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送りましょうか (お話)

地下通路から地上へ上がると、雨が降っていた。
傘を忘れていた。
パーカーのフードをかぶって、やや俯いて歩き出した。

雨の音が変わったので視線を上げると、頭上に傘が差し出されていた。
誰かが入れてくれたのか?と隣を見て小さく声が出た。人間の手首から先だけが傘を持って隣に浮いている。そのまま私についてくる。
驚きはしたが何故か怖いとも気味が悪いとも思わなかった。周りの人も手首に気づいた様子もなく通り過ぎていく。

アーケードに差し掛かった。屋根のあるところに入ろうとするとふっと手首と傘は消えてしまった。そのままアーケードを抜けると、雨は止んでいた。

後で調べたが、あの場所に特にいわくは無かったし、あれが何だったのかはわからなかった。傘の赤色を妙に覚えている。


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「雨が降っていた。」をお題に書いてみた話。


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