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「人間の能力の進化には限界がない。自然がわれわれに与える地球の終わり以外には」

私達は今、地球規模の緊急事態に直面している。

科学者の見解によれば、人間が化石燃料を燃やしてきたことに起因する気候変動が、この地球上で6度目の生物の大量絶滅を引き起こす可能性があるという。

ところが現在、地球上で暮らしているほとんどの人は、こうした事実に気づいていない。

[著者]ジェレミー・リフキン
文明評論家。経済動向財団代表。過去3代の欧州委員会委員長、メルケル独首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務める。
合同会社TIRコンサルティング・グループ代表として、ヨーロッパとアメリカで協働型コモンズおよびloTインフラ造りに寄与する。
広い視野と鋭い洞察力で経済・社会を分析し、未来構想を提示する手腕は世界中から高い評価を得る。


■第三次産業革命のパラダイム

アメリカと世界はグリーン・ニューディールを必要としている。大都市であれ、小さな町であれ、農村部であれ、その必要性は差し迫っているいるし、実行可能である。

そして手遅れにならないうちに世界経済を脱炭素化し、再生可能エネルギーとそれに伴う持続可能なサービスによって再活性化するためには、今後20年以内に迅速にそれを実行しなければならない。

そのためにはまず一歩下がって「歴史における経済の大きなパラダイムシフトは、どのようにして起きるのか?」と問う必要がある。それがわかれば、世界のどの国の政府も、グリーン・ニューディールを実現するためにロードマップを描くことができるはずだ。

歴史における大きな経済転換期には共通点がある。それは通信手段、動力源、運搬機構という3つの要素を必要とするという点であり、これらの要素が相互に作用することで、システム全体がうまく機能する。

経済活動も社会生活も、通信なしには管理できず、エネルギーなしには動力が供給できず、輸送とロジスティックなしには移動できない。
この三つの運用システムが、経済用語で言う「汎用技術プラットフォーム」を構成しているのだ。

通信やエネルギー、移動インフラが新しくなれば、社会の時間的・空間的方向性、ビジネスモデル、管理・運営のパターン、構築環境、居住環境、そして物語のアイデンティティも新しくなる。


■パワー・トゥ・ザ・ピープル

歴史の分岐点と言える今日、私達人類はどこに立っているのだろうか。人類は自らつくり上げた化石燃料文明によって、二世紀以上にわたり繁栄を享受してきた。だが今や、とてつもない代償に直面している。

地球は気候変動によって引き起こされる異常気象に見舞われ、私たちの理解を超えた新たな現実を突きつけられている。

人類はかつてない大いなる「気づき」を経験しつつある。自分たちを一つの「種」と見なし、自然のリズムやパターンがこれまでとは異質になりつつあるこの地球上で、どんな共通の運命をたどるのかについて考え始めたのだ。

若い世代は、自分たちの周りに広がる時間への切迫感と、人類を地球の危機のがけっぷちにまで追い込んだ年長の世代の無気力を打破する確固たる決意をもって、立ち上がっている。

怒りに燃え、決意とモチベーションを持った彼らは、あれやこれやできない理由を並べたり、現実的にならなければと主張する人たちには耳は貸さない。

この先すべき大仕事にとって「現実的」であることがどれほど非現実的で不十分かは明白なのだから。


■ゼロ炭素社会の暮らし

輸送、ロジスティック産業は膨大な量の化石燃料を燃やし、温室効果ガスの排出量も多いが、その一方で現在では化石燃料から脱却し、太陽光、風力発電による動力で走る電気自動車や燃料電池車の生産へと基軸を移しつつある。

ドイツ、中国、インド、フランス、オランダ、アイルランドをはじめとする世界18か国は、すでに向こう数十年間に、化石燃料を動力とする新しい車両の販売と登録を段階的に廃止する方針を明らかにしている。

自動車会社による電気自動車と燃料電池車へのシフトが進めば、輸送に使われる石油の多くは地下にとどまる。バンク・オブ・アメリカの予測によれば、2030年には自動車販売台数全体の40%を電気自動車が占めることになるという。

「2020年代初頭には、電気自動車がこの石油需要拡大の最後の砦を崩し始め、世界の石油需要は2030年までにピークを迎える可能性が大きい」と結論づけている。


■スマートなエコロジカル農業

社会のインフラを構成する四つの主要部門は、私達の経済活動、社会生活、そして統治を管理し、動力を供給して動かす巨大な力であり、すべてを合わせた時のカーボン・フットプリントは膨大になる。しかし農業部門を忘れるわけにはいかない。農業もまた大量のエネルギーを使い、大きなカーボン・フットプリントを伴うからだ。

農業においては、栽培、灌漑、収穫、貯蔵、加工、そして卸売業者や小売業者への作物の輸送に膨大な量のエネルギーが使われる。石油化学系の肥料や農薬の採算にも、かなりのエネルギーが使われる。農業機械もまたしかり。

ここで動物の飼育について考えてみよう。国連食糧農業機関によれば、農業分野から排出される温室効果ガスの大半が牛に由来する。家畜は地球の凍らない土地の26%もの面積に放牧されている。

現在、地球上には約14億頭の牛がいるが、これらの牛は大量のメタンガスをげっぷとして排出しており、その温室効果はCO2の25倍にも上る。牛のフンからは亜酸化窒素も排出されるが、その温室効果はCO2の実に296倍にもなる。

ミネソタ大学環境研究所の調査によれば、アメリカで生産されている農作物の半分以上が家畜の飼料用だという。しかも、世界の多くの国では家畜の放牧地を確保するために森林破壊が行われており、その結果、CO2を吸収する木が減少しているという悲しい現実もある。


■緑の一線を超える

太陽光、風力その他の再生可能エネルギーへの補助金が約10年というきわめて短い期間に導入され、今や廃止されつつある一方で、化石燃料は200年もの間主要な電源として使われ続けたあげくに、今なお世界全体で年間5兆3000億ドルという驚くべき額の補助金を受けている。

化石燃料は今や急速に世界の貸借対照表で座礁資産の欄に移動しつつあるのにだ。

しかし、問われているのは太陽光、風力発電が2017年の世界の全発電量のわずか3%しか占めていないのに、化石燃料文化が終わりに近づいていることなどありえるのか、という問いである。

ここに、ある経済学の経験則がある。一般にはほとんど知られていないし、金融やビジネス界の大物にも大方無視されているのだが、経済学者ションペーターが提唱した「創造的破壊」を予測するうえできわめて有益なものだ。

その経験則とは、投資家は全体として、ある企業や部門の「大きさ」ではなく、その「成長カーブ」に影響されるというものだ。投資先が着実に成長していれば、投資家は関心を持ち続けるが、成長の勢いがなくなれば往々にして興味を失う。

そして新しい挑戦者が出てきたとき、たとえ重要には見えなくても、その成長が目覚ましいものであれば、投資家がその挑戦者に関心を向け始める。そこにはカギとなる一線がある。

「挑戦者が市場の3%を占めたとき、既存のプレイヤーはそれを境にピークから下降に転じ、やがては0に近づく」というのだ。

この「創造的破壊」のルールはあらゆる商業の分野にあてはまるが、エネルギー・パラダイムの歴史的転換を分析するうえでは特に有効だという。例えばガス灯の需要のピークは、電気が照明全体の3%を占めるようになったときだったという。


■巨人を目覚めさせる

気候変動、座礁資産化に直面する化石燃料業界の長期的な財務安定への信頼喪失、そして太陽光や風力などの再生可能エネルギーの競争力の増大。

これらに対する関心の高まりを受け、世界の金融業界では資金の提供先の優先順位を再評価する動きが進んでいる。具体的には、資本を化石燃料から自然エネルギーやグリーン技術に移すファンドが増加しているのである。

アメリカをはじめ世界各国では、それぞれの地域に合わせたグリーン・ニューディールのインフラの構築と拡大に必要な資金をどこから調達するのかが、ますます差し迫った問題になりつつある。

グリーン・ニューディールについて考える時、最初の障害は「巨額の財政支出」の問題だ。ほかでもない地球上の生命の存続がかかった危機的状況にある今でさえ、否定論者はそんな金銭余裕はないと主張する。

絶滅の可能性も、政府が対処すべき数々の重要事項のうちの一つにすぎないと言わんばかりに。

気候変動に対する不安や、座礁資産を抱える化石燃料産業に投資しつづければ労働者の退職年金を失いかねないという懸念に駆られ、アメリカの年金基金は率先して、投資撤退を進め始めている。

第三次産業革命の経済を構成するグリーンな事業へと投資先を変えている。国民年金基金も同様だ。


■主役は社会的責任投資(SRI)

なぜSRIは資本主義的投資のわき役から主役に躍り出たのか?利益を出すからだ。そもそもSRIという考えが生まれたのは、アパルヘイト時代に、南アフリカの産業への投資が見直され、投資撤退へと世界が動いたときだった。

しかしアメリカ国民がそれをより一般的な問題として痛感したのは、1970年代後半、労働者の年金基金がほかならぬ労働者の経済的安定やコミュニティの福祉を損なう形で使われている、との議論が沸き起こったことがきっかけだった。

SRIの考えを支持する人たちは、退職年金の投資先の評価において、SRIの概念を考慮に入れるべきだと主張した。

経済投資をめぐる一般の議論に登場したのは「良い行いをして成功する(Doing well by doing good)という格言だった。

道徳的、社会的に良いビジネスをすることと利益とは切り離す必要はないし、切り離してはならない。切り離すことは誤った二分法であり、実際には「良い行いをする」ことと利益の増大はイコールなのだという。

今やSRIは主流になった。ミレニアル世代の86%がSRIに関心を持っており、年長の世代との違いが際立つ。

ひと口にSRIといっても多岐にわたり、全産業および部門に及ぶものだが、気候変動や環境、カーボン・フットプリント、そして石油メジャーによる地政学的影響への懸念の深まりが、化石燃料関連産業からの投資撤退と、再生可能エネルギーやグリーンな産業への投資を勢いづけている。


■地球上の生命を救うために

アメリカとヨーロッパをはじめ世界中で、グリーン・ニューディールが拡大しているのを目の当たりにするのは心強いかぎりだ。人間の考えることには、たしかにここまでの影響力があるとの思いを強くしている。

私達人間はストーリーを語る種である。自分たちが共有する物語やストーリーを指針として生き、そうすることで自分たちが集団で生きる社会的存在であることを理解する。

グリーン・ニューディールもまた一つの「筋書き」であり、長い歳月をかけて洗練され、微妙な意味合いを帯びながら進化し、成熟してきた。

今や人類は終盤、あるいは新たな始まりの苦しみの中にいる。グリーン・ニューディールは私達集団としての声と、皆が共有する共通の使命感を与えてくれる。今、どうしても必要なのは、この「筋書き」を力強い物語に変え、それによって前進することだ。


■グリーン・ニューディール

グリーン・ニューディールは、ただ単に市民を動かして政府に圧力をかけ、財布の紐をゆるめ、法案を通し、地球環境を守るための取り組みにインセンティブを適用するようにさせるためだけのものではない。

地球上の生物の歴史が暗黒の局面を迎えている今、新しい種類の「仲間」による政治活動とコモンズによるガバナンスを実現させることで、コミュニティ全体に未来への直接的な責任を負う力を与えようという、人類史上初めての試みなのだ。

二世紀以上にわたって石炭紀の化石燃料埋蔵物に頼って生きてきた私たちは、この先もあらゆることが可能で、代償を払う必要もほとんどない未来が無限に続いていくという誤った感覚に囚われていた。

自分の運命は自分でコントロールでき、人類は地球から好きなだけ奪ってもいいと思い込んでいたのだ。この惑星で起きることには必ずエントロピーのツケが伴うことを理解していなかった。

その時代を私たちは「進歩の時代」と呼んだ。だが今や、気候変動というツケの支払い期限が迫っている。新しい時代、新しい旅が始まろうとしている。

私達を待ち構えるのは「レジリエンスの時代」だ。私達に突き付けられた新たな現実にどう適応するかで、私達の種としての命運は決まる。私たちは生物圏意識へと急速に近づきつつある。

手遅れになる前にそこへたどり着けるという希望を抱こうではないか。

それが私が信じるグリーン・ニューディールにほかならない。


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皆さんはパリ協定をご存じだろうか?

パリ協定とは2015年に世界全体で温暖化対策を進めることを決め、各国が温室効果ガスの削減目標を立てることを義務づけた協定だ。

しかし、目標を達成することは義務ではない。

そんな中、温室効果ガス排出量世界2位のアメリカが、今月11/4にパリ協定を離脱した。

理由は「アメリカに不利益をもたらし、他国の利益になる」というものだ。

アメリカではシュールガスやシェールオイルが大きなエネルギー産業であり、トランプ政権ではそういったところからの支持が強かったために離脱した方がメリットがあると判断したと思われる。

しかし、今回の大統領選では、バイデン氏が勝利し、パリ協定の復帰を就任初日に行うことを発表している。

つまり、アメリカ国民は温暖化対策を諦めていない。

「WASI」(We Are Still In われわれはパリ協定にとどまる)という活動があり、WASIを宣言した企業や組織がアメリカの人口の半分を占めているという。

世界各国が温暖化対策を進めようとしている。

一方、温室効果ガス排出量5位の日本の場合はCOP25(国際NGO)での化石賞を受賞している。

化石賞とは脱石炭を示さなかった日本に対して、温暖化対策に消極的と判断し、NGOから皮肉で贈られた賞である。

また、日本はG7(主要7か国)の中で唯一、途上国への石炭火力発電所の輸出を公的に支援している国なのだ。

ヨーロッパの国々は「2050年までに排出量を実質0にする」目標を決めているし、さらに石炭産出国のドイツは「2038年までにすべての石炭火力発電所をなくす」と発表している。

日本の目標は「2030年度までに温室効果ガスの排出量を26%削減する」といことだ。

はっきり言って「しょぼい」目標だ。

26%という目標は様々な計算を折り込み算出された数字だと思うが、本来なら温暖化を食い止めるためにこの数字が必要だと思うなら、そこをゴールに様々な政策を打っていくのが正しいと思う。

私達もゴールのために明日できることは何なのかを考えよう。

未来のために日本は変わるべきだ。


私の情報が少なからず皆さんのお役に立てればと思います。
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