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自分が一番だと思ってた僕がもっと周りを意識しようと思った本

読んだのは3年ぶりだった。この本を再び読もうと思い立った訳はある友人の一言。

「木幡くんって、見返りを求めずにGIVEしてばっかりなところが面白いよね。」

自分が見返りを求めずに与えてられている意識もなかったので「そうかな?」と思ったのが正直なところだったけど、一つそういった行動・思考に変えようときっかけはある。

それがこの『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』だった。

初めて読んだのは2017年夏、知り合いのNPO代表から「木幡にオススメの本がある」と渡されたのがこの本だった。掻い摘んで話すと、世の中には3種類の人間がいるという。

1. テイカー(自分の利益を優先する人)
2. マッチャー(損得を考えて、ギブとテイクを使い分ける人)
3. ギバー(人に惜しみなく与える人)

世の中の大半は真ん中のマッチャーがほとんどで、自分に利益をもたらしそうな事案や人であれば与える損得勘定をしながら生きているという。そして、この3種類の人間のうち最も成果を上げるのはギバーなのだとか。

3年前、この本を読んだとき僕は「なんで???」と思った。自分が受け取るよりも惜しみなく与える方がなぜ成果を上げられるのだろうか。

この頃、僕は他人よりも自分が一番だった。他人に興味がある振りをして、実際のところは他人にあまり興味がなかった。相手を喜ばせたい、相手にとって必要なことは何かと思うよりも自分が称賛されることや評価の方が気になっていた。

GIVE & TAKEの第1章にはある起業家と投資家のエピソードが載っている。2度の成功を収めてきた起業家のシェーダーとベンチャーキャピタリストのホーニック。シェーダーはある時、新事業の立ち上げで投資を受けるためにホーニックに話を持ちかける。事業のアイデアを聞いたホーニックはとても気に入り、(本来であれば一刻も早く自分から投資を受けると決断させて)なんとしてもシェーダーの会社に出資したかったが、無理に返答の期限を設けなかった。

それは、ほかの投資家に売り込んでみてはどうかとすすめているも同然だった。(『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』p.24)

と、この本には書いている。3年前僕が読んだ時、自分がこの立場だったら、自分と組むことのメリットを説得して相手が自分に向くようにゴリ押しするだろうなあと思った。しかし、ホーニックは(最終的に自分と契約してくれることを望んでいたが、)シェーダーが他の投資家とも検討した上で最前の決断を下せるようにとチャンスを与えた。

数週間後、ホーニックの電話がなった。シェーダーがかけてきたのだ。
「申し訳ないんだが」とシェーダーはいった。「別の投資家と契約することにしたんだ」
ホーニックとその投資家の契約条件はほぼ同じだったので、彼のほうがリストの分だけ有利なはずだった。照会先の人々と話をしたあと、シェーダーにはホーニックが素晴らしい人物であることがはっきりとわかった。しかしまさにその寛大さが、あだとなったのである。シェーダーは、ホーニックが背中を押してくれるばかりで、時には耳の痛いアドバイスをして自分を発奮させてくれることがないのでは…と心配になった。(『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』p.25)

結果からいうと、起業家のシェーダーはホーニックに断りを入れたことを気にしていて、最終的にはじめに契約した投資家とホーニックの両方からの投資を受けるように申し入れた。そして、ホーニックは取締役会に出席するようになるとホーニックはシェーダーに檄を飛ばして、常に新しい方向に目を向けさせたという。

「彼の別の面を知ることになったよ」とシェーダーはいう。「あの愛想のいい顔の下に隠れていて、それまで見えていなかったんだ」(『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』p.33)

頭では分かっていても、実際にこんなにも寛大な行動をできるだろうか。そして、常に相手の利益に目を向けて、相手のためになるように選択肢を提示したり、寄り添うことができるだろうか。

僕が自分の行動を顧みるようになったのは、確実にこの本を読んだことがきっかけだった。これから変わった行動といえば、2つある。

①相手を思って贈り物をしてみる
②自分が目立つのではなく、チームのためにどのポジションが最適か考える

この本を読んでから最初にするようになったことは友人に贈りものをするようになったことだと思う。前にどこかで「相手のためになる」ことの最小単位は誕生日プレゼントを贈ったり、祝ったりすることというのをみてやってみた。それまでごく普通の友人を祝うのは気恥ずかしさもあったが、相手の好きなものを聞いたり、こんなことを言ってたな…と想像しながら買い、贈った。

実際にやってみると相手に喜ばれるし、自分以外の人を見ることってこんなにも嬉しい時間なんだな…と実感した。いきなり大きなことで他人のためになるのは難しいかもしれないけど、小さなことからはじめてみると案外できる。また、最近だと頻繁にではないけど、友人に手紙を贈るときもある。

②のチームにとっての最適なポジションという部分でいうと、以前は目立ってリーダーになりたかった。でも、いつからか他人に貢献できる場所はそこではないんだな…と思うようになった。

5月に読んだ「自分を捨てる仕事術」でも著者の石井朋彦さんが書いていたけど、「自分以外のことを考えている人生は、本当に豊かである。」(「自分を捨てる仕事術」p.271)と本心から思う。これはあくまで自分に対する意識でしかないけど“自分が自分が”となるよりも、他人のことを考えて生きている方が楽しい気がする。

シンプルに考えると報酬というものが誰かの困りごとを解決することに対する対価であるとすれば分かるはずのことだけど、3年前の自分には分からなかった。「自分のやりたいこと」を探すことが全盛の時代、僕はこんなにもシンプルなことに気づけず「何者かになること」だけに目が眩んでいた。

ちなみに、僕がGIVE & TAKEを再読しはじめた時期、エアアドバイザーの西原さんが奇遇にも「Giverであれ」というnoteを公開している。そのなかには、陸上『雑談』専門チャンネル“Track Town JPN”でも話題に上っていたエース栗原さんの話が書いてある(僕は直接話したことはありませんが、抜粋した部分がアスリートに限らずそうなのでは?と思ったので読んでほしい)。

僕は星翔太さんが「アスリートは自分がやりたいことをやりがち。人のために行動するという考えはあまりない」と話してくれたのが、強烈に印象に残っています。だからこそ、栗原さんの取り組みを20代のアスリートに知ってもらいたい。そう考えました。(Giverであれ|西原さんのnoteより抜粋)

自分の行動変容のきっかけとなったこの本だが、再読した今回、また新たな気づきがあった。それは「質問力がまだまだ足りていない」という反省と「自己犠牲型にならない」ということ。

僕がいう質問力というのは、与えることに執着しすぎて本当に相手の欲しているものを洞察できているのかということだ。自分も喋りたがりなのでついつい自分の意見を言ってしまったり、喋りっぱなしというケースがあるけど、もっと相手の思っていることに興味を持って質問してみるということを実践していきたい。

それが相手の真意を洞察して、助けるということだと思うので。

また、自己犠牲型にならないというのは、ギバーには「他者志向型」と「自己犠牲型」の2種類があって、他者志向型になると生産性が高くなるのだが、自己犠牲型になると逆に生産性が低くなってしまう。どうしても、人から頼まれたことを鵜呑みにしてやることで潰れてしまう傾向がある。また、自分の利益を要求する時に怖くて相手に言えないということがしばしばある。

その点、GIVE & TAKEによると、自己実現や目標に対するアンケートを行ったところ他者志向型のギバーが利他的で相手のためになりたいと思うスコアが高いのはもちろんのこと、自分の利己的な部分の願いに対するスコアも高かったのだという。

そういう意味では相手へ贈るだけではなく、その意識するところが自分の目標に重なっているかという意識も大事にしたい。自分がやって楽しいこと、得意なことに対する解像度を改めて高めていきたいと思わせられた。


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