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夢が詰まった襷

人生で初めて箱根駅伝を観戦しに行った今年。

向かった藤沢、8区15km地点。

8区では、1位を走る青学の岩見が2位東海の小松に匹敵する走りを見せ、逆転を許さなかった。

遊行寺の坂に入る手前の8区15km地点。一緒に観戦に行った友人と、年末に「あまこま」を見ながらここに行こうと決めたのにはいくつか理由があった。

第96回箱根駅伝復路。1月3日、僕たちは藤沢へ向かった。

8区15km地点へ向かった理由の1つは、駅から近いこと(藤沢駅から徒歩10分)。当然ながら公共交通機関を駆使して観戦をするのが定石の箱根駅伝。観戦ポイントまで行きやすいことも去ることながら、次の観戦ポイントに向かう時にすぐに電車に乗れるよう駅から近いに越したことはない。せっかく箱根を現地観戦するなら、複数のポイントをハシゴしたいよねという意見はお互い一緒だった。

2つ目の理由は、監督(運営管理車)からの声かけポイントであること。駒澤の大八木監督の「男だろ!」や東洋の酒井監督、青学の原監督の言葉が注目されるあれ。1年前のnoteにはこう書いている。青学の原監督が10区鈴木(95回箱根駅伝)にラスト1kmで“勝っても負けてもお前たちはお前たちだ。これが青学。最後は笑顔でゴールしよう。”と声をかけた、と。心にくる言葉もある一方で、前提として、声かけポイントは監督が選手に前後とのタイム差や選手へ戦略をどう考えているか伝える場である。8区後半ともなれば箱根駅伝も佳境を迎え、総合順位にも影響する。このチームはどこを目指すのか、残り2区間を含めてどう戦うのかを伺えるポイントがここ8区15km地点だった。

最後の理由は、給水ポイントであること。なぜ給水が大事?と思われるかもしれないが、給水をするスタッフには意外と有名な方も多い。過去の箱根駅伝では、大迫傑に同期でロンドン五輪代表になった投擲選手が給水したり、東海大が箱根に出れなかった年に学連選抜で出走した早川翼に東海大エースの村澤明伸が給s……おっとこのままnoteが給水の話題で終わりそうなのでここら辺にしておく。ただ、去年でいえばここ8区15km地点で東海の三上嵩斗が小松陽平に給水し、その後小松は区間新を出したことから「三上水」と呼ばれるようになった。(今年の8区15kmは東洋大から競歩五輪代表になった川野選手や駒澤大OBのM高史さんらが給水を務めた)

以上が、僕たちが8区15km地点へと向かった理由であるが、これは序章である。ここまで900字を使っているが…。

最後にやってきた襷には希望が詰まっていた

青学と東海、さらには國學院、シード権ギリギリの位置を走っていた11年連続3位の東洋など上位チームの選手たちに感動を覚えた我々。

その一方で、僕は優勝やシード権争いとは全く違う観点で感動したシーンがあった。

それは、最後にやってきた筑波大の姿を観たときだ。

筑波大は、昨年10月の予選会で6位に入り26年ぶりの本選出場を決めた。私立大学が多額の強化費をかけ、強豪校と呼ばれる高校から有望な選手をリクルーティングし、多数のスタッフで育成をしていく現代の箱根駅伝において国立大学が出場するというのはとんでもなく凄いことである。

最近でいえば、関東学生連合に東大の近藤(現GMOアスリーツ)や、今回はその後輩の阿部が出走して話題になったが、国公立大学から箱根駅伝に出るというのは学生連合に入るのでさえ大変なのに、ハーフマラソンの距離をキロ3分弱で走る選手を10人以上揃えなければならないとなれば途方もなく大変なことである。

話を戻して、筑波大が箱根駅伝出場を目標にして強化費を募るために使ったのは“クラウドファンディング”だった。プロジェクトを実現したい人がインターネットを通じて、多くの人から少額ずつを寄付してもらう仕組みのクラウドファンディング。

筑波大が利用したプラットフォームは日本初のクラウドファンディングサービスであるREADYFORだった。

僕も高校3年、大学1年とプロジェクトの実現のためにREADYFORを利用して資金を募ったことがある(気になる人は検索して見てほしいw)。

もともと、東日本大震災直後に立ち上げられたサービスでもあり、ソーシャルビジネス界隈では有名だったが、筑波大駅伝部がクラウドファンディングを始めた時は「ついにここまで浸透してきたのか!」と驚いたのを覚えている。

そんは話はさておき、多くの人たちの想いを背負って「箱根駅伝」という大舞台への出場を決めた彼ら。その襷には10人やチームメンバーだけではない、多くの人の想いが篭っていたと思う。

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藤沢、8区15km過ぎで坂の下から最後にやってきた筑波大の選手の足取りを見て感動した。順位としては一番下かもしれないが、160km以上もの距離をそれぞれの身一つで襷を繋いできた。

そして、これからも残された2区間の選手のために、彼は走っていく。

坂の下から徐々に大きくなってくるその姿を見ていると、そのことに感動を覚えてしまった。

5強の戦国駅伝、区間新続出の超高速レース、厚底シューズの影響……。様々なことが語られた今年の箱根駅伝だったが、その視点とは違う軸で自分には忘れられないシーンとなった。

三浦しをんの小説「風が強く吹いている」では、マネージャー役を買って出た葉菜子が「どうか、負けないで。」と願うシーンがある。予選会だったか、本線だったか定かではないが、その願いが願ったと同時に自分のチームに対するものなのか、他のチームに対するものなのか、はたまた留学生対日本人という構図なのか、葉菜子自身がどこに願っているのかと自問自答する。

筑波大に対して、思っていたことはまさにその境地だった。

「負けないで」の意味するところは、決して結果を追い求めているわけでもない。シード権を取ってほしいわけでもない。どうか、どうか走り続けてほしい。

そんな純粋な想いを目の前を走りすぎ、坂の下に小さくなっていく背中に願っていた。

順位や結果とはまた違った、ストーリーという彼ら自身が紡いできたものに対して感動した1シーンだった。今回の箱根駅伝、フューチャーブルーのユニフォームと箱根路に揺れた黄色の襷は確実に多くの人の想いを乗せた”希望”だった。

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