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営業とは顧客とのコミュニケーション、いかに関係を構築できるか

2019年4月に㈱食農夢創を設立して起業した私の強みの一つが「顧客との関係構築力」だと考えている。その原点は野村證券の営業時代にある。どのように顧客との関係を構築してきたのか。今回は営業スキルのうち「顧客との関係構築」について自分の経験を元に自由に述べてみたい。

営業力=いかにお客様の懐に入り込めるか

野村證券のノルマが厳しいということはこれまでさんざん述べてきた。そのノルマを達成するためには取引をしてもらわなければならない。しかし、考えてみて欲しい。自分から購入したい商品があって証券会社に行く人は別として、みずしらずのセールスから勧められた商品をいきなり購入するお客様はそうはいないだろう。

ではどのようにして取引に繋げるのか。証券会社では自分が担当するお客様がいる。それは自分で口座を開けていただいたお客様は前任者から引き継いだお客様など様々である。そのお客様といかに信頼関係を構築できるか(それを「懐に入り込む」という)というのがポイントになる。

得意先ほどいつでも連絡を取れるようにしておく

株式は毎日価格が変動する。前場(午前)は9時から、後場(午後)は12時30分から取引が開始され、変動が激しい銘柄は一分一秒が命取りになることもある。そのため、株式売買を行うお客様とはいつでも連絡を取れるようにしておかなければならない。

私は株式がメインのお客様には9時から9時30分の間に毎日連絡を取っていた。そうすると、連絡を忘れたり、来客や外交で連絡ができないとお客様から「今日は連絡がないな。相場はどうや?」と電話をいただくようにもなる。日々の連絡をルーティーン化することができれば、お客様も担当者と連絡を取るのが当たり前という形に持っていくことができる。

また、「今は携帯電話があるからいつでも取れる」と思う人がいるかもしれないが、お客様が経営者であれば会議や商談等で電話が出られない場合も多い。そのため社長の行動を把握しておくことが重要である。
特に時間外取引など時間が決められているような場合は、「今日は〇時に連絡するので、出れるようにしてください!」と伝えていた。

取引以外にもこまめに連絡を取る

セールスによくありがちなのが商品案内の時しか連絡をしないということである。それが続くとお客様は「ああ、また何かの営業だ。」と電話に出なくなってしまうことがある。そのため取引以外にも連絡をすることも大切である。「何を連絡すればいいの?」と思う人もいるだろう。まずお客様が興味があるのは新しい商品ではなく自分の保有している商品ではないだろうか。

例えば個別の株式を持っていれば、決算が出れば連絡をし、決算が良かったのか悪かったのか、配当がどうなったのかは知りたいところだろう。また、海外の株や投資信託であれば自分から調べる人は少ないので、どのように動いているかを連絡してあげるだけでもお客様は安心する。その時に大事なことは「まだ持ち続けた方が良いのか、そろそろ売却した方が良いのか」をきちんを伝えておくことである。そうすればいざ売却してもらう時もスムーズに取引に繋がることが多い。

お客様が経営者や会社役員の場合は、新聞やニュースにその企業が載れば、その日の朝にお客様に連絡して「新聞に載ってましたね!」と伝えると「よく見つけたね!」と言われることもある。(この手法は今でも使っている)また、お客様の業界のアナリストレポートが出た場合なども連絡して郵送をすることも効果的である。

関係が良ければ食わず嫌いも治せる!

もう一つ、セールスにありがちなのが「自分は株式しかやならない」「安全な債権しかやらない」というお客様に対しては他の商品を案内しない担当者が多すぎる。もちろん「お客様の意向」も大事であるが、先入観で「株は危ない」など食わず嫌いの場合も多い。

私 :「インド株式の投資信託があるのですが・・・」
顧客:「インド株は興味あるが、投資信託は手数料が高い。」
私 :「個別の株式ではリスクが高すぎるので投資信託なんです!」
   「個別にルピー建ての株を買う方が手数料がかかりますよ!」

上記のように、投資信託の仕組みや為替等も含めた総合的なメリット、デメリットを説明すると、お客様は買ってくれる場合もある。
「債権はやらない」という人は「その会社が潰れたら返ってこない。」という理由が多い。なら、その会社が潰れないという理由を徹底的に探して、「定期預金にするのであればこちらの方が金利が高いです」と説得できれば新しい資産の導入にも繋がる。

しかし、これも顧客との関係が良くなければ話を聞いてもらえすらしない。顧客との関係を構築し、信頼を獲得することができれば様々な相談をしてもらえるようになる。

断れるのも関係構築には必要!

前段で、営業電話ばかりしがちと書いたが、勘違いして欲しくないのは、商品案内をしてはいけないということではない。商品案内はむしろ絶好の関係構築のチャンスである。

例えば、勝手欲しい株式や投資信託があった場合、私は興味がありそう・なさそう関係なく自分の担当するお客様に幅広く案内した。当然、買ってもらえないことが多い。しかし、ポイントはその後の行動である。案内した商品の価格が上昇した場合は、購入したお客様にはもちろん連絡はするが、案内をしたが購入しなかったお客様にも連絡をすること。

私 :「この間案内した〇〇なんですが、今上がってるんですよ」
顧客:「へ~、そうなんだ。」
私 :「〇〇の魅力を伝えきれず申し訳ございません💦」
   「また〇〇のような商品があればご案内するので買ってください!」

これはかなり効果があった。この文面を読んで嫌みっぽく受け取られるかもしれないが、間違ってはいけないのが商品を購入しなかったのはお客様のせいではなく「自分が魅力を伝えられなかったから」。いきなり、株や投資信託などのリスク商品をいきなりお客様が購入してくれる可能性は低い。そのためにも自分と付き合えばメリットがあると思わせたら勝ちである。

もう一つ大事なのは、断られることも営業だということである。決まった商品しか案内しないと、気づいたら数か月連絡していない場合もある。お客様から「久しぶりだね~」と言われたらそれこそ嫌みを言われてると思った方がよい。日が経てば経つほど連絡がしにくくなるのが人間である。常にお客様との連絡を取っておくためにも「断られる」ことも重要なのである。

最後は自分がお客様を「好き」なれるか

いかがだっただろうか。おそらく、少し営業が得意な人が読めば「当たり前」のことしか書いていないように思うかもしれない。しかし、野村證券でも「当たり前」のことや自分なりの「ちょっとした工夫」をしていないセールスが多かったので、自分なりのやり方を見つけることができれば差をつけられると思う。

最後に顧客との「関係構築」に最も必要なのは、自分自身がお客様を好きになれるかだと私は考えている。営業では嫌いなお客様とも取引をしなければならない場合がある。しかし、ノルマのためとは言っても嫌いな人のためには本気で考えたくないはないだろう。

逆に好きな人、尊敬できる人のためには「何でもしてあげたい」と思うのも人間ではないだろうか。そして、お客様も担当者から好かれて嫌な気分になる人は少ないと思う。詰まるところ、「相手を好きになれる」力は営業にとっての資質の一つであり、顧客との関係構築にも大いに役立つ。

これまでに述べてきたテクニックは、セールスとしてのみならずコンサルタントとしても役に立ったし、今でも活用していることも多い。是非、少しでも皆さんの顧客との関係構築力に一助になれば幸いである。

「農林漁業を夢のある食産業へ創造する」というミッションを実現するために活動を続けております!何卒よろしくお願い申し上げますm(_ _)m