映画『ブラック・クランズマン』は、スパイク・リー監督の心情を明確に表している。本作の舞台は1970年代半ばのコロラドスプリングスだ。同地初の黒人警官ロン(ジョン・デヴィッド・ワシントン)と白人警官フリップ(アダム・ドライヴァー)が、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)に潜入捜査する様子が描かれる。脚色を加えているが、ロン・ストールワースが2014年に発表の著書『Black Kl
極上のサスペンスという娯楽性と、現在の世界に対する興味深い批評性 〜 映画『手紙は憶えている』〜
いま、世界中から注目を集めているカナダの映画監督といえばグザヴィエ・ドランだろう。2014年の傑作『Mommy/マミー』をはじめ、これまで作ってきた作品すべてが印象的かつ衝撃的で、私たちの心を掴んで離さないエモーションも多分に込められている。そんなドランの映画に、多くの人々が夢中になるのも無理はない。
とはいえ、カナダにはもうひとり素晴らしい映画監督がいる。アトム・エゴヤンだ。エジプトで生
観客の姿勢を問う痛烈さ 〜映画『恋人たち』を観て〜
橋口亮輔の『恋人たち』を初めて観たとき、涙が止まらなかった。小粒の涙がひとつひとつゆっくり流れ、そのたびに複雑な感情が心の奥底から沸きあがる。
通り魔に妻の命を奪われた男、姑や夫との関係がうまくいっていない主婦、同性の恋人に対して威圧的に接してしまう弁護士。『恋人たち』に登場する人物たちは、何かしらの喪失を抱えている。そんな喪失から抜けだし、歩みを進めるまでの物語を、『恋人たち』は描く。