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近代日本風景 ー100年の変化・絢爛・喪失

「映えるNIPPON 江戸〜昭和 名所を描く」
府中市美術館
2021/5/22 - 7/11

江戸末期〜昭和後期の日本の風景が、近代化による観光の普及に伴い複製メディアに載り拡散されることで、イメージとしての植民地化/観光地化が行われる過程を、渋いが多彩な小品を集めて展示している。近代化の100年における風景の変化と絢爛と喪失。
テーマと出品作品傾向が個人的嗜好性に合いすぎていて「これは俺のための企画なのか…?」と錯覚してしまうほどだった。

メジャー所の歌川広重から入り、開化絵、小林清親の光線画、川瀬巴水、国立公園絵画と渋い選択でたたみかけてきて、極め付けの吉田初三郎の観光鳥瞰図や観光パンフレットに入る。
そして最後にきっちりと風景の植民地化/観光地化に対するアンチテーゼとノスタルジーで戦後から80年代まで日本の古民家を描き続けた向井潤吉を配置して、ここまでの展示構成の流れに切り返しをかける。
90年代半ばジブリ映画の『平成狸合戦ぽんぽこ』から『耳をすませば』の、戦後日本の郊外風景に対する自然破壊/郷土愛の二面性の対比のようでとても効果的だった。

ただひとつもったいないのはタイトル。
近年の街歩きブームやインスタ映えの普遍性を取り入れることを計算した展示であり、それについては筋が通っているが、キャッチーなタイトルで薄く広い客層を狙うのはやや無理がある気がした。
横文字・副題を入れるよりも基本的にコアな美術ファンに向けたものである展示内容が分かるシンプルなもの、例えば『映える風景』『まなざしの観光地化』『観光の時代』などでもよかったのではないか。

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