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【日経クロストレンド連載企画/全文公開】第3回/“ドローン経済圏”は半径16km? 「未来の宅配」をビジネスモデル図解

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こんにちは!阿蘓です。
現在、次世代のモビリティサービスについて日経クロストレンドさんと連載企画を行っていますが、その連載記事をnoteで全文公開します!日経クロストレンドに登録している方は、もう見てくださった方もいるかもしれませんが、より多くの人に見てもらうために、自身のブログとして使っているnoteでも公開していきたいと思っています!
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“ドローン経済圏”は半径16km? 「未来の宅配」をビジネスモデル図解

「100年に1度」の変革期にあるモビリティ業界で、新たに登場した先進的なビジネスモデルを分かりやすく図解する人気連載の第3回。日本でも官民が実用化に向けた検討を進めている、無人飛行機(ドローン)を用いた宅配サービスは、物流業界にどのようなインパクトをもたらすのか。個人間の物流プラットフォームが出現する未来を含め、ビジネスモデルを徹底図解する。

ドローン配送ビジネスは、既存の物流業界のみならず、リアルの店舗網を持つ小売りチェーンやネット通販など、世界中の有力企業が実現に向けて投資を加速させているホットな市場です。

例えば、中国EC最大手のアリババ集団が2018年春に推定95億ドル(約1兆円)で買収した食品デリバリーサービス大手の「餓了麼(ウーラマ)」は、すでにドローンを使った商品配送サービスの実証実験を行っています。また、日本でも経済産業省と国土交通省が主導した官民協議会で、18年12月に「空の移動革命に向けたロードマップ(案)」を発表。2023年をめどに、ドローンや“空飛ぶクルマ”による物流、人の移動サービスを事業化する計画があります。

さらに直近の19年2月には、楽天が中国ECサイト2位の「京東商城(JD.com)」を運営している京東集団(ジンドン)と、ドローンや自動配送ロボットを使用した配送システムの構築に向けて提携しました。その他にも、米アマゾン・ドット・コムはドローンを使った宅配サービス「Prime Air(プライム・エア)」を開発していますし、時速120㎞で飛行可能なドローンで医療用血液の長距離輸送を手掛ける米国のスタートアップ、Zipline(ジップライン)も注目を集めています。

では、実際にドローンを活用したサービスの特性や、考え得る新たなビジネスモデルを分かりやすく図解していきましょう。

いきなり本文総まとめ

FUTURE~ドローンは将来~
飛行可能距離が最低10マイル(約16km)の“ドローン経済圏” を実現できれば、全く新しい物流ルートを手にすることができる
●物流ハブを経由しない「A地点−B地点」間輸送を可能にする完全自律型ドローンが誕生すれば、CtoCのシェアリングサービスがより活性化する

米ウォルマートに学ぶドローンの配送エリア

まずドローン配送ビジネスが成り立つ「ドローンの飛行距離」を理解しておきましょう。そもそも、現在のドローンが飛べるのは、どのくらいの距離かご存じですか。

日本でいうと、17年にKDDIが自律飛行でのドローンの実証実験に成功しており、その飛行距離は6.3kmを記録しました。往復で考えると、約3kmです。ひとまず荷物の重量や環境の影響を考えずに言うと、ある店舗から3km圏内に住んでいれば、店舗までわざわざ行かなくても、ドローンでの宅配サービスを利用することが理論上は可能になります。

しかし、スーパーや大型商業施設からの飛行距離が3kmとなると、商圏としてはかなり限定されているので、収益化が可能なビジネスモデルを描くことは難しいと考えられます。では、ドローンに求められる最低限の飛行距離はどのくらいでしょうか。

そのヒントは、米国のウォルマートを例に考えると見えてきます。ご存じの読者も多いでしょうが、ウォルマートはアーカンソー州に本社を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンで、米国国内だけでも100万人以上の従業員を抱えています。ちなみに、ウォルマートの18年の売上高は5000億ドル(約55兆円)を超えており、これはトヨタ自動車の2倍近くに及びます。

そんなメガチェーンのウォルマートは、米国のユーザーの居住エリアについて、興味深い調査結果を公表しています。

「米国住民の約90%がウォルマートの店舗から10マイル(約16km)圏内に住んでおり、70%は5マイル(約8km)圏内に住んでいる」

このデータを基に考えると、【図解①】のようにドローンでビジネスが成り立つ飛行距離が明らかになります。もしドローンが往復20マイル(約32km)自律飛行できれば、約2億9000万人の米国民すべてに対してドローン宅配サービスが可能になるでしょう。その半分の往復10マイル(約16km)だとしても、2億人以上の米国民をカバーできるという計算が成り立ちます。

10マイルを遠いと考えるか、近いと考えるかは、個人によって違うかもしれません。しかし、もしウォルマートがそのドローンを所有するなら、事実上、米国のほぼ全域を対象にした新しい物流ルートを手に入れ、あらゆるユーザーにリーチ可能になるということ。まさに“ドローン経済圏”です【図解②】。国土が狭い日本なら、ドローンの飛行距離が往復10マイルもあれば十分すぎるスペックだと考えられます。

ドローン配送は「スピード」が命

宅配サービスの自動化、効率化をめぐっては、ドローンだけではなく、自動運転車を使ったサービスも可能になると考えられます。例えば、連載の第2回で紹介したトヨタの次世代モビリティ「e-Palette(イーパレット)」も物流のラストワンマイルに適応が可能な無人サービスになり得ます(関連記事「トヨタ『MaaS専用車』のビジネスモデル図解 物流や飲食店が大変革」)。では、従来の宅配トラックと自動運転車のe-Palette、ドローンを比較したとき、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。下表にまとめました。

まず、ドローン輸送のメリットとして大きいのは、「物流の高速化」です。道路インフラや交通状況に影響を受けない空の経路は、理論上、目的地まで直線を引くことができ、最短ルートでの配達が可能になります。一度に運べる荷物の量は、他の輸送手段と比べて少ないのは明らかですが、ユーザー宅に個別配送をする場合、群を抜いてスピードが速いぶん、利便性の向上に直結するのではないでしょうか。

一方デメリットとしては、天候の影響を受けやすい点にあります。有人サービスの宅配トラックは、よほどの天候でない限り、自宅まで荷物を届けてくれます。しかし、空の物流ルートでは利用可能な条件が必然的に生まれ、限定的なサービスになるのは避けられないかもしれません。ドローンが飛べない場合は、e-Paletteによる宅配サービスに振り替えるなど、事業ミックスもあり得るでしょう。いずれにしろドローン輸送で有力なのは、一度に大量の荷物が発生しない個人向けのサービス展開だと考えられます。

アマゾンの生鮮宅配がドローンで急成長

アマゾンのPrime Airを例にビジネスモデルを考えてみましょう。Prime Airとは、ユーザーが注文してから30分以内で届けるという未来のドローン配送サービスです。アマゾンのドローンは、飛行距離10マイル(約16km)以上、配達重量55ポンド(約25kg)を目標に開発されています。先ほど紹介したウォルマートの調査結果と同様に、ほぼ米国全土を視野に入れてサービス展開を検討していることが分かります。

アマゾンのPrime Airを図解してみます【図解③】。アマゾンはドローン開発も倉庫管理も両方行っていますが、ビジネスモデルを分かりやすくするために、ここでは「大型店舗・倉庫」と「ドローン輸送事業者」を別のアイコンで記載しています。

アマゾンのユーザーは、ウェブサイトおよびスマートフォンで注文と配達依頼を行います。これは、通常の使い方と何ら変わりません。その後、アマゾンは受け取った情報を基に配送指示をドローン輸送事業者に送ります。ドローン輸送事業者はそれに従い、ドローンを使って注文があった商品をユーザーに届けます。このとき、従来の宅配サービスとの大きな違いは、先述したように「配送スピード」になります。

Prime Airで30分以内に配送できるなら、例えば生鮮食品の購入、朝食やいれたてコーヒーのデリバリーといった、「食」にまつわるサービスの拡張が非常にラクになりそうです。すでにアマゾンは、「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」という生鮮食品を取り寄せ可能なサービスを展開しています。19年3月現在、日本では東京、神奈川、千葉の対象エリアのみですが、将来的にPrime Airとの組み合わせが実現すれば、より広範囲にきめ細かなサービス展開が期待できるでしょう。

ドローン宅配サービスのスピードを武器に「すぐ欲しいからECサービスを使う」と価値転換に成功すれば、必然的にアマゾンの顧客エンゲージメントは上がります。プライム会員向けのサブスクリプションモデルとして、より安定的に収益を得られそうです。

メルカリでドローン配送を選べる時代に?

ここまでは、ウォルマートやアマゾンなどを念頭に、ドローンを使って1つの物流拠点から個人宅へ荷物を配送するビジネスモデルについて考えてきました。しかし、フリマアプリの「メルカリ」に代表されるように、シェアリングエコノミーが一般的になっている現在は、個人間の荷物の直接的なやりとりにドローンを活用することも、当然考えられるのではないでしょうか。その場合のビジネスモデルを【図解④】にまとめてみました。

それには、ドローン輸送のプラットフォームが必要になります。街中のさまざまなポイントに設けられた充電スポットで複数のドローンが待機しており、オーダーに応じて荷物のピックアップ、届け先への配送に飛び立つイメージです。ドローンはメンテナンスの必要がない限り、ドローン輸送事業者の下には帰らず、常に街中にいる状態です。

これを活用すると、例えばメルカリに出品した服が売れた際、そのままアプリからドローンに受け取り指示をして、購入者に届けてもらう。そんなサービスも理論上あり得るでしょう。BtoC、CtoC問わず、ECサービスの需要が高まり、物流の自動化が急務な昨今、このように半永久的に自律飛行と自律配送を可能にするドローン配送システムの実現が期待されます。ドローンが街中を飛び交う世界は、そんなに遠くないかもしれません。

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