見出し画像

過去に戻れる日が来たら、迷わず僕は今日を選ぶだろう。


もしも、もう一度人生をやり直せたとして、の話。

_________________________________________________________________________________
1985年5月
同じ両親のもとに生まれた僕は、
中学三年生になり、近いからという理由だけで高校を選ぶだろうし、
大切な友人を亡くした翌日に、教室で隣の席の子の手首に傷を見つけて「ねえ、それ流行ってるの?」と聴くだろうし、
学園祭のステージへ足を運び先輩のバンドを見てロックバンドに憧れるだろうし、
そこで出会った仲間たちとバンドを組むだろうし、
根拠のない自信で就職活動するメンバーと決別してデビューすると思うし、
25歳でミュージシャンを辞めるからと両親に嘘をついて楽器を持って家を出るだろうし、
大きな病気をした時に、母の涙に反抗期を終わらせるだろうし、
その日自分が全く声が出ないとわかっていてもステージの上に立つだろうし、
トラブルに巻き込まれて人に迷惑もかけるだろうし、
友人のバンドのサポートにメンバーの背中を押すと思うし、
同じように人を好きになって、同じようにフラれるだろうし、
同じように人を信じるのだと思う。

画像5

_________________________________________________________________________________
2020年8月
こんなご時世でも、
あいにく僕は”今”が一番愛おしいし、”今”が一番調子がいい。
そして、今が一番イライラしてもいるし、メラメラもしている。
あの時の選択全てが今に繋がっているのならば、
"I Don't Need a Time Machine"
タイムマシンなんていらないのである。
自分の曲のタイトルでもあり、そして8月のライブのタイトルでもある。

違う、これは前田の敦子さんだ。
作詞の秋元康さんは高校大学の先輩だ。でもand yetは2009年な(一応)。
MVの無い曲なので代わりに貼っておく。伝えたいことは一緒だ(多分)。


_________________________________________________________________________________
2020年4月 非常事態宣言
結果的にツアーも”延期”ではなく”中止”せざるを得なくなったし、
この人と次は、こんな曲を合わせてみよう、とか、
一緒に曲作りをしてみよう、とか、
それは、丁度ここから最終的にステージを共にする人を絞り込んでいく、というタイミングで起きた出来事だった。
こればっかりはリモートワークで決められるものでは無いと思った。
俗に言う無理ゲーというやつである。

ただ、5月の母の日を終えるまでに新しい体制を整えることを、自分たちで最も遅いタイムリミットにしていたし、どこかで決断をしなければならなかった。
そんな僕らの最も運が良かったところは、
外出制限が出される直前、最後に駆け込むようにBisとスタジオに入った、ということに尽きる。
結果的にサポートドラムはBucket Banquet Bis(バケット・バンケット・ビス)にお願いすることにした。
少々無表情な彼だけれど。とても硬派なドラムを叩く。
僕自身、自分がデビュー曲で作ったキャラクターとどこかで重って見えてくるところもある。初めて見た時、めっちゃヤバい奴来たなと思ったけど。

画像6


後に本人に理由を訊かれて適当に顔で選んだとか言って誤魔化そうと思ったけど、
最終的な決め手は熱意だったように思う。
彼が他の人より沢山BIGMAMAの曲を覚えてきてくれたり、
そうでない曲でも、その場で凄いスピードで再現してくれたのが強く印象に残っていて、なんか魔法みたいだなと思った。(というか、みんな違って、みんな良い!みたいに、それぞれ素晴らしくて技術的なところでは選べなかった説もちょっとある。)
同じ曲でも、違う人間(人間?Bisは人間なのか?)が叩けば、
今までの曲が違った聴こえ方をすることもあるかもしれないが、僕からしたら違和感なんてものは特にないし、前の方が良かったな、なんて思われたとしたら、
それは単に僕が劣化しているだけだなとも思う。



_________________________________________________________________________________
2020年5月
体制を整え、さあライブをという話になった時に、延期、と約束したRoclassick tourのファイナルは?という話にもなった。

画像6


そのライブに関しては、
またライブハウスが元に戻った時に、万が一元には戻らなくとも、出来るだけその場所に居合わせたい人が集まれるような、願いが叶う形でないと、ということを皆で話したと思う。いつかその時がきて、僕らがやろう、と言って、彼がやろう、と乗ってくれば、の話。
それが半年後なのか、100年後なのか、こればっかりはもう僕にもわからないけれど、言ってることとやってることが違う人はかっこ悪いし、約束を守らない大人にはなりたくないよね、と僕は思う。


_________________________________________________________________________________
2020年 1月
新しいドラマーを探さねばならない。
昨年末のもろもろ発表後、まだ心のどこかで冗談であってくれないかなんて思っていたが、現実はいつだって超リアルだ。
バンドに関わる物事の基本は信頼で成り立っていて、(お金と言う考えもあるんだろうけれど)、それをもう一度、0から構築しなければならない時間は、ただ単に骨が折れるだけでなくて、人の優しさがとても骨に染みる時間でもあった。
一から出直すつもりの僕らに手を差し伸べ、救ってくれたのは、紛れもなく、バンドマン達だった(あと現場マネージャー)。
当時ツアーの準備や、リハーサルの合間を縫って、
色々なドラマーを紹介し、引き合わせてくれたり、自ら名乗り出てくれたり、
ここに辿り着くまでの過程で、幾多のドラマーがBIGMAMAの曲を練習してきてくれた。
彼らと重ねたリハーサルの時間は、他の何にも変えがたい時間で、
僕らに勇気と、新しい物語を与えてくれるものだった。
名前を出したらキリがないのだけれど、改めて周りのバンドマンたちに感謝の気持ちと、リスペクトを。



________________________________________________________________________________
2020年 7月

観客を入れてライブをするのか、無観客でライブをするか、ギリギリまで判断を待たせてもらうことになっていた。曲が終わった後の拍手、歓声、自分の心を込めて書いた歌詞を一緒に歌ってくれること、なんてことない適当なヤジ、それらのないライブはどうしたって寂しい。
そして、それがプライベートでも、仕事としてでも、自分たちのライブを必要としてくれている人がいることも承知している。
ただ、最終的にはシンプルに、ライブに来てくれる皆が、自分の家族や恋人や友人だと置き換えて考えた時に、今、いってらっしゃい、ようこそ、と心から言えるのか、そんなことを自問自答して考える。

正直言って配信ライブが苦手だ(見るのが)。
どうしても途中で飽きてしまって、最後まで見ていられないのがオチだったりする。(それは僕の性格の問題です。)
ただ、そんな自分がその画面の中に身を置くのならば、
たった一回に全部を出し切る覚悟くらいで準備すべきだなと思っているし、
だったら飽きさせない工夫を考えなさいな、という話だし、
考えたからそれは大丈夫。きっと。と言うわけで、今回は配信ライブ。
詳しいチケットの話はオフィシャルHPをチェックして頂けると。

画像5

________________________________________________________________________________
2009年 7月

荻窪のスタジオで、レコーディングの休憩時間だったと思う。当時周りのスタッフが結婚ホヤホヤで、その話を聴いていた時だ。
「嫁の寝相が悪すぎて、ソファーで寝てるんだよね。」
何だよ惚気話かよ、と思いながら、僕はその時書いていた曲の歌詞にそのフレーズをそのまま採用させた。僕の周りにいる人は気をつけた方がいい、すぐ歌詞にされるから。(印税はあげないけど、何かしら奢るので許して。)

幸せのピークみたいな結婚式を見て、2人の表情を見て、こんな日々がずっと続いていって欲しいし、もっともっと素敵な日々を記録更新して欲しいと願いを込めた。

過去に戻れる日が来たら迷わず僕は今日を選ぶだろう
but I don't need a time machine.
折角だけどいらないよ
それは君となら迷わぬ”今日”を毎日繰り返す気がするからさ
気がする?いや 出来るはず

気づけば、その歌詞はいつのまにか、自分を自分たらしめる信条にもなって、我が物顔で当たり前のように、心のわりと、そのど真ん中にある。



画像7


_________________________________________________________________________________
それでは2020年8月21日「We Don't Need a Time Machine 2020」、空けといてください、お楽しみに。
自分の人生が、バンドの人生が、1つの物語だとして、続けることを選ぶからには、つまらないものを用意する気は更々ないし、これまで以上のことが成し遂げられる条件は、揃ったように思う。あとは自分次第。
1人でも多く、僕らの物語にお付き合い頂きたく思います。
時に力を貸してください、それ以上のものをお返ししますので。
改めて、よろしくお願いいたします。

画像2


これは半目。

画像1

BIGMAMA  金井政人





褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。