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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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#SF

映画『スパイダーヘッド』

 今年6月17日にネットフリックスで配信された『スパイダーヘッド』は、ジョージ・ソーンダーズの短編小説『Escape from Spiderhead』(2010)を原作としたSF映画だ。監督は『トロン: レガシー』(2010)や『トップガン マーヴェリック』(2022)のジョセフ・コシンスキー。出演はクリス・ヘムズワース、マイルズ・テラー、ジャーニー・スモレット=ベルなどである。

 物語はスパイ

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映画『アイ・アム・マザー』



 グラント・スピュートリ監督にとって、『アイ・アム・マザー』は長編映画デビュー作である。脚本を務めたマイケル・ロイド・グリーンも映画界の新顔で、知名度は高くない。だが、そうした2人を中心に作られた映画はとても興味深いものだ。

 舞台となるのは、シェルターに住むひとりの少女(クララ・ルガアード)を残し、人類は滅亡した世界。少女は、シェルターでドロイドのマザー(ローズ・バーン)に育てられた。マザ

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ドラマ『ブラック・ミラー』シーズン5〜「ストライキング・ヴァイパーズ」



 最初に言っておく。筆者にとって、人気ドラマシリーズ『ブラック・ミラー』のピークは、シーズン3の第4話「サン・ジュニペロ」である。脚本を務めたチャーリー・ブルッカーの背景と、それに依拠したドラマティックな理想を掲げる物語に、心を撃ち抜かれてしまった。

 もちろんシーズン4もおもしろかったし、インタラクティブ映画としてネットフリックスが配信した『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は意欲作だと

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映画『シー・ユー・イエスタデイ』



 『シー・ユー・イエスタデイ』は、CJ(エデン・ダンカン=スミス)とセバスチャン(ダンテ・クリッチロウ)という黒人の高校生が主役の映画だ。科学の才能に秀でたCJとセバスチャンはタイムトラベルを夢見ていた。そのための装置を作ることに励み、実験を繰りかえす。そうして失敗を積みかさねた末に、CJとセバスチャンはタイムトラベルに成功した。しかし不完全であるため、試行錯誤の日々に戻る。だが、そんな日々に

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身勝手な欲望に釘を刺す  〜 映画『エクス・マキナ』〜

 第88回アカデミー賞の視覚効果賞を獲得した『エクス・マキナ』が、ようやく日本でも公開されました。結論から言うと、すごく面白いです。

 物語は、IT企業で働くケイレブに、社長のネイサンがある依頼をするところから大きく動きます。その依頼とは、女性型ロボットのエヴァに搭載されたAIのチューリング・テスト(※1)をしてほしいというもの。最初は、最新鋭のロボットに触れられる機会を得て喜ぶケイレブですが、

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