新規事業アイデアの見つけ方~良いアイデアとは?~
・新規事業のアイデアの見つけ方が分からない
・どんなアイデアが良いアイデアなのか分からない
上記の新規事業に関するお悩みを抱えている方、必見です。
目次
1. 良いアイデアとは?
2. 良いアイデアの見つけ方
3. まとめ
1. 良いアイデアとは?
良いアイデアの見つけ方を説明する前に、そもそも良いアイデアとは何か。
それは、「深い課題」と「独自の解決策」のセットのことだ。
【ポイント】
良いアイデア = 深い課題 + 独自の解決策
どちらか一方だけではダメだ。良いアイデアを見つけるためには、「深い課題」と「独自の解決策」の両方を見つける必要がある。
また、見つける順番も重要だ。
必ず「課題→解決策」という順番で行う必要がある。なぜなら、「解決策→課題」という順序では、深い課題を見つけることは不可能だからだ。
ヤフーのCSO(最高戦略責任者)である安宅さんの名著「イシューからはじめよ」にも、課題の設定が全てであり、質の低いダメな課題を設定してしまうと、いくらソリューションの質を高めても、良いアイデアにたどり着くことはできないと書かれている。
多くの大企業の新規事業担当者は「課題→解決策」という順番を守れていない。それにより、「課題を見つける」という作業をないがしろにしてしまっている。
企業の新規事業担当者の相談に乗ることも多いが、彼らの多くは「顧客が本当に困っている課題とは何か?」を0ベースで考えることはしておらず、顧客の課題そっちのけで、次のようなことばかり考えている。
【新規事業担当者の頭の中】
「ところでそれって儲かるの?」
「自社サービスを使って何かできないか」
「3年で100億儲かるサービスって何だろう」
「うちの技術があれば、Aという市場へ参入できるのではないか」
企業にいるとこのような思考になってしまうのだろう。課題ありきではなく、解決策ありき、技術ありき、製品ありきになってしまっており、良い解決策が良いアイデアだと勘違いしている。彼らにとって顧客の課題は後付けなのだ。
良いアイデアを見つけるために最も重要なのは、顧客が本当に困っている課題を見つけることだ。非常にシンプルなのだが、これが意外と盲点であり、実際にできている人は少ない。
Googleが販売したGoogle GLASSはまさに、顧客のの課題を深堀せずに、作りたいものにプロダクトを作ってしまった例だ。
Google GLASSはグーグルが2013年に発売した眼鏡型のコンピューターだ。
Google GLASSをかけることで両手が空くため、作業の効率化が図れるというものだが、顧客が求めているものではなかった。
世界的企業ですら解決策ありきで市場を新たに作っていくことはできないのだ。
なぜ「解決策ありき、技術ありき、製品ありき」ではダメなのかをまだ理解できていない人のために具体例を一つ紹介する。
【前提】
・あなたは大手釣り竿メーカーの新規事業担当者
・顧客ターゲット:漁師
あなたは「年々漁獲量が減っており、漁師が困っている」、「漁師の高齢化が進んでいる」というニュースを目にしたとする。釣り竿メーカーの新規事業担当者であるあなたはこう考えてしまうだろう。
「もっとよく釣れる高性能な釣り竿を作ってあげないと」
「若者に人気の出るオシャレな釣り竿を作ったらどうか」
お気づきだろうか。
あなたは無意識的に顧客の課題を捻じ曲げ、自分の都合の良い課題にすり替えている。
【あなたの考える課題】
・釣り竿の性能が悪い
・釣り竿のデザインがオシャレじゃない
本来であれば、上記のようなアイデアは社内で却下されるべきだが、
皮肉なことに、現事業の延長上にあるアイデアであるため、社内承認も取りやすい。だから多くの新規事業は失敗に終わるのだ。
顧客はオシャレな釣り竿や高性能な釣り竿を求めていない。顧客が本当に困っている課題はそれじゃない。
勿論、オシャレじゃないものよりはオシャレなもののほうが良いし、性能の悪いものよりは、高性能なもののほうが良いだろう。しかし、そんな発想では、顧客が心から熱狂的に欲するサービス・製品を作ることはできない。
顧客が抱える深い課題を見つけることでしか、新規事業は成功しない。課題にフォーカスする必要があるのだ。
では、深い課題、すなわち、顧客が本当に困っている課題というのは、どのようにすれば見つかるのだろうか。
次はその方法について解説する。
2. 良いアイデアの見つけ方
上で説明したとおり、良いアイデアを見つけるためには、深い課題を見つけ、それに最適な独自の解決策を見つける必要がある。
その最初のステップとして重要なのは、「深い課題を見つけること」であり、その方法は次の2つだ。
【深い課題を見つける方法】
(1) 「高い専門性」、「現場への理解」、「市場変化への理解」を高め、気づくことのできる課題の範囲・質を高める
(2)過去のネガティブ辛い原体験を思いだし、世の中にどのようなサービス・製品があったら辛い思いをしなくてすんだかを考えてみる
(1)「高い専門性」、「現場への理解」、「市場変化への理解」を高め、気づくことのできる課題の質を高める
上の漁師の例を思い出してほしい。
仮に、漁獲量の減少が漁師の高齢化によるもので、その高齢化の原因が「漁船の価格が高いこと」だったらどうだろうか。
「漁船?」
おそらくこう思ったのではないだろうか。あくまでも例なのだが、若者が漁師になるためには漁船を新規で購入しないといけないが、この漁船がものすごく高くて借金をしないと買えない。これが若者が漁業を始めるにあたり最も大きなハードルになっていたとしたら。
つまり、課題は「漁船の価格が高いこと」なのだ。
考えるべきポイントは、釣り竿メーカーのあなたは、どうすれば「漁船の価格が高い」という若者が抱える課題を、見つけることができたのだろうかという点だ。
ユーザーインタビューをすればよいと思うかもしれないが、実際、本当に深い課題というのは、ユーザー自身も気づいていない課題である場合が多い。
漁師の例でいうと、あくまでも推測だが、漁師はおそらく漁船を高いと思っていない。正確にはその費用を削減しようなんて考えたこともない。「単に漁師の収入は低い」という印象を持っているだけだ。
つまり、インタビューをしても「漁師は収入が低いから生活できない」という回答が返ってくる可能性が高い。
とにもかくにも「高い専門性」、「現場への理解」、「市場変化への理解」の3つを高めることでしか顧客の深い課題を見つけることはできない。
例えば、下記の情報が入手できたとしたらどうだろうか。「漁船の価格が高いこと」が課題なのではないかという仮説を立てることができるのではないだろうか。
・漁師を収入を上げることは、今後の漁業の将来を考えても現実的ではない(出費を抑えるしかなさそうだ)
・ヒアリングの結果、漁船のローン支払いが毎月の家計を圧迫していることに気づく(漁師はそれを当たり前だと思っている)
以上より。外から眺めているだけでは見つけられなかった顧客自身も気づいていないような深い課題を、専門性を高め、現場や業界動向を理解することで見つけることができるかが、勝負の分かれ目になる。
(2)過去のネガティブ辛い原体験を思いだし、世の中にどのようなサービス・製品があったら辛い思いをしなくてすんだかを考えてみる
あなたにも幼いころにネガティブな辛い経験をしたことはあるだろう。
トラウマとなるような辛い経験は思い出すのもつらいかもしれないが、満たされない負の感情は、人の大きな原動力となる。
つまり、あなた自身の経験から、事業アイデアの種が生まれる可能性があるのだ。その際のポイントは、世の中にどんなサービス・製品があったら、辛い思いをしなくてすんだのだろうかという視点で考えることだ。
この方法のメリットは次の通りだ。
【この方法のメリット】
①顧客の深い課題を見つけることができる
②自分ごとなので本気になれる
①顧客の深い課題を見つけることができる
上で書いたように、顧客の抱える深い課題を見つけることはとても大変だが、「顧客=自分」となると話は別だ。
自分が過去苦しんできた課題なのだから、必ず「課題→解決策」という思考プロセスになっているし、確実にこの世界に一人は喉から手が出るほどほしいと思っている顧客がいるということになるのだ。
課題による痛みを誇張してしまいがちというデメリットはあるものの、顧客の抱える深い課題を見つける際に有効な方法だ。
②自分ごとなので本気になれる
新規事業のアイデアを考え、そのアイデアを形にしていくというと聞こえは良いが、それはいばらの道だ。社内承認が下りず途中であきらめたくなることもあるだろう。
そんな時に重要なのは、どれだけ本気でその課題を解決したいと思えるかであり、起業家自身がその課題をストーリをもって語れるか、辛い原体験があるかどうかだ。
Y Combinator(AirbnbやDropboxなどのスタートアップへの投資実績を持つ世界有数のベンチャーキャピタル。通称、ワイコン)がスタートアップへ投資を行うか否かを判断する際、必ずスタートアップへする質問がある。
「誰がその製品を心の底から欲しがっているのか」という質問だが、これに対するベストな回答は「私自身です」という回答だ。
では、なぜこのような質問をするのかというと、どんなにつらいことがあってもこの起業家は最後まで走り抜くことができるのか、つまり、どれだけ本気で事業をやろうとしているのかを見たいからだ。
また、起業家が本気になることができれば、周囲の人を巻き込みやすくなる。原体験から生まれた課題であるため、メッセージ性が強く、周囲の共感を生みやすいためだ。
まさに、「Your story is your strategy」といえるだろう。
以上より、良い新規事業アイデアを見つけるためにユーザーインタビューを始めるのも良いが、まずは、自身の過去のネガティブ辛い原体験を思いだし、世の中にどのようなサービス・製品があったら辛い思いをしなくてすんだかを考えてみるとよいだろう。
【用語解説】
Venture Capital(ベンチャーキャピタル):
将来成長が見込めるスタートアップに投資する組織のことであり、頭文字をとってブイシーと呼ばれる。スタートアップの株式を買い、IPOやM&Aにより高値で売却することで利益(キャピタルゲイン)を上げるビジネスモデル
まとめ
今回は「新規事業アイデアの見つけ方~良いアイデアとは?~」と題し、新規事業のアイデアを見つけていく際のポイントを解説した。
繰り返し述べている通り、良いアイデアを発見できるか否かは、顧客の抱える真の課題に気づけるかが全てだ。
自身の専門性を高め、現場に足を運び、業界の行く末を読むことで、あなたしか知らない秘密を見つけ、顧客自身も言語化できていなかった課題を見つけてほしい。
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